表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/99

第31話 天神様と茶店①

お待たせ致しましたー

 そして、だんだんとだが……私にもその『匂い』が届いてきた。


 茶ではないが……この香ばしさ、『コーヒー』だろうか?


 現世であれば、嗅ぎ慣れた香りだったが……まさか、異世界でもあるとは。醤油と似た調味料もあるから……似た飲み物もあるかもしれないねぇ?


 これはひとつ……茶を探してみるのも良いだろう。


 とりあえず、その香りを頼りに進んでみれば……小さな茶店のような場所に到着した。


 石造りで、適度にツルが巻き付いている……落ち着いた雰囲気の店。


 どのような品を扱っているか、実に興味をそそられる店構えだった。



「……ここですかな?」


『ん! い……い、匂い!』


「コーヒーに似てるね? 僕も入ってみたい」



 では……と、扉を開けてみれば。チリン、と扉に設置されている鈴の音が鳴り響いた。いや、鈴と言うのではなくベルか? 日本で言う鈴よりだいぶ大きい。



「……おや。いらっしゃい」



 出迎えてくれたのは、老年にさしかかる年齢くらいの男だった。外見だけなら、レイバンより上だろう。耳も尖っていないので、エディトとも違うはず。


 店の中は、酒場や食堂ほど広くはないが……落ち着いた雰囲気だとすぐにわかる調度品の配置が、いくらか心地よい。


 そして……フータが感じ取った、コーヒーらしい香りが満ちていたのにも嬉しく感じる。



「こんにちは。僕の精霊が、美味しそうな匂いだとこちらに案内してくれたので」


「ん? ……中級精霊だね? 君は、冒険者かい?」


「はい。こちらのトビトと一緒に行動しています。まだ……駆け出しですが」


「そうかい。ゆっくりしていきなさい。飲み物は、なんにしようか?」


「えっと……この香りは?」


「ん? コットだが……飲んだことないのかい?」


「お恥ずかしながら……」



 呼び名を間違えては、怪しまれるからねぇ?


 とりあえず、フータも飲んでみたいからと人数分頼んだのだが。



「……黒い、ですな」


『……くろ』



 見た目は普通にコーヒーだったが、一切飲んだことのない二人には異質に見えただろうね?


 なので、私が手始めに飲んでみることにした。



(……うん)



 酸味も程よく、適度な苦味。


 ほのかに……甘みも感じる、飲みやすいコーヒーの味わいだった。これには、甘味(かんみ)も合うだろう。和菓子でも洋菓子でも。


 食事で言うなら……パスタとかが合いそうだ。



「おや。僕の方は気に入ってくれたようだね?」



 店主らしい男は、何かを載せた皿を持ってきてくれた。卓に乗せたそれは……なんと、オムレツだったのだ。


 ケチャップもご丁寧に添えてある……おそらく、プレーンの。しかも、かなり大きい。



「はい。美味しいです! えっと……食事頼んでないですけど」


「いいんだよ。こちらはセットメニューのようなものさ。そっちの若い子には……一緒に食べた方がいいだろう?」


「……あー」



 トビトは、まだコーヒーことコットのマグカップを凝視していて……額に汗を浮かべているくらい、緊張していたのだった。


次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ