扉
AIって、今、流行ってますよね。
流行りすたり、じゃないのかもしれないですが。
で、既に亡くなられた作家さんの作品データを取り込んで、AIに幻の新作を書かせるとかって……。
それ、どうなんでしょうね。
と、書きながら、星新一先生の作品データを取り込んだのに、ウイルスにやられて、バグが大発生しちゃった残念AIが書いた新作をイメージして作りました。
全世界の、星新一ファンと関係者の皆様、ごめんなさい。
俺は、交通事故にあった。コンビニから出たところで、アクセルとブレーキを踏み間違えた暴走車に轢かれたのだ。
そして、死んだ。……比較的、短い人生だった。
気が付くと、俺は、薄暗い部屋にいた。
どこだ、ここ?
「はぁ~い。いらっしゃいませ~。転生の間にようこそ~。」
能天気な声がして、ヒラヒラのフリフリな服を着た女が、突然、目の前に現れた。
「転生の間の女神様で~すっ! これから、あなたには、転生先を選んでいただきま~す!」
自分を女神様とか言っちゃうって、大丈夫か?
「転生の扉へ、案内しま~す。どっぞ~!」
薄暗い部屋の中に、このまま居続けるのも気分的に良くなかった俺は、胡散臭い女神様の後についていくことにした。
「こちらが、転生の扉の間になりま~す!」
案内された先にあったのは、壁一面に扉が並んでいる、へんてこな部屋だった。
しかも、扉は、安っぽい木目の合成板製。
「これ、何の悪ふざけ?」
「違いますよ。ただ、予算が足りないんです。もうちょっと何とかならないか、申請は出してるんですけどぉ~。」
「はぁ、で、どうすればいいのさ?」
俺は、あほらしくなって、投げやりに聞いた。
「お好きな扉を開けてくださればいいのです。それで、転生先が決まりま~す。」
いや、好きな扉って、全部、安っぽい合成板製の扉じゃん。
「何か、説明とか、ヒントとか無いわけ? この扉だけで選べって、ひどくない?」
俺は、あまりの不親切仕様に、ちょっと苛立った。
「はぁ、まぁ、皆さん、そう言われますね。」
「改善しないわけ?」
「バイト女神では、そんな権限がないんですよぉ。あ、早く選んでください。勤務時間内に業務を終わらせないと、お給料減らされちゃうんですぅ。ここ、ブラックなんです。」
「そんなの、そっちの都合じゃん。」
「わ、分かりました。ヒント出します。出しま~す!」
女神様は、よっぽど切羽詰まっているのか、意外と簡単に折れた。
「この扉の向こうには、自動車の無い世界がありま~す。交通事故に遭われた方が、選ばれる傾向にありま~す。」
それって、みんなに、普通にヒント出してるんじゃね~か。
「この扉の向こうには、冬が無い世界がありま~す。寒いのが苦手な方が、選ばれる傾向にありま~す。」
「この扉の向こうには、痛みの無い世界がありま~す。大病をされた方が、選ばれる傾向にありま~す。」
「この扉の向こうには、悪意の無い世界がありま~す。人間関係に疲れた方が、選ばれる傾向にありま~す。」
どれも、それぞれ、選択の余地がありそうだ。
「え~っと。まだ、続けますか? もう、本当に、勤務時間終了になっちゃうんですけどぉ~。」
バイト女神様は、涙目になっている。
「もう、とっておきを紹介します! この扉の向こうには、全てが完璧に整った世界がありま~す。食事も、住まいも、服も、好きなもの選びほ~だい! 病気にもなりませんし、働かなくてもいいんです!」
何だ。最後の最後に優良物件を出してきたか。俺は、そいつにすることに決めた。
「では、どうぞ。良き転生を!」
俺は、扉のノブを廻し、全てが完璧に整った世界へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はぁ、やっと行ってくれた。毎回毎回、こんなのばっか!」
バイト女神様は、ロッカールームで帰り支度中。
「んで、どの扉を選んだわけ?」
バイト仲間が、声をかける。
「夢の無い世界の扉。」
「あぁ、完璧すぎて、それ以上の進歩が無い世界ね。すぐ退屈になるのにね。」
“夢”や“幻”の字が入った人名を考えるのは、やっぱり、やめました(笑)。
いえ、1回は考えたんです。
……、幻夜雪之丞、とか。
C級SFの香り漂う大衆演劇役者? センス無い。無さ過ぎる。
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C級SF+異世界転生ものにしてみました。