3話
本日2回目です!
翌朝、私はカッと目を覚ました。天蓋付きのベッドを見て、夢じゃないことを実感する。
そうね、メイドが起こしにやって来るまでに、筋トレをやっておこうかしら。
「フンっ……! うぅぅぅ……!」
やっぱりキツかった。そう簡単にはいかないものよね。ぐっと腕の力で体重を支えて、持ち上げる。
昨日よりも回数を増やして、二十五回。
スクワットも腹筋もどうにか気合いで終わらせた。昨日よりもキツいわ。だって起きたら筋肉痛に見舞われるんだもの。
痛い身体に鞭打って、本当に気合いだけでやったわ。
「お嬢様、朝ですよ」
「ええ、起きているわ」
ノックされた扉が開いて、私専属のメイドが顔を覗かせた。
「お早う」
「おはようございます」
早速メイドは着替えを手伝ってくれようとしたけれど……。
「いいわ! 自分でできるもの!」
「ですがお嬢様……」
だって前世を思い出してしまったのよ? この精神年齢で着替えを手伝ってもらうだなんて……、恥ずかしいわ!
「お着替えをちょうだい!」
「……こちらです」
メイドは困ったように眉を下げつつも、ワンピースを手渡してくれた。
寝巻きからワンピースに着替えて、朝食に向かう。
「おはよう、カノン、昨日は腕立て伏せをやったのかい?」
「勿論よ! まだらくらく出来るわけではないけれど……。もう少し待って!」
「うん、分かっているよ」
途中の廊下で合流したお兄様が、尋ねてきた。勿論、筋トレはやったわ! ダシアンさまを守るためだもの!
お兄様に向かって、力こぶを作るようなポーズをしてみる。お兄様は柔らかく微笑んで頭を撫でてくれた。……これに落ちないヲタクはいるだろうか。
食卓にはトーストとヨーグルトが並んでいる。お兄様やお父様はもっと品数が多いけれど、お母様も私も食が細いので少なめだ。
軽めに朝食を食べて、一旦部屋に戻る。
長い髪の毛をメイドのハナに頼んで上に纏めてもらって、本を読む準備は万端よ。
お父様やお母様、それより前のお祖父様などが集めた本が所狭しと並ぶ書斎にやって来た。
午後からは家庭教師がつくのだから、あと四時間ってところね。
まずは基礎の基礎がいいわ……。これなんて良さそう。
分厚いハードカバーの本を引っ張り出して、机の上に置く。
『魔力量は、人によって違う。そこには身分や見た目関係なく、ランダムに分け与えられる』
ここは、ヒロせかと同じ。ヒロインは例外なく高魔力になるんだけど、そのほかの攻略対象はデータによって様々。育て方を変えないと後々苦労することになるから、きちんとステータスや適正魔法を確認したうえで育成を……。
って、マズイ。この調子だと途轍もない時間がかかってしまうわ。
ラノベで鍛えた速読力を活かして、どんどん読まなければ。
『魔法には色があり、全部で五種類。青は水や氷魔法を得意とし、それぞれ赤は炎や環境魔法、緑は風や植物魔法、黄色は光や土魔法、黒は闇魔法を得意とする。適正魔法はほとんどの人が一色だが、稀にそれ以上の適正を持つ人や、魔力を持っていても適正がない人もいる』
ここも、ゲームと同じね。確か、黒の適正を持つ人は少なくて、忌み子と言われることもあるとか……。
魔法を練習するにしても、私の色を知ってからじゃないと、無駄足になりそうよね……。って一瞬思ったのだけれど。
私の目的は魔王を倒すこと。そして魔王には弱点の魔法がない。
よし、オールラウンダーを目指そう! と、こうなった。
……あれ、ちょっと待って。
『魔法は暴発の危険性があるため、十四歳から使うことが好ましい』
……馬鹿なこと言わないで! 間に合わないじゃない! そんなこと言ってる暇ないのよ! 私は焦りつつページを捲る。
『暴発を防ぐためには、抑えの護符をつけるという方法がある』
……あら、そう。これがあればいいんじゃない。私はニヤリと笑う。別に、十四歳から使わなきゃいけないなんて、どこにも書いていないものね。
多分、お父様たちは私が危険なことをすると分かったらきっと止めるわ。
でも私、止められるわけにはいかないの。たとえ私の身が滅んでも、ダシアンさまが幸せだったらそれでいいんだもの。
ふぅ、と時計を見れば結構な時間が経っていた。分厚いだけあって、全然読み終わらないわ。
小さなため息とともに書斎の椅子から立ち上がって、食卓へ向かった。




