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絶滅危惧種は恋をする  作者: ななな
8/25

散髪

北条家に来て2日目の朝

伊織は自然と目が覚める心地よい朝を迎えた

目覚めると凜音はいなくて─

 伊織が家に来て2日目の朝

「…んー!」

 伊織は伸びをしながら居間に入る

 

 すると

「…あれ?」

 凜音がいない

「礼子さん、凜音君はどこですかね?」

 すると礼子が

「髪切りに行ったのよ〜、夏だから」

 そうなのか、と伊織は思いつつ今日何をするか考えた

 

 散歩?

 

 ここって何もすることなくない?

 

「礼子さん、いつも何してるんですか?」

 すると礼子は嬉しそうに教えてくれた

「いつもは散歩とか、隣の家の三枝さんとお茶でもしながら話したり、お庭の野菜たちの様子を見たり、テレビを見たりしてるわよ」

 なるほど、と伊織はやはり散歩でもするかと考え着替えに部屋に戻った

 

「…ゆったりできないタイプの人なのね」

 と礼子はそんな伊織の背中を見つめて微笑んだ

 

 *****

 散歩を初めてはや1時間ほど

「…避暑地とはいえ、やっぱり暑いわね…」

 散歩を始めたのはいいが暑さを考慮していなかった

「…アイス食べたい〜」

 コンビニ遠いんだっけ…

 

「…田舎って、不便だなぁ…」

 と呟いていると、道の遠くの方から自転車に乗った凜音がやってくるのが見える

「…おっ、髪切ったのかな?」

 凜音も気づいたようで、伊織のもとまで来て自転車を駐めた

「…どれどれ…」

 伊織の瞳が凜音を捉える

「…え?」

 凜音は髪を切る前は瞳がよく見えない上に、耳元までかかった髪が夏故に暑苦しそうに見えたが

「…こんな顔なんだ…」

 その瞳は並より少し大きくて、純黒の瞳は傷が少なく

 いままでは若干童顔に見えていたが、さっぱり切られた髪が大人びてみせた

 耳には傷一つない

 

「…似合ってるよ〜!」

 

 伊織のお墨付きだ

 凜音は頬を赤らめつつ、呟く

 

「バイト先の店長のおすすめの美容室で、初めて行ったんですけど…」

 

 伊織のキラキラとした瞳を見て微笑んだ

 

「伊織さんがそう言ってくれてよかった」

 

 グサッ

 

 伊織の心臓から何かが刺さる音がした

 

 伊織は両手で顔を覆って耳まで赤くした

「…ゔ…尊い…原石だった…」

 

 凜音は伊織が何を言っているのか理解できなかった

 

 *****

 そのまま二人で家に帰ってきた

「じゃあ僕、お昼作りますね」

 

 そう言って黒のエプロンをつけて凜音は腕をまくる

 一方伊織は凜音のことを見つめていた

 

(…なんか昨日の夜から凜音君がきらきらしてる…)

 

 そう思いながら居間のテーブルの方に顔を向けた

 そして座ってテレビを見始めた

(そういえばここに来てからスマホ触ってないな…)

 ここにつくまでは充電のことにひどく気を取られていたが

(別にいっか、めんどくさいし…充電も切れちゃってもいいし)

 そう思いながらテレビを礼子と笑いながら見る

 静かで優しい日常は今日も三人を包んだ

 

 

 

 わたし、ここに来てほんとによかったよ

 

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