表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶滅危惧種は恋をする  作者: ななな
7/25

凜音の言葉

凜音に悩みを打ち明ける伊織

そんな凜音は伊織のことをまっすぐ見つめる─


 凜音の瞳は真っ直ぐで伊織には少しだけ眩しい

 

 でも

 

 こんなに真剣に話してくれるのが少しだけ嬉しかった

 

「伊織さん…そんなこと、言わないでください」

 凜音は悲しそうに語る

 でも、その声は強さがあった 

 

「伊織さんは弱くなんかないです

 僕の大切なものを馬鹿にしなかった

 僕が怖がって作っていた壁を壊してくれた

 

 僕のことを否定しないで、受け入れてくれた」

 

 凜音はその手をぎゅっと握りしめていた

 

「あの猫のお墓…」

 伊織が夕方ピアスをお供えしたお墓だ

「…僕、表情とか、声とか、気持ちがわからないって言われるので、ほんとは悲しかったのに、飼ってた猫が死んじゃったとき涙も出なかったんです」

 彼は感情表現が少し苦手で、感情そのものが少しだけ薄い

「だから、周りの人から猫が死んじゃったことについて、思い出したくないのに聞かれたり、悲しくないんだと思われて飼ってた猫のあまり良くないことを言われたりしたんです」

 

 表情に出ないから、誰も気づかなかった

 凜音はその猫が大好きだった

 今も大好きで、昨日のことのように思い出すことがある

 でも、それが見えないだけであまり猫への愛が周りの人間に伝わらなかった

 

 彼はそれがひどく悲しかった

 自分の心が薄いせいだと思っていた

「…でも」

 

 でも

 

「伊織さんは僕の猫のこと、大好きな猫のことを同じように大切にしてくれた」

 伊織の瞳が大きく揺れた

 だって凜音が優しく微笑むから

「僕それが、ほんとに嬉しかった」

 

 初めて見た凜音の笑顔はひどく優しくて、伊織はなぜか涙を流した

 

「だから、僕は伊織さんがここにいてくれたほうが楽しいと思ったんです、静かな日常がもう少し、優しくなると思ったんだ…」

 

 その声は優しくて、芯が強かった

 

 伊織は嬉しかった

「…ありがとう…凜音君、優しいんだね…」

 自分のことを見てくれる人にも気付けずに、人の心ばかり気にしていたから

 そうやって静かに考えてくれる人がいるだけで嬉しかった

「私、ここに来てよかったよ」

 

 

「そう言ってくれて、良かったです」

 

 

 静かで優しい不思議な感覚が伊織を包み込んだ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ