第45話 天神様と魔物肉
お待たせ致しましたー
焼き上がる頃には、周辺の後始末もだいぶ終わったようだ。
串焼きは……露店には悪いが、なかなかに美味しそうな出来栄えだったよ。肉汁も溢れ、胡椒の粒がなんとも言えない食欲を掻き立ててくれる。
腹の虫とやらは精霊の身体なのであまりないが、人間に擬態しているからか……不思議と空腹に似た感覚を得たのだ。
「ん。……良い焼き上がり」
「美味しそうですね」
「ミザネ……達、が手伝って……くれたお陰」
「リクターさんの的確なご指導のお陰ですよ」
私達はただ真似事をしただけに過ぎない。首を左右に振ると、彼は一等大きい肉の串を抜いて私に差し出してきた。
「……ど、ぞ」
「先に食べていいんですか?」
「……ここ、の功績。ミザネ……達」
「ありがとうございます」
せっかくの厚意を無駄にするわけにはいかないので、熱いが慎重に受け取り。心中で『いただきます』をしてから……息を吹きかけ、かじってみた。
思っていた以上の……柔らかくて、しっかりした味付けの肉が口いっぱいに広がる。
これは……とても美味だ!
『お……い、し?』
「そのようであるな」
「うん! すっごく美味しいです!!」
きちんと礼を告げた後に、他の片付けをしていた男性らもこちらに来て……何故か、男性の方には頭を撫でられた。
「いい食いっぷりだなあ? 切り口とか見たが、お前の方が切ったのか?」
「いえ。僕は弓です。切ったのは……こっちのトビトです」
「そうか。一瞬で絶命させられるのは……なかなか居ないぜ?」
「だって、トビト」
「……そうであるか」
照れ臭いのか、トビトはいくらか頬を赤らめていたね? 少しだけ可愛いと思ってしまった。
「お? 褒められるの、あんまねぇのか?」
「…………」
「僕の腕前はあんまりですからね? いつも先制をお願いしています」
「そーんなことないよ! 坊ちゃんの方も、矢で的確に急所撃ち抜いていたし!!」
「どうも。あ、改めて。ミザネ=プラハドと言います。こっちはトビト=リディア。契約精霊の方はフータです」
『フータ!』
「あたしはディアナよ」
「俺ぁ、ケインだ」
改めて自己紹介をし合い、私達は焚き火を囲むようにして食事をすることになった。
「へー? それだけの腕前あんのに、冒険者登録したばかり?」
「はい。修行……はしていたので、ちょっとだけマシだとは思いますが」
適当に答えるが、私が前世で神だったことは……彼らに言っても信じてもらえそうにないからねぇ? トビトも、だんだん私の心情を汲んでくれるようになってきたのか……不満はあるが、思いっきり不機嫌にはならなくなったよ。
「へぇ? 目立つ風貌してんのに、全然偉ぶらねぇなあ? トビト、アサシンの新人だって信じられんな?」
「…………俺は、ミザネ殿の指示を受けたまで」
「……歳逆なのに、トビトが従者か?」
「えっと……家の関係で」
そこを突かれるとなかなかに説明しづらいが……なんとかかわすしかない。
とりあえず、串が無くなるまで……私達は語り合うことになったよ。
次回はまた明日〜




