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15話

 ミリーは泉へと帰り、私とハナは屋敷に帰った。私は自分の部屋で腕立て伏せ、腹筋、その他諸々の筋トレを済ませる。……あら、もうそろそろ夕食の時間かしら。

 あぁ、お兄様と一緒にご飯を食べられるのも、あと二ヶ月なのね。

 この世界では、日本と違って一月から新学期が始まる。お兄様は魔法学園に入学できる十四歳になった。

 自分の部屋から移動する最中、お兄様と鉢合わせた。

「あ、カノン」

 お兄様は相変わらずの優しい笑みを浮かべて、私が追い付くのを待ってくれる。

「ねぇ、カノン。僕が学園に入学してしまったら剣を教えられなくなってしまうから……。僕の師匠に教えてもらうといいよ」

 基礎は僕が叩き込んだからね、と自慢げに言ってくれる。

「うん、そうするわ。お兄様に教えてもらえなくなってしまうのは残念だけれど……」

 私が目を伏せると、お兄様は私の肩にぽん、と手をのせた。

「寮生活にはなってしまうけど、休みがあるときに家に帰ってくるよ。だから、寂しくはないからね」

 私は小さく頷く。

 けれど、お兄様が入学したら、あの! 私の推しである! ダシアン様と顔を合わせることになるのよ!

 お兄様は優秀だから、一番上のクラスになるのだけれど、もちろんダシアン様も同じクラス。

 ダシアン様とお兄様のレベルも近いから、自然と仲も深まり、私たちのお屋敷へ招待……と、こういう流れになる。

 お兄様となかなか会えなくなってしまうのはもちろん悲しいけれど、それによってダシアン様とお会いできるんだものね……。

「アリア、学園への準備は進んでいるか?」

 先に座っていたお父様が、お兄様に聞く。

「はい、部屋のものの一部はすでに寮へ送りましたし……。勉強もいつも通り進めてあります」

 一応は入学試験があるのだけれど、貴族にとっては無いに等しい。貴族だけが優遇されるのはどうかと思うけれどね。

 もちろんお兄様は優秀だから、入学試験があろうとなかろうと、関係ないけれど!

 私もお兄様と同じように、入学に向けて家庭教師と勉強しているのよ。

「ご馳走さま」

 お母様は先に食べ終わったみたいで、席を立った。……! あ、そうだわ。

 私も急いでご飯を食べて、お母様の後を追う。お母様は自分の部屋の椅子に腰掛けて、本を読んでいるみたいだった。

「ねぇ、お母様。昨日ね、剣術で初めて的を叩き割ったのよ」

「あら、すごいじゃない。それも筋トレのお陰かしらね」

 お母様はそう言って、くすくすと笑う。お兄様にも、お父様にも影で色々とやっていることは言っていないのだけれど、お母様にだけは全部言ってある。

 努力を言いふらすのは恥ずかしいものね。だからお母様とハナ、ししょー以外に私が強くなるためにどれだけ努力をしているのかを知っている人はいない。

「……あとね、今日はミリーに水魔法を教わったのよ」

 お母様には、魔法のことも話したわ。それには流石にびっくりしていたけれど、お母様は止めなかった。魔王を倒すことについてはまだ納得していないみたいだけれどね。

「ふふ、やっぱりそうだったでしょう? 彼女は単純な興味で動いただけよ。遣り口はどうかと思ったけれど」

 お母様の部屋の掃除をしていたメイドが、小さく頷いた。

「私たちは嘘を吐くことができないと言っても過言ではないですからね。強い精霊にもなれば、一言で魔人になることだってありますし」

 ……お母様って、本当に謎なのよ。

 お母様も、精霊と契約していたらしいの。それが、今話していたメイド。お付きのメイドに扮して、しれっと入り込ませたと言っていた。

 ミリーと契約したと言ったら、『あら、それはとんでもないわね。わたくしの契約した彼女も、結構強いと自負していたのだけれど』って、いきなり言い出すんだもの。

 ほんと、とんでもないわよね。

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