猫の墓
凜音から見れば伊織は全然違う世界の人
全然違う人種
でもそれ故に何もかもが新しくて、新鮮で、
予想の斜め上をゆく伊織
そんな二人はようやく凜音の家につくが─
家についてしまった
凜音はもうすでに疲れていた
げっそりしている
「おお〜、こういう家初めてみたかも…!」
伊織がなんか言っている
凜音は疲れ果てていてそれどころではない
伊織は都会生まれ、都会育ち
ビルやマンションに、囲まれて育った
だからきっと、このど田舎にある少し作りの古い家が珍しいのだろう
「…そうですか」
と反応しておいた
凜音は自転車の前かごに入れていた伊織のブランド物のバッグを取り出し、伊織に渡す
「あ、ありがとう〜」
と伊織は笑顔で受け取る
凜音は自転車を自転車おきに置きに行った
自転車を置き終わって伊織のもとへ行こうとすると伊織が大きな声で凜音に問う
「これなあに〜!」
凜音は少し早歩きで伊織のもとへ向かう
「何がですか」
そして伊織が指差すものを見た
「…」
凜音の表情が少し暗くなったのは気のせいだろうか
「…前に飼ってた猫のお墓です」
彼の声のトーンが暗いのは気のせいだろうか
その墓は少し盛り上がった土に、丸っこい石がきれいに環状に並んでいた
猫のお墓なんて、興味ないだろう
だってこの人は田舎の大自然を楽しみに来たのだ
だからこの話を振ったことを後悔するだろう
ふーん、とか
そーなんだ、とか
さっき凜音と話していたときの相槌と同じように返すんだろう
彼はそう思った
大抵がそうだから
同情か、無関心か
しかしその予想は大きく裏切られた
「…私今何も持ってないや…」
伊織は急に困ったようにそう言い出すと、綺麗なバッグの中をガサゴソと漁りだした
「…?」
凜音は何をしているんだろうと伊織を見つめていた
すると伊織は
「お!これならいいんじゃない?」
そう言って金具やレジンで作られた花の形のピアスを取り出した
おもむろにそれを取り出すと猫の墓の上に置いた
そして墓の前にしゃがみこむ
「…それ、なんですか」
凜音は伊織に問う
すると伊織は手を合わせ、目を閉じながら答える
「猫ちゃんへのお供え物よ
本当は花とかの方が良かっただろうけど、私今持ってなくて…」
そう言った
「…」
息を呑んだ
ああ、この人は
悼んでいるんだ
形だけでも、僕の猫のことを見たことがなくても
「…よし!おっけー!
猫ちゃん、おやすみなさい」
そう優しく墓を見ながら彼女は囁き、
「凜音君!早く!家入りたい!
暑いよ〜…!」
元気に凜音を見てそう言った
凜音は少しだけ嬉しそうにしていた
「じゃあ今から鍵を出しますね、待っててください」
そう言って家のドアを開けた




