第32話「次の目的は決まった!」
「あ、そっちは死んでるんだ。どこで?」
「……ここからずっと遠いダンジョンですわ」
カレンの話によれば、魔物の発生源が複数存在しているのを突き止める段階まではいったが、さっそく向かったダンジョンで『俺たちが先行して入る。数時間以上が過ぎて戻らなければ死んだと思ってくれ』と言われて外で待っていたところ、経てども経てども戻ってこないので、死んだと思って諦めて引き返したらしい。
聞いていて、エイリアどころかフラッドも首を傾げた。
「待って待って。つまりあれかい? 君はふたりが死んだと思ったから、白魔法しか使えないし旅を諦めた、と。そして国王に勇者が死んだ報せを送った帰りの途中で森に辿り着き、魚に喰われてしまった……そんなところか?」
カレンがこくこく頷く。「まさしくその通りですわ!」と。がっかりだった。
「……あ、もうひとつ聞きたいんだけど。私が国王からの手紙で知った訃報は三人分。つまり君も入っているんだが、それはどうしてだい?」
「あら。わたくしそんなふうに書いた覚えはありませんわよ? たしか……『勇者様一行は全滅致しました』と、端的に送りはしましたけれど」
悪びれもせずに言うので、さすがにエイリアも怒鳴った。
「それが原因じゃないか! 全滅って言葉の意味分かってるか!?……ん? 待てよ。その場合、君が書いた手紙には差出人の名前は……」
「た、たぶん書き忘れたかもしれませんわね……?」
「こっちを見ろ。蝶々を追い掛けてる場合じゃないだろうが」
なんのために旅に出たのかと憤慨する。今すぐにでも帰り支度をして邪魔の入らない研究室で陽当たりの良いなかを実験に没頭していたい気持ちに駆られた。
「しかも! ふたりが死んだかどうかすら確かめてないじゃないか! 死体も見つけてないうちから早とちりして手紙を出す馬鹿がどこにいるんだよ!?」
「ご、ごめんなさいですわ。わたくしったら……!」
しくしく泣き出すカレンにはため息が出る。が、いっぽうで「そういうヤツだったのを思い出した」とエイリアは納得もしている。彼女はしっかり者に見えるが、うっかりなミスが多く、白魔法厳禁なアンデッド系の呪いに掛かっている味方の傷を癒そうとして止められたことも数えきれない。
「貴様は馬鹿を治す薬は作れんのか?」
「できたらやってるよ。……それよりも、だ。そのダンジョンはどこに?」
「ここから北の山脈──ディグ山脈にある洞窟ですわ」
奇しくも次の目的地として見据えていたディグ山脈だと聞いてフラッドと顔を見合わせてから、けらけら笑った。
「面白いこともあるもんじゃのう!」
「奇遇だね、私たちもそこへ行く予定だったんだよ」
どちらかといえばダンジョンよりも、そこに棲んでいるという魔物に会いに行くのだが、どうせ近いのなら探しに行ってやらないでもない、とエイリアは少し乗り気だ。「もし怪我でもしてたら助けてやんないとね~」と、その際に報酬をぶんどるつもりで。
「とは言っても、カカロ村にはまだ二日くらい滞在する予定だし、それからかな。リンゴもいっぱい採れたから帰ったら美味しく頂こう」
「貴様、ワシに隠れてコソコソ喰らうつもりであったな?」
「まっさかあ。君の分もちゃんとあるって。ほらほら、睨まないの」
捌いた巨大魚もいくらか切り身を持って宿で調理してもらうことにして、残りは情報量としてガントに残す。村に行けば、カレンもみすぼらしい服装のままでいることもないだろう。次の目的も決まり、旅の再開を楽しみにしつつ村への帰り支度をする。
「よし、じゃあ帰るか! おいしいごはんを食べてぐっすり寝るぞ!」




