その後の話 「猫っ毛 その2」
髪を乾かしてもらってから数日経ったある日、凜音はたまたま会った知り合いに、ずっと思っていたことを試してもらおうとあることを頼む─
ある日の凜音は大学にいた
まだ夏休み中だが、凜音は調べたいことがあって図書館で調べものをしていた
凜音は昼食を取ろうと、昼食時で意外にもがやがやとしている中、隅っこの方に座って弁当を食べようと歩き出した
「凜音〜!」
すると遠くの方から元気のいい声が響いた
その声の主は凜音の大学での数少ない話し相手の一人である、佐山 零士であった
容姿端麗で、スポーツもできると噂の人気者のはずの彼がどうして凜音のことを構うのか本人はわかっていない
「久しぶりだな〜!」
心から嬉しそうに語る彼に凜音はふと何を思ったか
「久しぶり…
あのさ、ちょっと髪を触ってくれないかな…」
と頼んだのだ
というのも、凜音は伊織に髪を乾かしてもらったあの日から少しだけ考え事をしていたのだ
「おお…?いいけど、」
柔軟すぎるのか何なのか分からないが零士は言われるがままに凜音のふわっとした髪に触れた
が、すぐに避けられた
「…えぇ…悲しい…」
零士はそう言いながらそんな凜音を悲しげに見つめた
しかし凜音はあまり気にせずに
「やっぱり…」
と言って、
「…ありがとう、じゃあ」
と零士に別れを告げた
零士は慌てて凜音を引き留めた
「おい…どうしたんだよ?悩みごと?何系?」
とにかく会話を続けようと、引き留めた
すると凜音は暫く考えてから至って真面目に
「ただ、きっとあの人じゃないと嬉しくないんだなって思って…」
と言った
「え?」
そう、凜音は考えていたのだ
祖母の礼子や伊織なら頭を撫でても、髪を梳いても嫌というよりは寧ろ嬉しいくらいだ
しかし今までの経験上何となくそれ以外の人を避けてきた気がするため、”それ以外”の零士に髪を触らせたのだ
そしたら予想通り、凜音は反射的にその手を避けた
「その事実だけが…なんでこんなにも嬉しいんだろう…?」
零士はえ?え?と頭に疑問符を浮かべ続けていたが、凜音は一人納得した様子であった
*****
「凜音君おかえり〜!!」
夕方、家に帰ると今日は休みの伊織が出迎える
「…」
凜音は暫く伊織のことを見つめていた
「凜音君?私の顔なんかついてる?」
伊織がそう聞くと凜音は
靴を脱いで玄関から上がってから、ゆっくりと手を動かしたと思うと
「…え?」
伊織の頭に手を置いた
だが左右に動かす手があまりにもぎこちないので伊織は少し笑ってから
「凜音君、こうするんだよ」
と言って凜音の頭を撫でた
「…っ」
凜音はなぜかびっくりして暫くしてから俯いた
そんな彼の顔は見えはしなかったが、耳が少し赤いのは気が付かなかったことにしようと伊織は心の中で凜音を愛おしんだ




