こうして君と笑っていよう
あれから2日後、凜音はダンボールの片付けに追われていた…その理由とは…?
あれから2日後が経ち、今凜音はダンボールを開いていた
「凜音くーん、終わりそう?手伝おうか〜?」
と、ドアの向こうから伊織の声が聞こえる
凜音はドアに向かって、
「大丈夫です」
と優しく言い放った
一体彼は何がどうしてダンボールを開いているのか、どうして伊織がいるのか、2日前に戻ろうか
*****
「…凜音くんは、これからどうしたいの?」
凜音が母と別れた帰り道、もう日が落ちて薄暗い中、伊織は凜音に聞く
凜音はもう泣いてなかった
涙の跡は残るが、その表情は伊織が出会った頃とは違っているような気がした
「…僕は…」
祖母礼子はいつ目が覚めるか分からない、その間彼は一人であの家を守り続けるのか
父から離れることを決意して、母とはもう会わないと言い放った彼には、何が残っているのだろうか
「…凜音くんの中には今、何が残ってるのかな」
優しく、哀しげに伊織は呟いた
「…」
凜音はしばらく黙り込んだ
そして
「…何も…」
と話し出す
“何も”と聞いて伊織は涙が瞳に溜まって視界がぼやけた
でも、彼はこう続けた
「何も…失くしてないんですよ」
伊織は瞬間顔を上げた
そして彼の決意に満ちた瞳を見つめて後悔した
(私は…つくづく馬鹿ね…そうよ、この子は…)
「…僕の中には、あなたがくれた感情が、父さんがくれた感情が、母さんがくれた感情が…
ばあちゃんの優しい笑顔が…あって、」
どうりで、と伊織は思った
きっと彼が変わっていなかったら、礼子が倒れたときにあんなに涙はしなかっただろうし、他の選択も、きっと、しなかった
「…ほら、伊織さんが来る前よりも、
…不思議ですね、僕の中はひどく賑やかで、温かいんです、今も」
その声色は、穏やかだった
だから、それがきっかけかはわからないが、伊織は急に立ち止まって静かに呟いた
「…いつからなのか…私には分からないの」
凜音は急に立ち止まった伊織の方を振り返る
「…君があまりにも真っ直ぐで、素直で、優しくて、強くて、」
凜音は驚きながら伊織の元へ戻ってくる
「…そんな君だから…私は…」
すると凜音は急に話し出す
「…僕も…いつからか…分かんないんです」
伊織は驚いて凜音を見上げた
「でも…あなたがくれるものは全部優しくて、暖かくて…ちゃんと温度があって…」
凜音は伊織の手を優しく握った
そして微笑む
伊織は目も、心も、全部奪われたように驚いたが、すぐに微笑んだ
「そんな伊織さんだから、僕は…」
「「守りたいって、思った」」
もう前からわかっていた
*****
それから凜音は伊織の家に住む事になった
その旨を凜音の父に伝えると、父は実家に暮らして礼子のことも時々見に行くと約束してくれた
よって今凜音は伊織の家に引っ越して来たばかりで、荷物をダンボールから出しているのだ
実はこの家は伊織が昔から一軒家に住みたかったから建てたものの、実際住んでみると部屋が余ってしょうがなかったので、余っている部屋を凜音の部屋にしたのだ
「…終わりました」
と凜音がドアから出てくると、伊織はお菓子とお茶を用意していた
「お疲れ様〜!一緒にお茶しない?」
と笑顔で凜音を誘う
すると凜音はひどく嬉しそうにして、
「もちろん、ありがとうございます」
と返事をして椅子に座った
そして二人は賑やかにお茶をしながらゆったりと話し続けた
(…あぁ…こうして君と笑える幸せがあるなんて、思いもしなかったけど、)
「…伊織さん、」
「ありがとう」
(…きっと出会ったときから、)
君の自転車の目の前に飛び出して、必死に助けを求めた
(…決まってたのかな、それとも、)
悩みを話すと当たり前のように一緒に悲しんでくれた
(…私達が…そうさせたのかな)
だから私も、一緒に君と泣いた
この穏やかな日々が、ゆっくり続くといいな
ここまでで一旦話は終わりになります、ですが、このあともゆっくり流れる二人の時間を描いていけたらな、と思っています。ここまで読んでくださってありがとうございました。




