冷やし中華を食べながら
伊織がここに来て5日目の昼彼らは昼食を何にするか話していた…
「凜音くーん、今日のお昼はなんですか〜?」
居間のローテーブルに座ってテレビを見ながら伊織が言った
今の時刻は12時17分
「今日は冷やし中華なんてどうですか〜?」
居間の近くのキッチンから凜音は冷蔵庫の食材を見ながら答える
すると伊織が目を輝かせて
「…よっしゃ…!!」
とガッツポーズをかまし、礼子に言いに行く
「礼子さん!今日のお昼は冷やし中華ですよ〜!」
伊織と同じように礼子もテレビを見ていたが、テレビに夢中で先程の会話を聞いていなかった
そして伊織が伝えると目を優しく細めてくしゃりと微笑った
「…そうなんだねぇ…嬉しいわ…冷やし中華久しぶりねぇ…」
と嬉しそうに伊織に言う
伊織も礼子が喜んでいるのを見て嬉しそうに凜音に言った
「早く食べたいなぁ…」
すると凜音が呆れたように伊織に言った
「じゃあ手伝ってくださいよ…」
そう言われた伊織はギクリと固まって急に礼子と話し出す
「ねぇ、礼子さん、凜音君って、お母さんとお父さんどっち似ですか?」
勢いで話し出した伊織に対して、礼子はしばらく黙った
「あれ…?」
瞬間伊織は何かを察した
(まずいこと…聞いちゃったかも…)
伊織の首筋を冷たい汗が滴る
(だって凜音くんも礼子さんも…凜音くんのご両親の話をしないから…)
急に心臓の音が大きく聞こえだした
(…もしかして…どっちも亡くなった…とか…?)
そう思うと堪らず伊織は謝ろうと
「…っ…えっと…すみませ」
したが
「母似…かしらねぇ
最も…凜音はお母さんの顔を覚えていないようだけど…」
と礼子が言った
「…ぇ…それは…どういう…?」
と聞いたが礼子はそれ以上は話そうとしなかった
(そもそも私が土足で踏み込んでいいわけ無いでしょ…何いってんの…私…)
しかし、その後は凜音の話に花を咲かせた
「あの子はねぇ、昔から…」
「へぇ…そうなんだ…」
「そうなのよ…ふふふっ」
「んふっ…ふふっ…」
終始和やかな話だった
「…ん?…おっ!いい匂いだ〜!」
キッチンの方からの冷やし中華の匂いが伊織の鼻をくすぐった。
「できましたよ〜」
凜音が両手に皿を持ってやってきた
「…おいひい」
冷やし中華を口の中いっぱいに頬張って幸せそうに微笑む伊織を見て凜音は微笑んだ
「良かったです」
するとその笑顔を見て伊織がむせ返った
「ゲホッ…んぐ…っ…」
水を思い切り飲む
「だ、大丈夫ですか?」
と凜音が聞くと、伊織は凜音のことを凝視しながら必死の形相で言う
「大丈夫じゃないよ〜!急に微笑まれると寒暖差で私おかしくなっちゃうよ!」
凜音は意味がわからないといった表情でもう一度聴き返そうと思っている
しかし
「あ~あ~、…もういいわ…とにかく、凜音君はもっと自分の持っているものに対して…」
とごちゃごちゃ伊織が話し始める
しかし凜音は大方察した様子で、半分聞き流していた
「…って、ねぇ!凜音君?聞いてないよね!?」
と伊織はようやく気づき凜音に文句を言うが、
「はい」
そう言って凜音はいたずらっぽくもう一度伊織に向かって微笑んだ
「…」
としばらく伊織は唖然としていたが今更ながら
「って!やっぱ聞いてなかったんかい!!」
賑やかな夏の昼
優しく、騒がしく、時が流れてゆくのだった




