第61話 天神様と事情聴取
お待たせ致しましたー
とりあえず……歩いて歩いて。
生まれ変わったと言って良い……魔の森だった、美しい森からも出ることにしたのだが。
そう簡単に、次への出立を許されないのが……現実と言えよう。
「……お前さんら。もう一度聞くが……何も知らねぇんだな?」
「……はい」
『う……ん』
「我らは、存じ上げぬ」
シトゥリとは別の街……ラファエロという大きな街からの派遣隊が、森から出てくる私達を見つけたので。
文字通り……事情聴取のために連れて来られたのだ。そちらの冒険者ギルドのマスターの元へ。
レイバンと同じ、ドワーフのギルドマスター。
体格の方は、こちらのが恵まれているようだが。
とりあえず……再三再四と言うくらい、同じ質問をされても私達が言えることは同じ。
世界樹のことは信じてもらえないようだから……素知らぬフリをするだけだ。
「僕らが出てくる前に、いきなり変わったんですよ」
半分嘘で、半分本当の事実を告げても……ギルドマスターが大きくため息を吐くだけだった。
「…………証拠も何も、俺らもまだ信じられん。魔の森が、元の『聖なる森』に戻っただなんてな」
「……聖なる森?」
「いにしえの伝承だ。魔の溜まり場になる前は……あそこは美しい森だったと。四千年以上昔の伝承だが」
「……そうですか」
あのケルピーがどれだけ生きていたかはわからないが……その事実を知らなかったと言うことは、もう少し後に生まれたのか。
どちらにしても、転生したての私には知らないことだが。
「……その様子。伝承も知らねぇのか?」
「田舎者なもので」
「……あそこには何で行ってきた?」
「……採取のために」
ここで、せっかくだから使わせてもらおう。
ケルピーの触角を出すと……ギルドマスターは椅子からひっくり返ってしまったよ。
「ま……じ、か!?」
「快く、分けてもらえました」
「……意思疎通出来るとは言われてたが」
「また生えるからと、片方だけ」
「……仲良くなったのか?」
「背に乗せてもらえるくらいには」
『う……ん!』
フータがはしゃぐと、ギルドマスターは先程よりもさらに大きなため息を吐いた。
とりあえずは……これで、偽装でも困難は乗り越えられたかな?
次回はまた明日〜




