第22話 天神様と最初の石②
お待たせ致しましたー
綺麗に片付けた後。
改めて……聖樹石の前に皆と向き合った。
あのような惨事があったにも関わらず……石は美しく輝いていた。
石には魂のようなものがないのか、ただただそこにあるだけ。
三人でゆっくりと根に注意しながら、石に近いていく。
少しずつ……何か暖かさを感じたが、石が放っているのだろうか?
真正面に立っても、石の輝きなどは変わらず……しかし、あたたかい空気のようなものは強くなっている。やはり……この石はただものではないのだろう。
『き……れー!』
フータは初めて見るので、いくらか興奮していた。
彼のことは、トビトに抱えてもらっている。万が一、何が起きるかわからないし……これを世界樹に送る役目は私だからね?
触れればいいと、世界樹は言っていたが……本当にそうなのか。
ゆっくり手を伸ばし……やはり温かいそれに触れてみると。
まるで、温泉の温もりのように温かだった。
【……贈り届け給う!】
自然と浮かんだ……祝詞のようなものが口からこぼれ。
そのあとに、聖樹石から振動が伝わり……震えたかと思えば、瞬時にそこにあったはずの石そのものが消えてしまったのだ。
「…………見事」
『マスター、す……ごい!』
二人にも今のことは見えていたのだが……これは、少々気恥ずかしいね?
まるで、絵物語の神の儀式か何かだ。いや、私も元は神ではあったけれど。
「……とりあえず。これで一個目かな?」
照れ隠しをしながら……現状を確認することにした。
無事に石のひとつを回収出来た。
冒険者としても……きちんと討伐は出来た。
あとは、採取の依頼が残っているが……と、根から降りてみると。
気づかないでいたが、三輪草があちこちに咲いていたのに……今更気づいた。
討伐で一部はダメになっていたが……三つの花弁を持つ花は美しく咲いていた。
『い……っぱい!』
「主よ。取れるだけ取れますな」
「……その前に、ちょっと休憩にしようか?」
精霊の身体でも、疲れを感じるのか。
気疲れ……がかなり来たので、その場にどすんと腰掛けてしまったよ。
『だ……じょぶ?』
「……我の、せいで」
「違う違う。本当に疲れただけだから」
人間に似せている部分もあるから、とトビトを宥め。
宿の女将から持たされた弁当のサンドイッチを口にしてみると……何故か腹も空いていたのか、あっという間に平らげてしまったよ。
『お……い、し!』
「うん、美味しかった」
腹を空かせてはなんとやら……の言葉は。
日本でもいつ頃作られただろうか? まさしく、今がその通りだと納得は出来た。
次回はまた明日〜




