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2話

「ねぇ、お父様? 私ね、剣を教えてほしいの」

 夕食を食べて、口元を綺麗に拭いてから帰ってきたお父様に切り出す。

 お父様はびっくりした顔で私を見て、心配そうに眉を顰めた。

 そうよね、今までそんなこと言わなかったものね。でも昨日までの私とは違うのよ。

「私は本気で言っているわ。頑張りたいと思っているの」

「いいかい? 剣っていうのは、領地を持つわたしたちが、領民を守るために使うものだよ。それに、女性と男性には力に差が出るんだ」

「ええ、分かるわ。でも私は、守りたいの。そこに男も女も関係ないでしょう」

 今、立派なことを言ったと思ったでしょう。ごめんなさい、嘘よ。私が守るべきものは、推しの幸せ、これだけよ。

 でも、お父様に対しては、嘘なんてついていないわ。何を守りたいだなんて言っていないもの。

「お父様、カノンもそう言っていますし……。それに貴族の娘と言えども、自分の身を守る術を持っていても良いはずです」

 すかさずお兄様の助け舟。妹である私に、とても優しいわ。けれど、私がヒロインちゃんを苛めていると分かると見捨てられてしまうのよね。

 それは少し悲しいわ。でも推しが幸せなら、私の評価なんてどうでもいい。

「……分かった」

 お父様は難しい顔をしながらも、許可を出してくれた。お父様も、末子である私には甘いのよね。

「教えるのはアリア、お前だ。お前がカノンを推薦したのだ。もしカノンが無駄に人を傷つけるようなことがあってみろ」

 瞳を鋭くして、お兄様に目を向けた。

「……分かっているな?」

「はい、勿論です」

 お兄様は真剣な顔で頷いてから、顔を緩めて私の方を見た。

「そうだね……、まずは剣を握るための力をつけようか。腕立て伏せはできるかい?」

 前世では空手をやっていたもの。動けるヲタクを舐めないでほしいわ!

「はい!」

「まずは、一日に二十回。これが簡単にできるようになったら、剣技を教えてあげる」

 そんなの簡単よ!

 ……って、そう思ったわ。夕食を食べ終わって、部屋に戻って早速やってみたの。

「ふんっ……! うぎぎぎぎっ……」

 そりゃそうよね! 身体が違うんだもの! 体力有り余る女子高生と八歳のロリ……幼女を一緒にしてはいけないわ!

 でも頑張らないと。これも私の最推し、ダシアンさまのため!

「ふんっ……」

 なんとか二十回を終わらせたわ。結構時間がかかってしまった。

 ……出された宿題をやるだけでは、魔王なんて倒せないわ。

 ぐったりと床に倒れこんだまま、ふとそう思った私は、腹筋とスクワットも始めた。腕立て伏せと同じ回数をそれぞれこなして、お風呂へ汗を流しに向かった。

 うん! いい汗かいたわ!

 広いお風呂に浸かりながら、記憶を手繰り寄せてみる。

 確か、魔王はこの国のもっと北、極寒の地にいるんだった。そして、魔法による弱点は無し。ちまちまとHPを削るしかないのよね……。

 ……そうよ! 魔法!

 この家には書斎もあったはずよね。これまで入ったことはないけれど。

 今日はもうそろそろ寝る時間になってしまうし……。また明日ね。

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