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9話

 ハナに私の野望がバレてからというもの、私はハナの前で遠慮なく特訓をすることができるようになったわ。

 私の部屋に入ってくるのは専属メイドのハナだけだから、魔法の練習をするのに書斎ではなく部屋でやることも増えた。

「お嬢様、プランクをする場合はもう少し腰を上げてみるとよいかもしれません」

 と、ハナからアドバイスをもらうこともある。ハナから言われた通りにちょっとだけ腰を上げて、その姿勢を維持し続ける。

 三十秒経ってから立ち上がって、ハナの方に目を向けた。ハナはパタパタと装飾の埃を払って掃除している。

「ハナ、やっぱり中級魔法が上手くいかないのよ」

 ハナはハタキを止めて、私を見た。

「中級魔法は初級魔法よりも使えるひとも少なくなりますし。マキアによれば、お嬢様は中級魔法も難なく使える力があると言います。練習あるのみ、です」

 ハナはいつも無表情だけれど、とても優しいひとなのよね。私はにひ、と令嬢らしからぬ笑みを浮かべて、お礼を言う。

「今日の午後からは剣の練習があるから、その後にししょーのところに行きましょう!」

 ハナは言いづらそうに眉をひそめた。

「……お言葉ですが、こんなに毎日街へ出ているとご主人に怪しまれてしまいます。できることなら週に一、二回がよろしいかと」

「確かに、確かにそうよね。……ハナったら、やっぱり私に協力してくれるんじゃない!」

「約束を破るほどの人間ではありませんので」

 頭を抱えてため息をつきつつも、やっぱりハナは優しいのだった。

「もうそろそろお昼のお時間になりますよ」

 部屋にある時計を指してハナが言った。

 昼食にはお父様もいた。今日はお外に出ているのではないらしい。

「カノン、剣の練習は頑張っているか?」

 昼食を口にしながら、お父様が私に聞く。私は自信たっぷりに口角を上げて、大きく頷いた。

「もちろんよ!」

 そうか、とお父様も満足げに頷いたので、別にお説教というわけではないようだ。

「カノンは本当に頑張っていますよ」

「それならいいんだ」

 お父様はそこで何か思い出したように、お兄様に目を向けた。

「あと四年で、お前は魔法学園へ入学するが……。勉強の先取りは進んでいるか?」

「はい、最近学園の勉強を始めました」

 またお父様は満足げに頷く。

 あと四年ね。あと四年でダシアンさまに会えるの! 会ったら私、どうなってしまうの!? 夢にまで見た推しなのよ!

 頬が緩んでしまいそうになるけれど、ここはぎゅっと引き締める。お父様にバレてしまってはマズイからね。

「カノン、今日は実践の日だよ」

 私はお昼ごはんをもぐもぐしながら頷いた。

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