第25話 天神様と街中①
お待たせ致しましたー
宿屋へそのまま帰っても良かっただろうが。
せっかくだから、とミィに勧められたので……市場とやらに行ってみることにした。
「回復薬のアイテムなどを揃えられる金額はありますし、行かれて損はないかと」
とも言ってくれたので……異世界事情についても、少しずつ詳しくならなくてはいけないからね?
見聞も兼ねて、見て回るのはいいことだ。
フータは私が抱え、財布はトビトに預けている。
ミィの注意に、スリとやらの犯罪者がいなくも無いので……外見だけなら大人のトビトが持っていた方がいいとのことだった。たしかに、アサシンでもあるトビトから盗もうなどと言う愚か者は、瞬時に捕まるだけだ。
現に。
「いってて!?」
トビトの隙を狙おうとして、財布を盗もうとする輩が出てきた。これで三人目だ。
「……愚か」
と、トビトは片手で限界までひねるのだから……やり過ぎかとも思うが、ここはきちんとしておかなくてはね?
私は私で、見える範囲にいた衛士のような者を呼んで……スリの輩を連れて行くように頼んだ。外見がまだ子供に近い私程度で出来るのはそれくらいだからね?
「お願いしますー」
「ご協力ありがとう。……これで何人だ? 君達を狙う者が多いが」
「……多分、三人目です」
『う、ん』
私はともかく、トビトは美丈夫でもあるからね?
その風貌に、金をたんまり持っていてもおかしくないように写ったのだろう。
美はあって損はないが、時に得をしない行為に繋がるとは。
「…………ミザネ、殿。回るのはまたにしては?」
衛士にスリを渡したあと、トビトが少し困った表情をした。やはり、これだけ自分……と言うより、そばにいる私を狙われるとなれば、被害が及ぶかもしれない。
しかし、私は首を振った。
「大丈夫。君もフータもいるんだよ? 僕も出来る限り気をつけるし……色々回ろう?」
「……しかし」
「もっと、いっぱいいろんなことを知りたいんだ」
私達は、異世界転生を成した身。
この世界についてはほとんど知らない。
フータも森の中にいただけと言うし……だから、我々全員は世情に詳しくならねば。エディトには馬鹿にされてはいないが……知識を得ることに、損も得もない。
私が、もとは文官であり学者であったゆえに……好奇心とやらはあるのだ。物凄く。
それが顔に出ていたのか、トビトには苦笑いされた。
「……わかり申した。しかし、何かあれば……このトビト、それなりの対処を相手に致します」
「ほどほどにね?」
さて、どこに行こうか?
平安の世よりも、現世での生鮮市場などに近い光景が目の前にある。
香ばしい串焼きの匂いから、甘い香の匂いまで様々だ。
ミィが言っていたように、道具も色々あるようだ。とくれば、ここはひとつ。
『マ、スター、悩み?』
「うん。僕らの装備について」
道ゆく冒険者のような人間らを見て思ったが。
我々には……多少の武器はあれど、防具が乏しい。
まだ二回とは言え、依頼は主に採取だったので……魔物を倒すのは、ほとんどついで。
そのため、今回のような大金を使う機会があるなら……食べ物よりそちらがいいだろう。今の我々は鎧も何も身につけていない普通の服だ。
次回はまた明日〜




