第33話 天神様と連絡手段①
お待たせ致しましたー
「敵襲か!?」
トビトが新調したばかりの、鋭さが特徴である苦無を……瞬時に構えたが。
光に包まれた店内では……壁際で、不可思議な事が起こっていたよ。
コットを淹れているはずの……店主の動きが、『止まって』いたのだ。
微動だにせず……が似合うくらい、ぴくりとも動かず。
コットを淹れている……湯や、コットの液体そのものも。
まるで、写真のように……何も動かないでいた。
『私達』以外は。
『……知らせが遅くなりました』
止まった場所と、赤い光の中。
次に聞こえたのは……女性の声だった。
だが……その響き方に、私は覚えがあったよ。
「……世界樹?」
声のする方向に向けば……赤い光の中から、ひとりの女性が現れた。エディトがエルフの妖艶であれば……こちらは神秘的な女性だ。耳は……特に尖っていない。
髪色が、トビトより鮮やかな朱色でなければ……この女性が『世界樹』の化身だとわからなかっただろう。
『……はい。ミチザネ……無事に、ひとつ目の聖樹石を受け取りました。本当にありがとうございます』
私と目が合うと、鮮やかな紅い瞳を緩ませ……ゆっくりと……深くお辞儀をしてくれたよ。このしとやかさは、平安の世を生きていた私でも好ましく思える。
神となり、様々な人間達の願望を聞き届けてはいたが……なかなかどうして、慎ましい態度の人間が圧倒的に少ない。
だからこそ、その礼は嬉しかった。
「あなたの願いをひとつだけでも叶えただけだよ。……もしかして、次の場所を伝えに来てくれたのかな?」
『……はい。私も連絡の手段を手渡すのを……忘れてしまっていたので』
フータを抱えたまま近づくと……フータが『ふぁ』と声を上げた。
『せ……かい樹、さま?』
『ええ、そうですよ。小さな精霊。……ミチザネ……いいえ、ミザネと契約を成したものでしたね?』
『う、ん! フータ!!』
『はじめまして、私は世界樹の一部です』
「……一部?」
『はい。私とミザネの魔力は……精霊としては同調している状態。それを利用して、この店内を一時的に異空間に仕立てているのです』
「……とは言え、まさかここで」
『…………私もうっかりしていたのです』
人間のような部分があるようだが、それはさておき。
トビトには警戒を解くように頼み……と言うか、既に解いていたが相手が世界樹だったこともあり、非常に顔を青ざめていた。自分を具現化してくれた恩人に対して、無礼ともとれる行動をしたからだろう。
世界樹本人は気にしていないようだが。
「とりあえず。石が手に入れば……次の行き先をあなたが示してくれるのかな?」
『……すべて、は難しいです』
「それは予想済みだよ」
どれほど必要か……は私以上に、世界樹も把握はしていないだろう。何せ、生態系を整えてしまうほどの……力の残滓程度でそれすら起こしてしまう代物だ。
こちらの世界で……どれだけ存在しているのか。
何故、世界樹が自身で集められないのか。
聞きたいところだが……おそらく答えてはくれないだろう。
私の質問に、すんなりとは答えてくれない態度がまさにそれだ。
次回はまた明日〜




