泣いても泣いても
祖母礼子が倒れた病院で、凜音は泣いても泣いても─
「僕は…一人、になる…」
ポツリ、ポツリ…
無色透明が、白い部屋に優しく降る
その真実を目にして、諦めたくなかったのに
諦めざるを得なくなる
ベッドの上で静かに眠る“大切”は見れば見るほど小さいから
「…また…消えちゃう…」
静かに涙が出る
凜音の腕はどんどん体温を失って、冷たくなってしまう
でも
「…っ凜音君!!」
あぁ、目を覚ますような声だ
心臓がもう一度動き出すような声だ
「…まだ生きてるんだよ!」
その言葉は凜音の体中に電気を流すようだった
諦めてはいけない、だってまだその小さな体で凜音の“大切”は息をしている
「…凜音君…こっちにおいで…」
ベッドの隣に座っている伊織は自分の横にもう一つ椅子を用意して凜音のもとへ行き、その冷たい手を引っ張った
体温を戻すように手を握りながら凜音のことを座らせて、握っていた手を、バトンのように、礼子の手へと移した
「…っぁ…」
伊織は凜音の背中を優しくさすった
その背中から温かさがむせ返るほどこみ上げて
「…諦めたふりを、しちゃだめだよ、もっとたくさん泣いて、泣いて、祈るんだよ…私達は…」
そんな伊織の言葉も相まって
「っ……だ…やだ…っ…やだ、やだやだっ…死なないで…っ…居なくならないでよっ…!!
…生きていて…欲しいんだよ…っ…」
心が溢れた
こんなことは、今までなかったのに、心なんて、溢れるほどもなくて、涙だって最近までは出なかったのに
なのに、今は止まらない
心が、息が、詰まる
溢れてしまってもう何もかもが止まらない
もう心が一生分溢れて、零れて、止まらなかった
*****
取り敢えず一旦家に帰った二人は、家に着いても、あまり話をしなかった
凜音がずっと泣いていたから、一生分泣いていたから
夜が来て、朝が来て、伊織が凜音の部屋の前に来ても、ずっと泣き声が響いた
伊織はそろそろ病院に行こうか、と凜音を連れていくために部屋に入った
「…凜音君…」
呼んでも聞こえはしない
「凜音君…」
でも、何回だって呼ぼう
「凜音君…凜音君…凜音君…」
君が、気づくまで
あぁでも…
「り、…と…くん…」
私まで涙が止まらないよ…
その声を聞いた凜音は涙を流しながらも伊織の方を振り返る
伊織の泣き声と自分の鳴き声を聞き分けて、伊織のもとにやって来た
「い、おり…さん…」
震える手で彼は伊織の涙を優しく拭いた
でも伊織の涙も流れて止まらないので彼は何度も何度も優しく拭き取った
「りっ…凜音君…ごめっ…君のほうがぁっ…辛いのに…っ」
凜音は泣き腫らした顔で無理やり口の端を上げて首を横に振る
「でもっ…でも…」
(礼子さんがいなくなったら君は…一人になってしまう)
それは、言いたいが、言ってはいけない言葉だった




