4話
「この国は……」
なんでこう、先生っていうのは、眠くなる話し方をするのかしらね。でも、もう少し頑張らなくちゃ。この世界のことをちゃんと把握しないと、ダシアンさまを幸せにできないわ。
「お嬢様、この世界には魔物、というものがいます。さて、ここから起こることは分かりますか?」
「……農作物への被害? それと……人が怪我する場合もあるのかしら」
魔物って、いわゆる野生動物みたいなものよね。前世で見たニュースをうっすらと思い出しながら答えてみれば、先生は目を瞠る。
「正解です。よく分かりますね」
「分かるわ」
……うん、ちょっと調子に乗ってしまった。だって、褒められたのよ。
嬉しいじゃない。しょうがないわ。
「では、魔王は何をしているのか、これは分かりますか?」
前の世界には魔王なんていないもの。ちょっと考えてみる。さっきの本に書いてあったのよね。魔王は魔力とは別に、瘴気を持っているって。
「……魔物を作り出す?」
「そう、その通り。だから、魔王の討伐が重要になってくるのです」
なるほど。
ダシアンさまの手は煩わせないわ。私がこの手で……。
そのときの私はよほど難しい顔をしていたのか、先生に心配された。
ふと思い出して、顔を上げる。少し首を傾げて先生に聞いてみる。
「ねぇ、先生。魔法って、十四歳からしか使えないの?」
「おや、どうしてそれを?」
まだ教えていないはず、という不審な顔をされた。かと言って、本で読んだなんて言ってしまえば、もっと不審な顔をされるわ。だってこれまでの私ならそんなことありえないもの。勉強なんて大嫌いだったから。
「聞いたのよ。誰からだったか忘れてしまったけれど」
「ふむ……、使えない、というのは少し違います。魔力量に差はあれど、皆小さな頃から魔力は持っているもの。でもその扱いが難しいので、安定し始める一四歳までは使うと危ないのです」
「ふぅん……」
それも、護符があれば済む話でしょう。推しが絡んだ私のことは、誰にも止められないわ!
あと小一時間もしたら、先生の授業も終わる。そうしたら、街へ出るの。そこでちょーっとだけ行方をくらまして、護符を探すつもりよ。危険なことも分かっているし、お父様にも怒られるでしょうね。
けれど、私は街にもまともに行ったことないのよ。この世界を自分の目で見たっていいでしょう?
あ、でもそうだわ。ハナがいると困る。
何故か彼女にはバレてしまうんだもの。そうね……、この服を洗ってもらおうかしら。そうしたら、街までついて来られないわ。
ふふ、と少しだけ笑ってしまったけれど、先生にはバレなかった。




