2.ショタがよかった…
アンドレゴンを連れて、爽やかな風が吹く野原を歩いていた。この野原に沿って歩くと私の家につく。
「あ~、家帰ってゲームしたいー。ただゲームないー」
そんなことをほざきながら歩いていると
ドサッ
「うわっ…!?な、なに…!?」
茂みの奥から何か落ちた(?)音がした。アンドレゴンに身を寄せながら、茂みの奥に目を凝らす。すると、白い手が茂みの中から覗いていた。
「…!」
もしや、これは…。助けたら恩返しとかもらえるやつ…!?白いから女…いやしかし…最近は、ショタもあんな感じの子が…。とにかく、この人は倒れている。これを助けて、何か称賛とか。まあ、それは助けて見れば分かるか。そう思い恐る恐る近づく。
「あ、でも待って…」
ピタッとその場で動きを止める。なんか、助けた亀に連れられて…みたいな浦島太郎的な展開を想像してたけれど…。死んでるって可能性もあるよね。ここは、声をかけてみるのが妥協………いいや、普通に起こそ。
「大丈夫ですかー?生きてますー?」
「う、うぅ…」
茂みに近づきながら声をかけると呻き声が聞こえた。女の人だ…。ちょっと、ショタに期待してた私を返してほしい…。そんな理不尽な願いを胸に茂みを掻き分けると
「…ほっといてもいいですか。」
「…な、なに…言って…」
あちこちに傷がついた女性が倒れていた。どうしよ、これと言って萌える顔つきでもない。言わせてもらうと、私よりは良い顔つきの一般人だ。でも…
「私、強気な感じの人好みじゃないんですよね」
「は……?」
「本当に大丈夫ー?ごめんねー、こんなところで。ゆっくりしていっていいからねー。」
「あ、ありがとうございます…」
そう言ってお母さんは、出ていく。相変わらずおおらかな人だ。体型も。
そして、さっきアンドレゴンに乗せて私の家まで運んできてあげた女性に向き直る。
「さっきは、ありがとう。私は、ハナ。…倒れてるときに何か言われたけれど、無視しておくね。」
「ぁ、はい…」
ムリムリ、コミュ障で人見知りな私に何を話しかけているんだい。さっきは、倒れてるからいいかなって気持ちで言ったことだから…。怒ったら鋭い視線がとんできそうな目で、睨まれ…見られる。
「えっと…名前は?」
「ぅ…えー、と……サチコです…」
その人…えーと、ハナさん?…は、少し眉をしかめた。何か変なことを言ってしまったか…?本当に、知らない人と話すの真面目に無理。しばし、沈黙が流れる。耐えられん。母君のところへ逃げよう。…ここ私の部屋なのに…。
「わた、私は…これで__」
「あ、待って待って。ひとつ聞きたいことがあるんだけれど…いい?」
ハナさんは、すごく迷ってる風に聞く。…な、何を…。ゆっくり深呼吸をして口を開いた。
「…真実はいつも…?」
「…………ひとつ…?」
「…お魚くわえた…?」
「……サザ…あ、違う…どらねこ…」
「…諦めたらそこで…?」
「…試合終了だ」
私たちは、目を輝かせる。お?お?これはもしや……!
『転生者…!?』
うわぁぁあ!仲間がいるだけでこんなにも嬉しいのか!
「え、え…だよね!?日本から来てるよね!?」
「うんうん!よかったー!どう聞こうか、迷ってて…!サチコってもしかしたらなんて思ってたの!そんな貧相な名前ないでしょ?ここに。」
…おい、ぶっ飛ばすぞ。私の転生前のママが一生懸命つけた名だぞ。
まあ?この清らかな心を持っているサチコさんは?そんなことでは怒りませんけれど?
「と、ところで…ハナさんは、なんで倒れてたの?」
「私、旅しててその途中でモンスターに襲われてなんとか逃げ出したっていう…よくある話。あと呼び捨てでいいよ」
きっと転生前は、リア充だったんだろう。だって急に呼び捨てで大丈夫だなんて言うやつはだいたい友達たくさんいるやん。…でもさっきの情報は、いいこと聞いた。旅してるって言った。それも転生者で。これは、私この人と旅をするのでは…!?と思っていると
「…転生する前、神様とかにあった…?」
「か、神様…!?」
こいつ…さては、勇者…!?転生する前に、だいたい女神とかそこら辺のやつらにあう話はごろにある。こんなことを聞いてくるなんて…ついに私にも物語の重要人物とやらに…!
「な、ないよ…ハナは、あるの?」
「そうなんだ…。実は、私あってね…。」
キターーーー!!
「なんか、神様が地上に落としたポエムを拾ってきてほしいだとかなんとか…」
「は…?」
ポ、ポエム…?手汗を服で拭く。ちょ、ちょっと待って…嫌な予感が…。
「…ただただ恥ずかしいポエム落ちちゃったから探して燃やして、そのあとは自由に生きて良いからーというようなノリで言われて…。それの代償として魔法が使えるようになったんだけれど…」
「…」
確かにね、期待した私が悪いんですよ。もうこれから先どんなフラグが立とうとも信じない。…というか、神様軽いな。会ってみたい。たぶん話せないけど。
それでも同じ転生者がいるというのは、心強いというか…安心する。
「そうなんだ…、でも魔法が使えるなんていいな。そういえば、転生前って社会人とかで事故で死んだの?」
「あー、えっと……」
そういう物語をよく聞くからそうなのかなと思って聞いてみた。今の見た目は、二十代くらいだろうか。転生前もそれくらいの、キャリアウーマンとやらだったんだろうな。キャリアってどういう意味か知らないけれど…。
「実は………中学一年生…」
「………ん?」
…後輩か。