21.意見交換
「…なんというか…足が滑った感じ…というか……我慢できた話な気も…」
「あ、わかるー」
「…軽くね?」
ハナに突っ込まれた。いや、私も実際そう思うし…。
「うーん…。でもこれでよかったのかなぁ…なんて。
だって、大人たちが
社会っていうのは辛いんだよ…
とか
ブラック企業なんだ…
とか言ってるじゃん。
つまりは、そんな辛い思春期が終えたとしても辛いことは尽きなくて生きていくのは大変なんだよね…。
だったらいっそのこと私みたいなのは死んで社会から消えればいいと思うんだ。
漠然な不安は、思春期特有じゃない。大人が不安になることを呟くから。
ただ単純に笑い合っていたい。
どんなことでもいい。幸せと叫べることが続けばいい。
…そう願っても、それができないのはもう当たり前になってる。
それは、大人が社会を作り上げては怖がってるから。自分たちが作ったものは、自分たちが一番恐れてるものだから。
でも、大人がそれをしてしまうのは…そうしないともう作り上げたものから自分を守ることができなくなってしまうから。
…結局、大人だって子供だった。
明日、生きていくにはそれを耐えて……そして、少しの時間を大事なひとやものに費やす。
それが、人の幸せで。唯一の生きていく方法。
…でも、それが耐えられなくなる人は…その少しの時間すら、設けられなくなる。
もう、全部が全部、辛く思えてくるんだ。
そんなときに、死ぬことができるってすごいと思う。永遠なんて絶対ないけど、生きることが永遠に続いていたら誰だって終わりたくなる。
何だって、終わりがあるから安心できるんだと思う。
__という…げ、現世になって考えたこと…!屁理屈…!屁理屈だから…!」
ハナとトウマがぽかんとしているのが分かる。
やべー…話しすぎた…。
すると、
「…う、うーん…、一理あるとは思う…。
極端すぎて…そういうことは、人それぞれ考えが違うと思うけど…。
…でも、確かに大人より子供の方が大人びてるときあるよね。まあ、ここまで来たら大人と子供の違いが分からなくなるんだけど…。」
苦笑いしながらトウマが共感してくれた。…可愛い。__そして、なんだか心が少し軽くなった気がする。
「…私も、そういう考えはある。
生きている時間のほとんどは、無駄だと思う。でも、それでも、少しだけ…ほんの少しだけ…有益な時間はある気がする。」
ハナも共感してくれた。
全否定されるのは、キツいから助かった…。
すると、神様が唸って
「うぅ…。結局、君たちは…思春期の少年少女は…。どうして、そう死んでしまうんだい…?」
神様が分からない…という感じで聞いてきた。
私たちは、目を合わせる。
『そんなこと聞かれても分かんないっすよ。』
「えぇぇ!?何で!?」
何でって言われてもなぁ…。
ハナの方を見るとうんうんと頷いた。
「そうですよ。分からないものは、分からないんです。」
「じゃ、じゃあ僕は、どうすれば___」
「__分からないままでいいんじゃないですか?」
さすがに、めんどくさくなってきた。神様なんだから、分かってほしいものだ。
…本当に女子中学生を子供に持った40代半ばのおっさんみたいなことを拗らせて…。
「はぁ…。
神様…。分からなくていいんです…。これに関しては、誰も理解できないんです。
私たちのような人__自殺を選んでしまった人の気持ちなんて理解したと思ってもそれは上澄みだけすくったような理解度です。だから分からないままでいてください。」
もう…正直、疲れた。
分かろうとして、どうせ分かんない。それで分かった振りをされる。
そんなことをされるくらいなら、真正面から”分からない“って言われた方がいい…。
あぁ…でも…
「神様…。」
「え?」
「…分からなくていいから、理解をしようとする努力はし続けてください。
精一杯、向き合っててください。」
なんだか、先生にこれを言ってる気分だ。…まあ、確かに私も先生にこんなことを言いたかった。子供たちのことを本当に考えて向き合ってくれる人なんて一握りだから。
…きっと、こんな神様だからすらすら言えるんだろうなぁ…。こんな神様だからね…。
「…つまり、僕に終わりのない答えをずっと探し続けろってこと…?」
「そうです。」
神様の唸っている声が聞こえる。
そりゃそうだ。私だって、円周率を紙で解いていけ!なんて言われたら全力で拒否するわ。
「…分かった。頑張ってみる。神様には、永遠が通じるから安心できないけど…それでもやる。」
「……」
…随分、真面目な青年だこと…。
おばさん、応援したくなっちゃったわ………っていうのは、置いといて。
マジかよ…。こいつ、やべぇな…。いや、私が言ったことなんだけど…。
「え、神様…そんなやつの言うこときくんですか…?」
「そんなやつって…。ひどくね…?」
「うん…」
ハナが私を指差しながら、引いた目で見てくる。なぜだ。何でだ。共感してくれたんじゃないのか。
すると、神様が
「…僕なりに考えたけど…。
その子の考えは割と好きだから信じてみてもいいかなって…。」
そう、微笑んだ気がした。
…紙だから分かんないけど…。
「じゃあ、神様…。最初の僕たちを生き返らせるっていう話はなしですよね?」
「うん、そうしようと思う。君たちは、全員ここに残っていたいんでしょ?」
トウマが、まだ転生前の世界では死んでないってなってる話のことを聞いた。そりゃもちろん……
『はい』
「…じゃあ、僕は上司にこの話をしてくるよ。君たちは、この世界で頑張って生きてね!じゃ!」
そう言って、紙はほとんど燃えかすと化していた焚き火に入ってジリジリと燃えていった。
いつの間に、焚き火あったんだろ………。
読んでいただきありがとうございます。
次回で終わります。
謎の屁理屈な物語もついに終わります。
番外編みたいなのは、書こうかななど思っております。詳しいことは、次回書きます!




