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才能のない私は転生して…何をしようか。  作者: 暁 シグ
本編(?)
21/29

20.話し合い〈サチコ〉

「死にたいなんて思ってたけど…。実際は、思ってるだけだった。


友達は、少なかったけど、その友達1人1人が私にとって大切だった。

だから、楽しかったし面白かった。

何度も何度も馬鹿げたこと言って、笑い合って…。

友達といる時間は、今思っても人生で最高な一時だった。きっと、あれが私にとっての青春。

だけど、そういう時間こそ、すぐ終わっちゃうでしょ…?


私は、クラスでは本当に隅っこにいたし…。人に思ってることを伝えたくても、うまく伝えられなくて…。

本当は、臆病で自信がないだけでクラスで面白いことして遊ぶのは好きだった。


でも中二の真ん中で、通知表をもらったときに…一年の最後でもらった通知表より落ちてた。

親にも、言われた。遊んでるからダメなんて言われて…。


私、絵描くこと好きなんだ。

うまくないし、人に見せられるものじゃないんだけど…。それでも、友達と一緒にたくさん描いて、話して、笑い合うのはすごい好きだった。


だから…それを親に遊びなんて言われたのが悔しかった。

大好きな時間を、大好きなものを、そうやって貶された気がした。


そこから、


私は、色々なことに反抗する気持ちになった。


親がスマホを見てるときや絵を描いてるときに”勉強しなよ“って言われたときは、

何で言うこと聞かないといけないの

って思って…。


先生が生徒を叱ってるときとかも…

あなたたちにそんなことを言われる筋合いはない

って思ったり…。


まあ、言っちゃえばただの反抗期と思春期みたいなものなんだけどね…。


だから、”次のテスト頑張りなよ“って親に言われたときはそのテスト期間中やる気が起きなかった。

だからテストの点数は、落ちた。

…一年の頃はそこそこ点数良かったんだけど…。

そのときはすごく落ちてて親にはガッカリされた。

何で取れないの?って。

”お前のせいだよ“って思ったけど、やっぱり私は臆病だから黙ってた。


塾にだって通い始めたけど、行きたくもなかった。行ったとしても、何も分かることなんてなかった。

…私が無能だってことを、改めて思い知らされたことを除いて。


親には、何度も叱られて…嫌で嫌でたまらなかった。同じ事を何度も何度も……。


分かってる…


分かってる……


分かってるんだよ…!自分が一番分かってるんだよ…!!そうやって人のこと否定して楽しいの…!?


でも…私もついに我慢できなくなって”そんなに期待しないでよ…!!“って言ったの。

だって、叱るってことはそこを直してほしいってことだから。…それは、つまり期待(プレッシャー)をかけてるってことだから。


”…分かった“って親も言ってくれたから私も安心してたんだけど…。


またテストがダメだった。また怒られて否定されるんだって思ってたら

”次は、頑張ろう。だって、サチコには才能があるし…。一年の頃は、すごくできてたじゃない。だから、次はきっとできるよ“

…そう言われた。

今度は、褒めれば伸びる作戦でもしてるの?なんて思う前に泣きたくなった。

次は、頑張ろう。頑張れ。できる。頑張れるよ。

__頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ………。


…うるさい…。うるさい…。うるさい…!うるさい!


軽々しく、そんな言葉使うなよ。頑張ってるんだよ。精一杯やってるんだ。黙れ。


何が私のためなの?


本当に私のためを考えるなら、そんなうるさいこと言わないでよ。

…私のためっていう前に私のこと分かってよ…。

私ができたなんて本気で思ってるの?どこでそんな思い違いをしたの?


そんなことを思った。言えもしないのにそんなことばっか積もっていった。…大人って本当に仕方のないほど理不尽な生き物だよ。子供のためって言えばなにしても許されると思ってるのかな…


友達との時間が唯一の救いだった。友達と笑い合って話せる時間…。楽しかった。面白かった。


でも、家に帰ったら必ず何かを言われる。何度も同じ事を。

もう私の耳は、それを聞きすぎて何を言われたのかなんて覚えてないほどに。


私が一番、


考えてたことは




ただただ…楽になりたい。




それだけ。



三年生になって、将来のことをことごとく言われるようになった。


私は、どこの高校に行くのか決めてなかった。


将来は、慎重に決めましょう。


そんなこと言われたら、今の夢が馬鹿らしくなって諦める選択肢しかできないじゃないか。

才能がないから、夢に真っ直ぐ突き進められない。失敗したらそれきりだから。どうにもならない。

そんなことは、言われなくても分かってる。


高校は、なんとなく親に勧められたものを志望校にした。だから、かな…。


勉強にまったくやる気が出なかった。


一番怖かったのは、まわりの人たちがどんどん成長して高校に行こうと必死になってて、私はそれに置いてかれたこと……、違う。

追いつけなかったこと。


友達もその1人で、”美術系の高校に行くんだ“って嬉しそうに言ってた。

”いいな…“って単純に思った。

でも、これ以上親をガッカリさせるわけにもいかないから…。


_私には、選択肢があったのに自分でなくした。


将来の話がどんどん出て来て、耳を塞ぎたくなった。だって、その話は私の中に溜まって苦しめて外に出ていかないから。


将来なんて考えたくなかった。考えられないから。

今の一瞬を大切にしたいなんて大層なことは言わないけど…

今しかできないこと、

今しか感じられないこと、


__今だけのことをしたかった。


でもみんなには追い付けないし、

親には期待をかけられてる。

…どうしようもなかった。


そんなとき親は、

”大丈夫。できるよ。私たちも頑張るから。“

そんなことを言った。


もういい加減にしてほしかった。

何が大丈夫なの?何を根拠にできるなんて言ってるの?

頑張るからって、何を頑張るの?


不満だけが募っていった。

大人は、何の意味もない…分かってる振りをする。自分が分かってると思い込んで。

期待をかけられて押し潰されそうだった…。


自分がおかしいんだってことぐらい分かってた。でも、明日はどうにかなるなんて自分でも思ってて…。明日にすがって、結局明日も明日をすかるだけ。


私だって、社会に順応しなければ生きていけないことくらい分かってた。


そのための努力は、してたつもりなのに…”頑張れ“って言葉に掻き消されていった。


誰かに分かって欲しかった。誰かからの共感と理解が欲しかった。でもそう願って…分かったのは


__誰も分からないってこと。


私以外、これは分からないんだって気づいた。


もう、飽きられて諦められて、そっちの方が楽かもしれない。いや、きっと楽なんだ。

そう思った。


ただ楽になりたかった。でもそれは、一番やってはいけないことで自分の無能さが一番分かるものだった。



そんなとき、学校が閉まるギリギリまでいたことがあった。誰もいない。私1人の空間。…たまたまだったのかな。屋上が空いてた。屋上なんて滅多に入れない。

興味本位で、入ってみた。

綺麗だなって思った。街の灯りがいくつも光ってて…。そのときは、ちょうど暗くなった後だったからより綺麗に見えた。


このひとつひとつが人で、精一杯生きてるんだから私も生きなくちゃ…。


そんなことは、思えなかった。ただただ綺麗だなって。

下を見てた。

地面がずっと遠くにあった。きっとここから飛び降りたら死ぬんだろうな…。ふと、そう思った。

無意識だった。


死んだらお母さん…後悔するかな…。それ、いいな…。

あ、でも__友達は……


一瞬のうちに体が宙に浮いてた。

誰かに押されたのかと思ったけど、自分で自分を投げ出したようだった。

上が見えた。

満点の星空があった。街の灯りなんかよりすごく綺麗に、ひとつひとつが精一杯に輝いてて…。


あぁ…私もあんな風に誰にも感化されずに、1人だけで輝いて誰かに褒められたかった。

そんな風に思ったのが最後だった。


…自分を変えるってなんだろうね。

あのときの私は、自分を変えられることはないって思ってた。

自分は、自分なのにどこを変えろっていうんだろう。どうせ行き着く先は同じなのに…。


心残りは、友達に何も言わずに死んだこと。それだけ。」



自分に残っていた息を吐き出す。

私の状況なんて誰にでもあり得ることだからそんなおもしろいことでも大それたことでもない。

ただ大人と将来への不満を語っただけ。

ハナとトウマは、悩んでいる風だ。



…ちょっとすっきりした。




_すぅ

もう一回、息を吸い込んだ。

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