いつか言おうと思っていたこと
「また…消えちゃう…」そう凜音が言った理由が明かされる。それは礼子が倒れた日に、礼子に伊織が聞かされていた真実だった。
礼子が倒れた日に、伊織は礼子から凜音の両親のことを話されていた
凜音の父は凜音が幼い頃から海外で働いている
なぜなら凜音の父は凜音を養うため、幸せにするために、働かないとならないからだ
というのも、凜音の母が彼が幼い頃に失踪してしまったのだ
なぜかは分からない、検討もつかない
しかし彼女は凜音や、自分のパートナーのことを心底愛していた
だからこそ、いなくなった理由がわからない
だから凜音は礼子とともに暮らしていたのだ
母が目の前で消えて、父は海外に飛び立ち、猫のハナも命を燃やし尽くして、礼子も今、居なくなってしまうのではないかと
そうしたら凜音は一人になってしまうと、伊織は更に涙がこみ上げた
『また…消えちゃう…』
その言葉の意味がわかってしまった
そんな凜音は伊織の涙をずっと拭き続けて、無理矢理微笑っていた
その笑顔が、何かに似ていた
(あぁ…わかった…わかっちゃった…)
何かに気がついたように
伊織の体温が熱くなってゆく
心臓の音が大きくなってゆく
(願えば…祈れば…)
伊織は奥歯を噛み締めて涙を止めて
凜音のことを見つめて瞳を大きく開いた
(君の…幸せを)
自分の手のひらを握りしめた
「…凜音君…君はもう、何も失わない…
こんな結末で、失わせたりしない」
凜音は驚いた様子で伊織のことを見つめる
伊織は凜音のことをはっきりと見つめながら笑った
「任せてよ、祈りはきっと届くよ」
そう言って凜音の手を引っ張って病院へと二人で田舎道を歩いた
伊織の言葉は魔法のように、凜音の涙を止めていた
(なんだか信じることができる気がするんだ)
その瞳が、生きる力を孕んでいたから、
あなたが僕に
心をくれたから
そう思って
病院へとたどり着いた
白いドアをスライドさせて、ベッドの方を見れば静かに眠り続ける祖母がいた
何回見たって苦しいけど、
「ばあちゃん…」
苦しいから…
「死んだら、だめだ…」
だからこそ、大切な人の手を取って祈る
伊織が教えたこと
「…ぁ…」
今言わないと、後悔すること
いつか言おうと思っていたこと
「あ…」
その言葉を言おうとする凜音の背中を優しく伊織は叩いた
「ほら、それでいいんだよ、言っちゃいなよ」
伊織は優しく微笑みながら凜音のことを見つめる
そんな伊織を凜音は見つめながらその言葉に首肯した
「ばあちゃん…」
まだ温かいその手を握りしめながら祈り続けよう
「愛してる」
伊織からもらった心を次は自分が渡さなきゃ
「愛してるよ」
礼子の手の甲に優しくキスをした




