闇の中で 1
俺はよくわからない場所にいる。
そこは、見渡す限りが闇で光の一筋もない。いや、もしかしたら俺は見渡せていないのかもしれない。そう思うほどにそこは暗闇だった。
そんな中俺は沈んでいく。
この深い闇の中にいつまでもいつまでも
この深い闇の中をどこまでもどこまでも
沈んでいく..............
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「..........様.....魔王様!」
「ハッ.......あぁ、アルムスか。どうした、何をそんなにも焦っている?」
俺はいつもは冷静で冷たい奴と言われるような忠臣であるアルムスの珍しい姿を見て問いかけた。
そう、あのアルムスが珍しく慌てているのだ。
「一大事です!勇者どもを引き連れた人間の軍団がこの魔王城に向かってきております!!」
「は?もう一度言ってくれ」
俺は言われたことを理解できず、いや、信じたくないため聞き直した
「ですから、人間の軍団がこちらに向かってきております!!」
「何だと!?まだ同盟を結んだばかりではないか!」
そう、最近に俺は人間の国と同盟を結んだばかりでそんなことは普通ありえない。
怪しく思い、スキル千里眼を使うと見たくなかった景色がそこにはあった。それは人間達が武器を装備してこちらに行軍してきているところであった。
「何故だ.......こちらはもう攻撃しないと契約したではないか!なのに、何故!!」
「魔王様もう時間がありません。ここは悔しいですが一旦退くべきではないかと」
あぁ、その通りだ。だが、まだ認めたくない。せっかく世界が平和になってきたというのに、何故また争わなくてはならないんだ。
「いい。お前らは先に逃げておけ。俺はここで一度人間達と話し合ってみる」
「ダメです!そのようなことをすれば、人間共に一斉攻撃されてしまいます。ここは退くべきなのでは!?」
そう大声で俺に訴えてくる忠臣に俺の考えを伝えた
「すまないが、その選択はできない。俺は可能性がある限り話し合う。今更殺し合うなどそれほど愚かなことはない」
「しかし!......いえ、では私もここに残りましょう!」
そう俺に言ってくれるアルムスに感謝をしながらも彼に言った。
「すまないが、ここに残るのは俺のみだ。転移」
と、そう言って俺はアルムスを別の場所に転移させた。
その時見せた彼の祈るような顔を俺は一生忘れないだろう。
「さて、ここに残っている部下や使用人も全て転移させるとするか」
そう呟いた時だった
ガタンッ
「ッ!?誰だ!」
そいつが出てきたのは。
「対象を発見。行動を開始します。」
それは青く長い髪をした俺と同じ歳ぐらいの美人だった。その美しさは誰にも負けないであろう。
しかし、そんなことを考えている時ではない!
「お前は誰だ!?」
「私ですか?私は15268実験体25647号戦闘機体です。」
なるほど確かにその生気を感じさせない声色なのは生物ではなかったからであるらしい。
そんなことを考えている間に相手は既に機会の翼を展開して俺に照準を合わせているようだった。....ん?照準?
俺を強烈な寒気が襲った。そして俺は本能に従い、その場を瞬時に飛び退いた。その瞬間俺が立っていた場所には穴が空いていた。とてつもなく深い穴が。
「くそ!」
「作戦A、失敗。作戦Bに変更します。」
そう呟いている間も彼女は俺に理解不能の攻撃を浴びせ続けていた。
「やばい!このままじゃジリ貧だ」
ここは一旦退くべきだろう。アルムスには悪いが早速逃げさせてもらおう。
『転移』
そうして俺はその場から逃げた。しかし何故か転移は想像していた場所ではなく城の近くであった。
「何をしたんだあいつは!」
「対象アルドを追跡します」
「くっ」
その声が聞こえた瞬間俺はその場から駆け出した。
仮にも俺は魔王だ。そこらへんの奴とは次元がが違う力を持っている。なのに何故こいつは
「俺にくっつけているんだ!」
俺は悲鳴に近い声を叫びつつも、逃げ続けた。
しかしそれも無駄であったようだ。
「対象を捕捉。」
そんな声が聞こえてきたのだから。
本当にもう戦うしかないのか?