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◆北の神様(その2)


◆北の神様(その2)


「おやっ? 珍しい。 何千年ぶりに新しいお客さんが来たようだ。 しかも、とっても、お、い、し、そ、う♪」

なにやら、ミキに早くも試練が続く予感がしてくる。


北の神様が見ている、鏡にはミキの姿が映っている。

ミキは、例のイベントが中止になって家に帰って来たままの格好なので、ミニのワンピ姿だった。

巨大な鳥やカマキリなどに襲われているが、ミキは神様なので服が汚れたり、破れたりはしないし、傷なども直ぐに元通りになる。

従って、鏡に映っているミキは、おいしそう?に見えるのだ。

後であんな思いをするのなら、いっそ泥だらけの薄汚い格好の方が良かったかも知れない。

北の神は、鏡を見ながらソワソワし始める。

「さて、いったいどうやって、ココに連れて来ようか? カマキリやトカゲは頭が悪いし。 そうだ、あの子達にやらせるか!」

         ★

ミキは森の中を歩きながら、何か食料になるものを探していた。

スーパー○リオに出てきそうな怪しげな巨大キノコは危険な感じなので当然パスした。

甘い匂いに誘われて危うく、ハエ取り草(食虫植物)のようなものに逆に食べられそうになったりもしたが、食べられそうなものは一向に見つけられない。

従ってミキはだんだん無口になり、元気も無くなって来ていた。


ガサ、ガサッ

ハッ?

前方の草むらで何かが動いた。

ミキは反射的に身構える。

バッ

それは勢い良く飛び出してきた。

「ケ、ケンタウロス? ・・・って女だっけ?」

飛び出して来たのは、上半身が人間の女性、下半身が鹿のような生き物だった。


その生き物はミキの方を見てニッコリ笑うと、手に抱え持っているバスケットにぎっしり詰まった美味しそうなご馳走をミキに見せると、向きを替えゆっくりと歩き出した。

ごくっ

ミキは思わず生唾を飲み込むと、その生き物の後を追ってすぐに歩き始める。

「ねぇ、ちょっと。 待ってよ~!」


その生き物はときどき立ち止まり、振り返ってミキが後をついて来ているかを確かめながら、どこかの目的地に向かって歩いているようだった。

ご馳走を食べさせてもらえないミキは、匂いの後をただフラフラとついて行くしかなかった。

しばらく歩いていると、小さなキノコが無数に生えている道になった。

ケンタウロスに似た生き物は、蹄なのに器用にキノコをけながら歩いていく。

ミキはといえば、そんな事はお構いなしで、いちいちキノコを除けたりはしない。


本音を言えば、人の足では除けられるほどのスペースが無いくらい、たくさん生えている。

ミキは気が付かなかったが、キノコを踏むたびにキノコの胞子が勢いよく、ビュッと辺りに飛び散っていたのだ。


ふふ、そろそろ効き目がでてくるころかな。 ちょうどココまで来た頃には・・・」

北の神は、鏡に映ったミキを見ながら嬉しそうに笑った。

そう、このキノコの胞子を吸うと睡眠薬+自白剤と同じ効果があるのだ。

そしてミキは自分でキノコを踏んで大量の胞子を吸い込んでいることに気が付かない。


ファ~

「なんだか眠くなってきちゃったよ。 腹が減っては戦が出来ないっていうか、腹が減っては歩いてられない・・・」

ドタッ

ついにミキは枯れ草が積もった森の中で、深い眠りに落ちてしまった。

ケンタウロスに似た生き物は、ミキが眠ったのを確認すると引き返してきて起用に自分の背中にミキを乗せ、また歩き始めた。

「あぁっ! それは、あたしのハンバーグだよ!」

ミキは背中の上で、大きな声で寝言を言っている。

やがて森が開けると草原が広がり、遠くに北の神殿が見えて来た。


次回、「北の神様(その3)」へ続く

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