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夢(you&me)②


「ふと…思ったんだけど…」



夕飯時、突然母が口を開いた。



「?…何をだよ」



「お前、誰とももう結婚はしない…って言ってたよね」



「うん、言ったけど…」



「それは本心なの?」



「あんな思いして、また家庭持ちたいなんて誰も思わないよ!」



「…でね、思ったんだけど…」



「………」



少し嫌な予感がした。



「ミキさんに連絡してみたら?」



(やっぱり…)



「今更、何を連絡するんだよ…俺の勝手でふって、泣かせて、離婚したから、よりを戻して下さい…なんて、言える訳がない!」



(自分で言っていて情けなくなる…まさに自分が出来るならそうしたいと思っている事だから…)



「でもね…別れてから、まだ三年位だし…」



「まだ三年って…別れた時、彼女は24、今はもう27、結婚適齢期だ…

好きな相手くらいいるだろう…」



「そうだね…あの子は可愛いかったし、いい子だったから…」



(母は俺に喧嘩を売っているのだろうか?)



「恥を忍んで、一度連絡してみたら?」



「………そんな事…出来る訳ないだろう…」



(母は俺の事を心配しているだけだ…でも…)



「この話はもうしないでくれ」



「…わかったよ」



急に食卓が静かになった。







部屋に戻って、ベッドに腰かける。


母は本当に俺の事を心配している。



「それに…」



写真が丁寧にテープで補修されていた。母がしてくれたのだろう。



箪笥の上に置いておいた破かれたミキとの写真だ。

俺とミキの間に見事に亀裂が入っている。



「写真を補修して綺麗に繋げても、現実ではもう繋がらないのにな…」



息子の密かな思いにも気づいているのだろう。



(ごめんな、母さん…)







「お待ちしておりました。」



(昨夜と同じ夢だ)



俺はハッとして、周囲を見回し、思わずミキの姿を探す。



「あの方はまだ来訪されておりません。」



「そうですか…」



「パラレルワールド及び転移について何かご質問はございますか?」



(やり直しの可能性やミキの姿で浮かれていて、昨夜は何も考えていなかった…)



「皆様そうでございますよ。」



…また心を読んだ?考えている事が読めるのか?…



「魂ですので貴方様にもそうしようと思えば、可能です。」



「では…俺が転移したら、今の世界の俺の存在はなくなるのですか?」



(存在自体なくなるなら、母さんの悩みの種も消える…)



「いいえ、存在は残ります。正式転移を選ばれた場合、貴方様の魂は分裂し、一つは転移先へ、もう一方の魂は残ります。」



(いずれにせよ、残る俺の魂は現実を生きていかなければならないのか…)



「人生とは自分で選択し、進んでいく道でございますから。」



「では、何故パラレルワールド転移という事が行われているのですか?」



「世界の可能性を拡げる為、でございます。」



(可能性を拡げる?)



「転移した世界では、その世界の人間に分かれた魂が入り融合する。

そして不確定要素を取り込んだ魂は、あるべき道ではなく、違う選択肢を選ぶ場合もある。

何気ない言葉や行動で選択肢は広がる場合もあるのでございます。」



(更に道の分岐が細分化されるという事か)



「左様でございます。」



「何故そんなに世界を拡げる必要があるのです?」



「世界が滅びない為…でしょうか…」



(滅びる?)



「選択肢を間違え、滅ぶ世界もある。しかし、同じ分岐路を持つ別の世界はそのま存続して行く。

全て滅びる事を回避するには、パラレルワールドは多い方が良い。…そう認識して頂ければよろしいかと。」



「………?」



「実際、貴方様の世界でも、失われた古代文明等の伝承はございますでしょう。

しかし、別のパラレルワールドではその文明がまだ存在している…そういう事でございます。」



(何気なくきいたが…壮大な話になってしまった…)



「極端な例え話になりますが…

貴方様がどなたかとご結婚され、お子さまが産まれる。そのお子さまが成長され、強力な兵器を作り出し、世界を滅ぼす。」



(物騒な話だ…)



「しかし、貴方様が別の方とご結婚されれば、その兵器を作ったお子さまは世界に存在しない…よって世界は滅びない。

そういう事でございます。」



(別の誰かと結婚…)



「では、同じ世界でも結婚する相手が変わる事もあるんですね?」



「勿論でございます。」



(壮大な話から、いきなり小さい話に変えてしまった…)



「世界がどうなる等考えて転移される方はいらっしゃいません。

皆様今の自分の悩みを解消したいが為に、ここに来訪されるのですから。」



慰めともとれる話をしてくれた。



「お待ちの方が見えたようでございます。」



振り返ると、昨夜よりはっきりした姿のミキがいた。



「ミキ、ミキ」



俺は彼女の名前を呼んだ。

しかし、程なくしてまたその姿は幻のように消えてしまった。



「彼女の思いは、まだ淡く儚いもののようですね。」



「淡く儚い?」



「貴方様のように(人生をやり直したい)と、はっきり目的を持って来訪される方の魂は実体化しやすいのですが…

まだ何故この場所に来たのかご自分でもわからない方の魂は薄いのです。」



「彼女と一緒に、パラレルワールドへのお試しをご希望でしょうか?」



「出来るのであれば是非」



「……彼女を伴っての転移お試しは、貴方様のご希望に沿うものにはならないかもしれませんが…」



(…?…)



「それでは、またのご来訪、心よりお待ちしております。」


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