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◆北の神様(その5)


◆北の神様(その5)


ミキが北の神様と大きなテーブルで豪華な食事を取り始めた頃、大神はそろそろミキを許してやろうとミキを吊るした崖にやって来ていた。

「やっ、あやつめっ! 逃げ追ったか? むぅー、それにしてもあの縄と綱から逃れるとは・・もしや、東の神が加担しおったか? おのれっ、余計な事を!」


ぞわっ

「い、いかん! 大神に気付かれたか?」

東の神様は、すぐさま身に迫る危険を察知すると北の森に飛んだ。

        ★

その頃、北の神殿では記憶を無くしたミキが、そんな事は関係が無いとばかり、ギャル○根のように、料理を片っ端から平らげていた。

料理はどれもすばらしい味だった。 できればこれらのレシピを入手したい。

北の神様もミキの食べっぷりを嬉しそうに見ている。

何しろ自分以外の者と食事を共にするのは数千年ぶりなのだ。

「死を司る神」として、みんなが恐れ、北の神殿には誰も寄り付かない。

北の神は孤独であったのだ。


ゆえに、たまに訪れる者があるとその者を帰したくないがために、いろいろと裏で暗躍する。

あまりにシツコイとその者達との間でトラブルが発生し、結局・・・

「よければ、これも食べていいわよ」

北の神は、自分の料理もミキに差し出す。

北の女神は美しさでは天界一であろう。

こんな美しい女神様なのに、ずっとこの神殿に独りぼっちで暮らしているのだ。

        ★

その頃、東の神は北の森でミキを探し始めていた。

大神の逆鱗に触れたかも知れない。 だとしたら見つかったら大変な事になる。

それは自分も同じなのだが、どう考えても怒りの矛先はミキであろう。

あれはあれでムカつく女ではあるが、セレーナーの母親であり、一応自分の妻でもある。

何とか助けてやりたいと東の神は思っていた。


ヒュンッ

どわっ

突然、東の神の鼻先を大カマキリの鎌が音を立ててかすめる

大カマキリはミキを捕まえ損なっているため、今度はどうしても餌にありつくつもりらしい。

大カマキリの複眼がギラリと光った。

        ★

ふぅ~

「もうお腹いっぱいだぁー 幸せぇーー♪」

ミキは膨れたお腹を擦りながら幸せ宣言をする。

それとシンクロしてミキの体から金色の光りが放たれる。


その光りが北の神の体を包むと。

「あっ」

北の神は思わず小さな声をあげる。

この感じは、いったい何だろう。

それは幸福感。 実は現代人もこの気持ちを忘れているのだ。

本当は小さなことでも幸せだ思うこと。 これを忘れてはならない。


朝、普通に布団の中で目覚める事。 ささやかではあるが食事が出来る事。

安物かも知れないけど、寒くない程度に服が着れること。

北の神は自分が忘れていた大切なことを、もう少しで思い出せそうになっていた。

        ★

大神は東の神殿に立ち寄り、すぐさま東の神に問いただすつもりであったが、神殿は既に藻抜けの殻であった。

大神の目は怒りのため、真っ赤になり、同時に天界全体が細かく震え始める。

「夫婦そろってわしに刃向かうとは! やつらは絶対にゆるさん!!」

        ★

ズゥゥン

大きな地響きと共に、大カマキリの鎌が1本根本から折れて地面に転がった。

大カマキリは、羽をブワッと広げると残ったもう一本の鎌で東の神を威嚇しながら大空高く飛び去った。

東の神の圧勝であった。 所詮、大カマキリ如きが神に敵うわけが無いのだ。

「やれやれ、確かあの大カマキリは北の神のしもべだったな・・」

東の神は、ミキが引き起こした何千年ぶりかの厄介毎にどっぷりと巻き込まれつつあった。


ビュン ベチャッ

ほっとしたのも束の間、東の神様の体にヌルヌルした赤い舌が巻きついた。

と、次の瞬間、もの凄い勢いで東の神は体ごとオオトカゲの口の中に吸い込まれて行った。

        ★

お腹がいっぱいになったミキは幸福の光りを放ち続けていた。

北の神は、徐々に忘れていた大切な事が鮮明になって来たように感じている。

静かに目を瞑る。 もう少し・・・あと少し・・・


ビリビリビリッ

ドォーーン

突然辺りを引き裂くような、大音響と大きな地響きと共に大神が北の神殿の庭に降り立った。


次回、「北の神様(その6)」へ続く


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