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絶滅危惧種は恋をする  作者: ななな
19/25

全部、愛おしかったよ

凜音が父親に連れて行かれてから3日が経った。自分が北条家の問題に口出ししてはいけないと思っていた伊織はとうとう動き出した─

 凜音が父親に連れ去られて3日が経った

 伊織は凜音に連絡を取った

 凜音の状況を説明すると、今、父親の家から出させてもらえない状況なのだそうだ

 出たら病院に行くか、礼子の家に行くと思われているため、家から出させてもらえない

「…凜音君…」

 伊織は凜音が連れ去られた後、一日中凜音が帰ってくるのかと、病院で礼子の手を握っていたが、帰ってくる気配が無いため、凜音に連絡をすると、外に出られないと告げられてしまった

 そのため、今伊織は自宅にいる

 自宅の座椅子に寄りかかりながら、無気力な表情でその手には1枚の名刺があった

 

 伊織は何となく時計を見つめる

 凜音が消えて3日目、凜音と出会って11日目の9時頃だ

 秒針の微かな音が伊織の心を急かそうとする

 伊織は無気力な表情だが、内心酷く心がざわついていた

「…私が…口出しなんて、できないよ…」

 伊織はそう呟き、頬を透明が伝っていた

「君の…家族の…ことだから…」

 家族…その言葉に伊織は凜音と出会った頃のことを思い出す

 

『…伊織さんがいた方が…

 

 静かすぎる日常が暖かくなると思う』

 

 そう、感情を灯さない表情で言われた言葉は

「…嬉しかったな」

 と

 

 嬉しかった言葉を探していると、凜音が初めて伊織に微笑んだことを思い出す

 

『伊織さんは僕の猫のこと、大好きな猫のことを同じように大切にしてくれた』

 

『僕それが、ほんとに嬉しかった』

 

 するとどんどん凜音や礼子との思い出が溢れた

 

『伊織さんがそう言ってくれてよかった』

 散髪したあとに微笑んでくれたこと

 

『…僕…僕…それは…やだな…』

 伊織の話を聞いて悔しそうな悲しそうな瞳

 

『…よかったぁ…』

 伊織がここに来てよかったと言うと、安心したように抱きしめてくれた温かい腕

 

『はい』

 いたずらっぽく伊織の事を見ながら笑う声

 

「…私は、私は、」

 伊織は手に持った名刺を見つめながら先程とは至って違う表情で

「それが全部、愛おしかったよ…」

 涙を堪えながら

「全部全部…愛おしいよ…!」

 そう言って立ち上がった

「だから…っ」

 

 その瞬間から、

 涙などは振り払い、いつも通りの元気な笑顔を浮かべて


「やっぱり、私らしく行こうか…」

 

 いたずらっぽく、そう言った

 

 *****

 その頃凜音は父親の家に居た

 家に用意された凜音の部屋のベッドの上で横になっていた

 ベッドはそもそも寝慣れない

 その上、礼子のことが心配で気が気でないため、眠れていない

「…ばあちゃん…」

 目は6日前からずっと腫れている

 その腕は大きめの白い猫のような謎の生き物のぬいぐるみを抱き締めていた

 そのぬいぐるみは凜音が幼い頃に、父と母と三人で出かけたときに買ってもらったもので、父が海外に行くときに間違えて持っていってしまったものだった

 帰ってきたので返してもらったのだ

 でも今はそんなことは嬉しくもなんともないのだ

 でも父は帰国したばかりで忙しくて外出しているため、一人で知らない家で留守番をするのが少し心細くてぬいぐるみを抱き締めていた

「…もうやだ…帰りたい…ばあちゃん…」

 鼻をすする音だけが響いた

 

 しかし、それ以外の音が続けて聞こえてきた

 凜音からではない

 

「…ぇ…」

 外からだった

 

 

「凜音くーん!!」

 

 

 

 ここは住宅街で、そんな声を出したら近所迷惑だが、それでも凜音を呼びかけてくる声が聞こえた

 

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