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才能のない私は転生して…何をしようか。  作者: 暁 シグ
本編(?)
5/29

4.ゆるい

「どうしよう…」

「と、とにかくうまい言い訳を考えて…!」

「だからどんな…!?」

「それを考えなよ…!」

「えぇ…無慈悲な…!」


ハナと私は、my mother を説得して旅に行かせてもらうための言い訳を考えていた。…今の発音、素晴らしくね?


「奉公です…とか?」

「ダメに決まってるでしょ!どこに奉公しに行くんだよ!」

「ですよねー…」


どう言ったら…。…物で釣るとか…。そんな柔な母親じゃないわ。それは、私が保証する。じゃあ…。


「…こっそり抜け出す…?」

「え…」


私たちは、目を合わせる。お互いの頬から汗がつたう。ごくりと唾を飲み込んだ。わざと、あわせて口を開き…



『ムリムリムリムリ』



頭を横に振る。できないできない。


「大人って、本当に怖いからね…」

「わかる…、転生前にすごい思い知った…」


ハナのその言葉に、顔をあげる。転生前に…?


「転生前、なにかあったの…?」

「あ、いや……そ、そういうのは、タブーでしょ?自殺したなら、サチだって分かるよね…?自殺するなんてそれなりの理由があること…」

「ご、ごめん…」


本当に、申し訳ない…。


「…私、それなりの理由ないわ…。すまぬ…。」

「そっち…!?」


今のツッコミは、三十点だな…。そう頭の中で思いながら


…心の隅で、嘘をついた罪悪感がうずいていた。


「それより、お母さんどう説得し___」

「何の説得ー?」


『うぉあっ!?』


二人同時に声をあげる。け、気配が感じられなかった…!その体型なのに…!

お母さんが扉から顔を覗かせて…いるつもりなのだろうか。上半身が出ているがこの際無視してあげよう。


「もう暗くなってきてるから、今日泊まって行きなーってことを伝えに来たんだけれど…お邪魔だった?」

「い、いえ…!そうさせてもらうとすごく助かります…!ありがとうございます。」


開いたままだった口をなんとか閉じる。この際、素直に言うしか方法はない…!私は、ハナとアイコンタクトを……とったつもりなのだが通じていないようなので諦めて普通に話す。


「…お母さん、いえお母様。」

「えーなになに?一大イベント?」


現世は、こういうお母さんでよかったとつくづく思っている。ただこういう人ほどただ者ではない。言葉をしっかり選ばなければ…!

お母さんが扉を開けて中に入ってくる。


「私、サチコは本日ここにいるハナさんと旅に出ることに決めました…!お母様、お許しください…!」

「…」


ハナがやれやれというポーズを小さくする。ひどいなー。昔見たドラマで、義母に結婚を申し込む婿のセリフを元にしてるのに…。


「…うーん……」


お母さんは、すごく悩んでいる。ですよねー。そんな簡単に許してもらえな___


「いいわよ。別に。」

「………」


…あっさりすぎやしないかい?母上?一人娘が旅にでるんだぜ…?少しは、止めてくれてもいいやない…?そう思って、ハナの方を見る。相手も、驚きを隠せないのかさっきからお母さんを五度見くらいしている。


「え…ほ、本当に…いいの…?」

「いいわよー。あ、でもアンちゃん連れて行ってね。サチコ以外の言うこと聞かないから」

「あ、う、うん…」


アンちゃんとは、アンドレゴンのことだ。いや、それはどうでもよくて…

なんで、そんな簡単に…。え、ここはボールにモンスター閉じ込められる世界かなんかくらいにゆるいの…?


「あ、あの…本当にそれでいいんですか…?そんな簡単に許して…」

 

やっと落ち着いたハナが聞く。


「うーん…、それは親が決めることではないから…かしら?あ、でも死ぬのは嫌だからね。しっかり帰ってきなさいよ~」

「……」


開いた口がふさがらない。前々からこの母親は、普通の大人とは違う感じがしていたけれど…子供のことを一人の”人“として見てくれていたんだ…。

ハナは、今度は目玉がこぼれ落ちそうなほど目を見開いている。そりゃ十一歳の娘を危険な旅へ…しかも、今日あったばかりの人と一緒になんて許してくれるのは……うちの親くらいだ。


「…うん、ありがとう。サチコ…気をつけていって参ります!」

「はいはい、じゃあ夕飯の準備してくるわね。」


…たぶん今日は、カレー。

夕飯は、ロールキャベツでした。

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