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第57話 従者も哀しむ

お待たせ致しましたー

 ……なんてことだ。


 このようなこと……『あんまり』ではないのだろうか!


 我らが主……道真(みちざね)様が泣かれるのは無理もない。


 我とて……少しばかり、心を許していたあの人間達が。


 実は……死者で。


 世界樹に、次への道標のために利用されていたとは言え。


 出会いと別れが……唐突過ぎではないか!?


 彼奴らは……笑っていたが、我とて、少しばかり涙を流してしまった。


 今後の彼奴らの進む道は、天上へ向かい……次の生を待つだけしかない。


 そのために……我らにケルピーへの道案内をし、共に過ごしてきたのに。


 彼奴は……ただただ、笑顔だった。


 彷徨うだけしかなかった、魂の溜まり場でしかなかったのだ……この森が。


 主が聖樹石を……世界樹に届けたことで、森は生まれ変わったのに。


 主のお陰で、救われた彼奴らは……もう居ないのだ。現世には。



「…………さようなら」



 祝詞ではなく、言祝ぎの言葉でもなく。


 主は……ただ、別れの言葉をつぶやくだけであった。


 我は……なんと声をかけて良いのかわからなかった。


 わからず……拳を握り締めていると、抱えていたフータが飛び降り……主の足元に近いたのだ。



『マスター……だ、じょぶ?』


「……ありがとう、フータ」



 ありきたりの言葉。


 何も飾らない言葉。


 フータとの出会いとて、我よりほんの少し短いだけであるのに……この者に、気遣いは負けているな。


 それを……疎ましくも思わない。


 フータと我は……同じ精霊でも違う存在であるからな。



「……主。この先、進まれますかな?」



 だから……我も、それに続く言葉をかけるまでだ。



「…………そう、だね。とりあえず、ここでの役割は終わった。次へ向かおう」



 繕う『ミザネ殿』ではなく……『道真様』の口調だ。


 それほど……取り繕う余裕もないのだろう。



【であれば……ミザネ殿らよ】



 ここで、沈黙を保っていたケルピーがいきなり地に伏したのだ。



「……なにかな?」


【我が……入り口まで送り届ける。素晴らしき森に生まれ変わらせてくださった礼の一部にもならないだろうが】


「……いいのかい?」


【是】



 たしかに……飛翔への障害となっていた、不可解な魔力などは無くなっただろうが。


 この魔物からの礼であれば……受け取らないわけにはいかない。


 主は涙を止め、軽く腕で擦ってから……ケルピーを見上げたのだった。



「せっかくの申し出……ありがたく受け取りましょうぞ」


『わーい! びゅーん、びゅーん!!』


「……せめて、ゆっくり飛んでもらえないだろうか?」


【はは、承知】



 フータは喜んでいたが……あの荒い飛翔は、我もいささか苦手であるからな?


 ひとまず……ケルピーの背に乗ることとなった。

次回はまた明日〜

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