クリスマス
数年前の冬の童話コンテストに投稿しようとして放置していたものです。
身が縮む寒さに、肌を突く冷たい風が吹くこの季節。
人々から遠く離れた。どこかの場所で、うず高く積まれた雪もなんのその、せっせっと働くトントゥ達。トントゥに色々な指示を飛ばすサンタクロースがおりました。
この季節は、どうしたって忙しく。それぞれが、それぞれの仕事をして、クリスマスを迎えるのだ。
そうして迎えるクリスマスは、正念場を残すトントゥ達に、真っ白い雪がふわりふわりと、鼻のてっぺんに舞い降りて、すぐに溶けてしまう。この日のために、飾り立てたトナカイはどこか誇らしげに鼻を鳴らし、蹄で雪の上を踏みしめる姿は堂々としている。サンタクロースはソリの脇で荷物の最終確認をするために、手に持った子供達の名前とプレゼントのリストの書かれた大事な本と、ソリに積まれたプレゼントを見比べている。サンタクロースの鼻に降りた雪もすぐに溶けていったけれど、真っ白いお髭に降りた雪は髭に張り付いていた。
サンタクロースは最後の確認を終えて頷くと。トントゥ達の方に振り向き、そして、空を仰ぎ見た。
それにつられて、トントゥ達も空を見上げる。見えるのは空にかかる少しの雲と、その雲に隠れるようにして優しく光るお月様。
雲の隙間を縫うように瞬く星々。吐いた息が白く空と雲に溶け込んでいく。
想い想いに見上げた空に、みんな、何を考えただろうか?
もしかしたら、みんな、一緒の事を想ったのかも、しれない。
「さあ、みんな。今宵、年に一度の奇跡を届ける時がきた!」
「出発だ。ソリに乗り込もう。」
サンタクロースの号令で、トントゥ達は一斉に『はい!』と返事をして、それぞれ分担するソリに乗った。それをサンタクロースは見届けて、最後に先頭のソリへと乗り、トナカイの繋がれた手綱を握る。
「聖なる夜に、一夜限りの祝福を!!」
その言葉と共に、子供達のプレゼントを乗せたソリとトナカイは、空を駆けて行った。