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11話

 もうそろそろ解散の時間なので脇に置いておいた袋を担いで、ししょーに手を振った。

 このあたりを探索していて、綺麗な泉を見つけたのよね。少し泳いでみたくて、今日は水着を持ってきたのだ。

 ししょーの農場の先にある森に入って、ばさっとワンピースを脱いだ。実はこの下に水着を着てある。前世の学校生活でもやっていたわ。

 木にはもったりと緑が茂っているけれど、その隙間から陽が差し込んで泉を照らしている。

 ワンピースを持って来た袋に入れて、木の根元に置いておいた。ワンピースが汚れていたらお父様にバレてしまいそうだもの。

 綺麗な泉に脚をつけてみて、揺らす。少し冷たいけれど、日差しは暖かいから大丈夫そうね。脚が慣れてきたらだんだん深くまで入ってみる。

 透明だったから分からなかったけれど、結構な深さがある。

 ぱしゃぱしゃと泳いでみると、静かな森の中に音が響いた。

「ふぁー……」

 プールなんて久しぶり。前世以来だもの。

 動けるヲタクとしては、体育のプールの時間が結構好きだった。髪を乾かすのは面倒くさいけれど、魔法を覚えた今なら楽ちんよ。

 すいーっと反対側まで泳いで、草むらを見てみると、血。

「……え?」

 おそるおそる上がって覗き込むと、小さな鳥だった。鳥、というか、鳥の魔物。

 人間に害をなすと言われる魔物とはいえ、見捨てるのも心苦しい。

「できる、かしら……」

 正直に言うと怖いわ。回復魔法はリスクもあるというし、隣にししょーがいるわけでもない。けれど。

 魔物に手を翳して、魔力を注ぎ込んでいく。大きな怪我だもの。もう少し多くして……。

「……チィ」

 鳴いた。

 小さな胸を上下させていて、呼吸もし始めたようだった。もう少し注いでみれば、翼をぱたぱたとぎこちないながらも動かして、空へと飛んでいった。

「よ、かったぁ……」

 力も抜けて、思わずへたり込む。

「む? 魔物を助けたのか?」

 前の方から低めの女性の声が聞こえてきて、草むらに座っている私の前までやってきた。

 顔を上げると、

「きれい……」

 そう、思わず声も出てしまうほど綺麗な女性が立っていた。

「わらわのことか?」

 この世界でも、トップクラスに綺麗な女性だった。というか、生きているとも思えない。それほどに綺麗な顔をしている。真っ白な肌に、澄んだ青い瞳がきれいだ。

「ここで泳いでおったのか。綺麗なところであろう?」

 私を見下ろしながら、泉へと入って行く。白い服が濡れていくのも気にせずに、すいーと泳ぐ。

「そなたは綺麗だな」

「私?」

「うむ」

 泳ぎながら、まだ座っている私を見て目を細めた。

「綺麗であるよ」

「ありがとう……」

「そなたも泳いでおったのだろう? 一緒に泳ごう」

 ちゃぷん、と水に入る。外気に触れてから水に入ると思っていたより冷たくて、肩が跳ねた。

「ん? 少し冷たいかのう。……どうじゃ?」

 おそらく、泉の水に魔法をかけたようだ。水がじわ、と暖かくなる。

「……あったかい」

 女の人は少し微笑んで、ふぅ、と仰向けに浮いた。

 私もしばらく泳いで満足すると、着替えを手に取った。魔法で身体と髪の毛を乾かして、また水着の上にワンピースをかぶる。

「またここに来るとよい。わらわもだいたいこのあたりにいるから」

「いいの?」

「もちろんじゃ。わらわは待っておるぞ」

 私は小さくお礼を言って、帰る道を走り出した。

 ……信じられないくらい、綺麗な人だったわ。

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