第35話 天神様と防具③
お待たせ致しましたー
世界樹の一部と会合してからは。
私達は、次の旅路に向けての準備を整えることにしたよ。
防具には少々時間がかかることもあり……トビトやフータと共に、ギルドから得た金銭を使い、様々な道具を新調していく。
人間ではないが、人間に擬態しているのと同じなので……薬や傷の手当てに必要な救急道具なども揃えておく。もし、自分達のこともだが……道中で何か起きた時のために、対処せねばならない時に役立てばと。
薬師ほどでないが、高位の貴族でもなかった私には……学者ではあったが、多少の医療に関する心得はあった。
加えて、下位でも神の地位にも居たからね? 快癒の力も引き継いでいるかと……試しに自分の腕を切り付け、力を送ると治すことは出来た。
トビトやフータには、必要以上に驚かせてしまったがね? 先に言うと絶対に反対されるだろうと敢えて言わなかったのだが……泣かせてしまったので、二度としないように心に決めた。
とりあえず、血も擬態しているのには私も驚いたが……もとより、精霊にも血とやらは流れているかもしれない。世界樹にそのことをいちいち聞くのは……答えてくれるかわからないので、連絡はしなかったが。
消毒用の酒、あとはポーションと呼ばれる回復薬も揃えてみた。希少なものから安価なものまであったが、とりあえず……そこそこ高価なものを購入したよ。
私達、精霊に使用出来るかわからないが……万が一の、お守り的なためを思って。
「待たせたな! ようやく、完成したぜ!!」
数日後、宿にレイバンからの知らせが届き……私達は工房に邪魔をしに行く。
彼とも、ある意味これで最後の出会いとなるが……用意してくれた防具は、それはそれは素晴らしい出来栄えだったよ。
「わぁ!」
「……ほぉ?」
『か……こいい!』
私とトビト。それぞれの防具は……フータが言うように『かっこいい!』と言う仕上がりだったよ。
私が濃いめの茶色。
トビトが黒。
それぞれ……微妙に差はあるが、同じようなデザインのアーマーだったり、付属品だったり。
靴まで用意してくれたから……本当にありがたい。今日で借りていたものは返さなくてはいけないからね? 準備以外にも討伐依頼は……私が殺生を慣らすのに、何度か出向いた。
弓の扱いもだが、近距離での戦闘の際……鉄板を仕込んだ靴が蹴りの攻撃で思いの外役に立った。だから、似たデザインの靴は本当にありがたかったのだ。
「武器は手に入れたと坊主から聞いてたからな? ミザネの近距離用の靴は、軽いが蹴りの威力は抜群だと思うぜ? もちろん、トビトのも同じくらいにな!」
「……かたじけない」
「本当にありがとうございます!」
「こっちこそ。いい仕事させてもらったぜ!」
お互いに握手を交わしたのだが……レイバンは、予定していた金額より少なめにしか受け取らなかったのだ。
「……いいんですか?」
「なーに。俺も今回のことで目が覚めた。たしかに……素材を得るには金とかが必要以上に大事だ。だが……あんたらが俺が貸した防具を大事に使ってくれたんだぜ? 俺は……初心に帰ることにした。俺に足りなかったのは、金より依頼主に満足してもらえるもんを作ることだ」
「……なるほど」
私達は、街の住民の勧めがあったから……繋がった縁で来ただけでも。
この男性には、それ以上の気づきを与えられたのだろう。
それであれば……不用意に追求するのは良くない。
なので、彼の言う金額を渡して……防具を身に付けることにした。とても軽く、服の上からでも着心地の良い出来栄えだった。
次回はまた明日〜




