10話
「ふぁーあ」
あくびをしてから窓をするりと飛び出して、街の方へ向かう。
……ん? なんでひとりで街へ出ているのかって? ふふん、私だって成長するのよ。もう11歳になってしまったわ。
剣の腕が上がったことでお父様からひとりで街へ出てもいいって言われるようになったからね。
お父様には未だに秘密だけれど、もちろん魔法の腕も上がっているわよ! 中級魔法もししょーに教わって、半年くらいかけてできるようになったの。あんなに苦労したのが嘘のようね。
行き慣れた街への石畳を走り抜けて、広場へ出た。しょっちゅう通っているから、街の人たちも私の顔を覚えてくれているわ。
「あ、お嬢様〜! 新鮮なキャベツ、入荷してありますよ! 買っていきます?」
「うーんと、今日は遠慮しておくわ!」
この街にはいい人が多くって、幸運なことに、身代金目当ての誘拐には狙われたことがない。まぁ、狙われたとしても今の力なら大丈夫だけれどね。
「ししょー! 今日もよろしくお願いします!」
一人での外出が許されてからは前よりもししょーのところに通い詰めているけれど、お父様は私が一人で街へ出られて、嬉しくて舞い上がっているとしか思っていないみたい。
「おーおー、いらっしゃい。はい、ウォーミングアップ」
ししょーはパチンと指を鳴らして、土塊を作る。私はその土塊を見て、指を鳴らす。
「はい!」
「うんうん、今日もばっちり」
どう? 魔力の調整も、練習を始めたときと比べたらちょちょいのちょいよ。
「今日はこの子が怪我してるんだ。さ、練習しようか」
一頭の馬を連れて来て、ししょーが言った。
今の私は回復魔法の練習中。ノーマル魔法の部類に入るけれど、難易度はなかなかに高い。ちゃんと注意して使わないと部位がぐちゃぐちゃになってしまうこともあるらしい。
「怪我の様子は?」
ししょーが私に聞く。回復魔法を使う場合は、怪我の種類、場所の把握が大切なのだ!
「えっと、右前足に切り傷!」
「正解! じゃあ、始めて」
いつも魔法の練習をするときは、ししょーが横で見ていてくれる。魔力の調整が難しくなったりしたときに、横から助けてくれるのだ。
馬の脚に手を近づけて、魔力を込める。こういうときは、もうちょっと少なくて大丈夫……。
「できた……」
ほとんどため息をつくように呟いて、脚が治ったのを見る。
「うん、完璧ー」
ぽんぽんと馬のお尻を叩いて、馬に行っていいよと合図した。
「いい感じだね、あと少しで上級魔法も使えそうだよ」
「本当!?」
「ほんとほんと」
くしゃくしゃと私の頭を撫でて、ししょーは微笑んでくれる。
「そういえばさ、今日のその荷物は何なの?」
私が街へ来るときに持ってきた布袋を指差す。
「この近くに泉を見つけたの! 泳ぎに行ってみようと思って」
ししょーは思い出すように目を回して、ぽんと手を打つ。
「あぁ……、あそこ。気をつけてね」
三年経ちました。おてんば娘、カノンは成長しているのか……?
まだまだ続く予定なので、ぜひお付き合いください!




