④離婚
俺は取るものも取り敢えず、そのまま実家に帰った。
「暫く家には帰らない」
母は俺のただならぬ様子に何事か?…と首を傾げていたが
「だから、結婚の時に反対したじゃない。」
「………」
「なんであんないい子をふって、6歳も上のバツイチの女性を連れてきたかね…」
今は過去に触れて欲しくない。
「…悪いけど今は黙っていてくれないか?」
母は一つため息をついて、部屋を出ていった。
俺の部屋は結婚前と変わらないまま、空き部屋になっていた。
だが、3つ上の兄が嫁さんを貰い、今は離れで今年産まれた甥と三人で暮らしている。
いつ迄も実家にいる訳にはいかない。
「…もう無理だ…別れるしかない……」
「もし子どもが出来ていたら……認知はしなければならないよな…」
それから何度も妻から実家に電話がかかってきた。
母が気を利かせ、俺が居ても取り次がなかった。
そして一ヶ月過ぎた頃…
妻から署名捺印された離婚届けが届いた。
とりあえず荷物を引き取り、借りていた部屋を解約する為に俺は家に久しぶりに帰った。
今は妻の顔を見るのも嫌だ。それにまた
「愛している」
なんて言われ、すがり付かれたら、殴りたくなるかもしれない。
顔を合わせたくない…そう思っていたが部屋に入るとそこに妻はいた。
思わず身構えたが、妻は意外にも普通の顔でこちらを見ていた。
無言で自分の荷物を整理していると
「いつもそうなの…」
聞こえない振りで荷物を片付ける。
「貴方も…その前の彼も、その前の彼も…その前もずっと…」
「………」
「本当に愛しているのにみんな逃げていく…」
「………」
「…貴方は6年間も同じ女性を愛していた…優しい人だった…だから貴方ならと思ったのに…」
(…6年も愛せたのはミキだったからだ!お前じゃ無理だ!)
「貴方もやっぱり他の男と同じだったわね…」
「…もし子どもが出来ていたら、認知はするから…」
それだけ言って俺は作業に集中した。
「………」
それきり彼女は何も言わなくなった。
借りてきた軽トラックに荷物を載せ、不動産会社に向かう。
元妻は引っ越しはどうするのだろうか…ふと思ったが、もう関係ないと、頭をふった。
「では、これで解約のお手続きは完了です」
「はい、お世話になりました」
「それで、今後の確認の為の連絡先ですが、女性の方でよろしいですか?」
「いや、俺で構いませんけど…」
「先日、男性の方と別の物件の内覧にみえられた時、連絡は自分でいい…と仰っていましたので…」
「!?」
…まだ1ヶ月…暫く呆れて言葉が出なかった。
俺が家を出てすぐか?…
いや、その前からだろう…
愛…?
違う、あんなものは愛じゃない。ただの独占欲だ。
嫉妬し、束縛し、自由を全く与えず、男を縛りつける。
なのに自分は着々と次の男を漁り、キープしていた…
あまりの衝撃に、眩暈がしたが、平静を装って不動産会社を出た。
「認知なんか絶対にするもんか!」
怒りが身体を熱くしていた。