第5話 飢餓
やはり何かがおかしい。
と言うか、納得がいかない。
なぜ俺が1時間も正座しながらスチュワーデスさんの説教を聞かなきゃならんのだ。
あの後俺が繰り出した「飛行機の便所の扉破壊キック」は、見事飛行機の便所の扉を破壊し、何故か全裸で便器に座っていた超絶美味ヒロシを一切傷付ける事無く背後の壁をも突き破った。
その結果、俺は超絶美味ヒロシを殺そうとした加害者となり、
全ての元凶であるはずの超絶美味ヒロシは
「奇跡の子」
として丁重に座席に戻されたわけだ。
それにしてもあの蹴りの威力。
自分自身を守るためのリミッターを完全に消し去ってしまったかの様なあの蹴りは、
明らかに人の限界を超えていた。
その証拠に正座しているはずの俺の右脚のつま先が、上を向いている。
てゆーか、明らかに折れてるよねコレ!
痛く無いから良いけども、右脚グニャグニャなのよ!
あ、説教終わる感じかな?
え?
何?
右脚がグニャグニャで気持ち悪いから近寄らないでくれ?
知るかボケ!
つーか気付いてるんなら少しは治療してくれても良いんじゃないかなぁ!
まぁいいや、痛く無いし。
えーと、俺の席は……あった。
横には超絶美味ヒロシも…って、
また爪切ってるぅぅぅぅぅ!!
いや、さっき切ってからまだ2時間半くらいしか経って無いよ?!
伸びてても0.01ミリくらいだよ!
で、当然切られた爪は….
そうだよね!
ツルツルに刺さってるよね!
それにしても超絶美味ヒロシの爪、ウマそうだな!
もう食いたくて食いたくて….
そうだ!
おいヒロシ、あれ見ろ!UFOだ!
スポスポスポ
パクパクパク
…うむ、やはり美味い。
究極のメニューとは正にこの事だ。
いやしかし前に食べた物とは少しだけ違う気が…
ヒロシの豊潤な香りの後に、ほのかに漂うこの香り…
まさか!
隠し味?!
しかし一体どうやって…
….そうか!
そうだったのか!!
この香りの正体…
それはこのツルツルの香りッ!!
無駄にも見えたツルツルに爪を突き立てるという行動ッ!
それは全て、この絶妙なる香りを付ける為ッ!
コレはもう、人の仕業では無いッ!
まさに神の所業ッ!
超絶美味ヒロシ、お前はもう人間では無いッ!
神だッ!
神になったのだッ!
そう、お前はヒロ神ッ!
略してヒロシなのだぁぁぁぁぁッ!
続く
この回を書いた理由:
ヒロシの名前が長過ぎて元に戻したかったから。