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6話

「っほ!」

 パチン、と指を鳴らしてみると、コップの水面が小さく波打った。

「ふっ!」

 また指を鳴らすと、次は手がぼんやりと光る。

 うん、やっぱり。適正魔法ではなくても、使えるわ。ゲームでもそうだったもの。でも、一番威力を発揮するのは適正魔法なのよね……。

 何日か練習してみれば、色んな色の初級魔法は使えるようになった。適正魔法が分かればいいのだけれど。その方が効率よく魔法を練習できるわよね。

 また指を鳴らして、身体強化を施す。ちなみに、この魔法はノーマルなもの。ノーマル魔法は色の中には分類できないもので、難易度は初級魔法と同じくらい。

 身体強化はいつもより筋力が上がるぶん、負荷が大きい。だから、剣技の準備段階中の私にはちょうどいい。

 身体強化をかけていつもより筋トレを増やせば、負荷がかかって普段の筋力もどんどん上がっていくのだ。

「よいしょ……」

 分厚い魔法の本を本棚に戻して、剣を練習中であろうお兄様のところへ向かう。

 魔法をかけなくても腕立て伏せ二十回、余裕でできるようになったのよ。それを今日お兄様に見せに行くの。

「失礼します、お兄様」

 刃のない剣で素振りをしていたお兄様がその手を止めて、私の方に振り返る。

「ここにカノンが来るなんて、珍しいね。どうかしたの?」

「腕立て伏せ二十回、できるようになったのよ! 見て!」

 と言って、そのまま地面に伏せようとすると、お兄様が慌てて止める。

「ワンピースが汚れてしまうし、そこだと手が痛くなってしまうよ」

 私の手を取って、練習場の一角にある体育館に連れて来てくれた。

 お兄様は疑わしそうに少しだけ目を細めて、私の腕を見た。私の腕はほっそほそのままだけれど、パワーは上がったのよ!

 体育館の床に手をついて、いつも通り、二十回をこなす。もちろん、魔法は使っていないわ。それでもらくらくできるのだから、必要ないもの!

 二十回分、自分の身体を持ち上げて、最後に立ち上がる。

「ほらね! できるようになったわ」

 自慢気にお兄様の顔を見ると、お兄様は眉をひそめた。

「カノン、剣をやりたいというのは、本気で言っているのかい?」

 あら、それは少し不満よ。本気でやりたいと言っていたし、それを証明するために筋トレだって頑張ったんだもの。

「本気よ。だから腕立て伏せだって頑張ったでしょう?」

 私がお兄様を睨み上げるように言うと、ふんわりと笑顔を作って私の頭を撫でてくれた。

「うん、そうだよね、疑ってしまってごめんね。約束通り、僕は剣を教えるよ」

 おいで、と私の手を取って、練習用の剣が置いてあるところに連れて来る。色んな太さや長さのものがあって、少しワクワクしてしまうわ。日本でこんなもの見る機会ないものね。

「カノンはなるべく細身で軽いものがいいだろうね。そうなると、これがいいかなぁ」

 お兄様が手に取ったのは、細いけれど他のものより長い剣だった。

 お兄様から手渡されたそれを握ってみる。たしかに、私の力でも持てるものだ。

「まずは、フォームを教えるね。こうやって持って……」

 また練習場の広場に戻って、お兄様は柄の部分を握って私に見せた。私もその通りに持って、お兄様がやった通りに振り下ろす。

「うん、それを繰り返しやって練習するんだ」

 何度も振り下ろして、素振りを続ける。時々お兄様から注意がとんで、素振りが完璧にできるようになったのはその日から二週間が経ったころだった。

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