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絶滅危惧種は恋をする  作者: ななな
2/25

植物好きと迷子

今日の授業が終わればそこからは夏休みだ

夏休みはシフトをたくさん入れようと思っていた凜音

しかし、そうも行かなくなりそうだ─

 凜音は目を覚した

「…暑…」

 そう言って布団からゆっくりと出て立ち上がる

 彼は上下シルクのパジャマを着ていた

 眠ることに関してはこだわりがあるため、大学に入ってから怯えながらネット通販でこのパジャマをポチった

 

 とりあえず布団を畳む

 

 それから時計を見た

 【4:32】

 時間を確認してから洗面所に行く

 

 すると祖母の礼子れいこが珍しく洗面所に立っていた

「…ばあちゃん…なにしてんの?」

 少し掠れた寝起きの声で礼子に問う

 すると礼子はしわしわの顔をくしゃりとさせて微笑った

「人には親切にするんだよ…」

 これだけ言ったら何事もなかったかのように居間にテレビを見に行った

 

「え…わかった、けど……」

 

 礼子の突然のあの態度に疑問を抱きつつ凜音は顔を洗った

 

 *****

「…ばーちゃん、行ってきます」

 玄関で靴を履きながら居間にいる礼子に大きな声で言う

「いってらっしゃーい…気をつけてねぇ…」

 壁やドア越しの篭った声が返ってきた

 

 その声を聞いてから凜音はドアノブに手をかけて外へ出た

 

 

 自転車を漕ぐ

 

 

「…暑いなぁ…」

 彼は独り言が多い

 

「…授業が終わったらもう夏休みか…何しよ…」

 

 太陽の光が凜音を照らす

 白い肌は容赦なく紫外線を浴びる

 

「…溶ける…」

 

 あまりの暑さに額に汗をかき出す

 

「…シフト、たくさん入れてもらお…」

 

 そう呟いた

 

 *****

 授業が終わって凜音は今駅にいる

 今日はバイトのシフトが入っていない日だったためだ

 

 電車の時間を待っている間に本を読んでいた

 

 凜音は電車の時間を調べたり、バイト先の店長とやり取りをする以外でスマホをほとんど使わない

 

 彼以外の待っている人たちは皆下を向きながらスマホを見ている

 

「…綺麗だぁ…」

 彼がやけに瞳を輝かせて読んでいる本というのは植物の本であった

 静かな駅でその独り言はひどく響いた

 

 何人かが凜音のほうを見るが凜音は周りを気にせず本に夢中になっていた

 

 しばらくすると電車が来た

 電車に乗ってからも彼は本を読んでいた

 

 

 *****

 凜音は地元の駅についてから自転車で家に向かっていた

 

「ヒメツルニチニチソウって、お姫様みたいだなあ…」

 またも独り言である

 

「すみれ色がグラデーションになってるのが綺麗…」

 

 口元を緩めながら呟いていた

 

 今は3時過ぎ

 まだまだ暑いが彼は読んでいた本の余韻に浸っていた

 

 頭の中も植物のことでいっぱいになっていた

 

 すると

 

「ちょっと待ったぁ〜!!!」

 キキィーッ

 

 

 自転車が急に止まる

 

 凜音は瞳を大きく開いて驚いている

 その手は止まったにもかかわらずまだブレーキを強く握っていた

 

 自転車の目の前には女性が手を大きく広げて立っていたのだ

 

 

「…な、な、どちら様ですか」

 

 凜音はまだ動揺していた

 しかし女性はそんなことは気にも留めず

 

「…迷子になりました!助けてください!」

 

 元気にそう言った

 

 凜音は更に戸惑った

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