第20話 天神様と最初の石①
お待たせ致しましたー
「「フータ!?」」
私とトビトは慌てて追いかけたのだが。
思った以上に……跳躍力が凄いフータの速さに、なかなか追いつけない。
途中、採取予定の三輪草などがあったが気にしている場合ではなかった。
フータは子供ではなくとも……私やトビトにとっては大事な仲間なのだから。
「……主。許されるのであれば、我が先に捕まえますぞ」
「え?」
「今は主の速さに合わせているまで。我の元の名をお忘れか?」
そうであったね。
トビトは、『飛び梅』。
陸を越えて……やってきた、我が梅の木だ。
それであれば……本来の速さなら、フータを捕まえることは出来るだろう。
【……許可する】
その言の葉に何故か、力のようなものが宿った。
トビトが一瞬揺れたように見えたが……すぐに、私の目の前から消え……奥の方で『こら!!』と彼の強い言葉が聞こえてきた。
止まったようなので、私も自分なりに速度を上げて追いつくのだが。
二人が……見上げていたものに、私もつい驚いてしまった。
(……これ、は!)
皆で見上げた場所。
様々な樹々が絡み合うように存在している、中央に。
あったのだ。
私達が探し求めていた物が。
トビトと同じ色合いの……赤紫色に輝く結晶。
『聖樹石』が!!
『こ……れ! これ……き、れ!!』
フータはあの場所から見えていたのか、これを私達に教えたくて道案内してくれたのだろうか?
「……フータ。これがわかったの?」
『う、ん! き……れ、で……マスター、喜ぶ……思って』
「……ありがとう!」
思わず、トビトが抱えたままの状態でフータに抱きつく。
餅のような感触を堪能したいところだったが……せっかくのフータの心遣い。
これに、私が手を触れれば……世界樹にすぐ届くだろう。
とは思ったものの。
「……ここは、巣であろうか」
トビトが急にそんなことを言うので……まさか、と私も腰にある短剣を構えた途端。
あちこちの茂みから、小鬼が多く出てきたのだった。
「……ギ、ギギギ!?」
「ギィ!? ギギィ!!」
「ギャーギャー!!」
騒いでいるあたり、簡単には聖樹石を渡してはくれないようだ。
石に意識を向けている私達を……完全に敵と認識している。
ここは、フータはどこかで隠れてもらうしかない。
私も初めての殺生をせねば……と覚悟していたのだが。
『ぼ……くも!』
地面に降りたフータも、瞳を輝かせてやる気に満ちあふれていた。
「……フータ、戦える?」
『や……って、みる。魔法……でこおら、せる!』
「そうか!」
フータには、属性が二つあるのだった。
それなら……と、私達は三手に別れて、突撃を始めた!!
次回はまた明日〜




