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12話

「ねぇ、ししょー! 昨日ね、泉に行ったのだけど、とても綺麗なひとがいたのよ!」

 ふん! と鼻息を鳴らしながら興奮気味に伝えると、ししょーはおっとりと頷く。

「……そうなんだぁ」

「あんな綺麗な人が生きてるとは思えないわ! 肌はめちゃくちゃに白くて、唇がちゅるんってしてるの!」

 私はヲタク特有の早口で、彼女の美しさを熱弁する。いくら語っても、彼女の浮世離れした美しさは伝わらないような気がするけれど。

「すごいねぇ。でもお嬢ちゃんだって綺麗だよ」

 ししょーはそう言ってくれる。

 うん、私もそう思う。前世が平凡オブザ平凡顔だった私からしたら、もったいないくらいに綺麗な顔をしているわ。……だけど、だけどね、

「暇だったから真顔でいただけなのに、泣かれたのよっ……!」

 別の貴族のご子息、ご令嬢とお茶を飲んでいたのだけれど、いきなり怖いと泣かれたのよ! 私が泣きたいくらいよ……。

 確かに、吊り目気味だし唇も薄いから、怖い印象を与えてしまうのかもしれないけれど、泣くことないじゃない!

 ししょーはクッ、と笑って、ポンポンと私の頭を撫でる。

「それはお嬢ちゃんの魅力が分からなかっただけだよ。こんなにも魔力が満ち溢れてて美しいご令嬢なんてなかなかいないって」

「うぅ……、ありがとう……」

 ししょーが慰めてくれてようやく落ち着いたけれど、まだちょっと許せないわよね。

 どうしてお兄様はあんなに優しげな顔をしているのに私だけ……と恨んでしまうわ。髪の色は同じなのにね……。

 はぁ、とため息をついて、布袋を担ぐ。

「今日もありがとう。また明日にでもお邪魔するわ」

「はいはい、溺れないように気をつけなよー」

「えぇ」

 ししょーは私に向かって手を振って、また農作業に戻っていく。私は屋敷とは反対方向に足を向けて、歩いた。

 また森に入って、ワンピースを脱ぐ。

 ワンピースを袋に入れながら泉の方へ目を向けると、木陰に佇んでいた例の女性と目が合った。

「おぉ、いらっしゃい。また来たのだな」

「こんにちは……」

 本当に綺麗な人だ。色素は薄いけれど、どちらかというと和風美人という感じ。元日本人の私としては……超好み!

 仕方ないわよね。どうしても綺麗な人を見ると、推しとして見てしまう。

「そなた、名前はなんと言うのだ?」

「カノン・ベールよ。あなたのお名前は?」

「わらわか? わらわは……ミリア」

 長い髪の毛を退けながら、少し微笑んだ。

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