◆南の神様(その1)
◆南の神様(その1)
地獄から人間界に戻って来たミキではあったが、精神的に可なり追い込まれた状況であった。
何しろ、地獄で酷い目にあったのに、更に50万人分の魂を復活させなければならない。
しかも3日で・・・
ミキはだいぶ悩んだが万策尽き果て結局、東の神様に相談する事にした。
そうこうしている間にも時間はどんどん過ぎて行く。
でやっ!
瞬間移動に掛け声は必要ないのだが、気合を入れないと本当に心が折れてしまいそうだった。
パッ
『あぁ・・ここ(天国)は、いい所だなぁ・・・なんだか死にたくなってきちゃったよ』
甘い香りのそよ風を全身に受けると心は癒されるのだが、現実は変わらない。
『そうだった。 早く用件をすまさなくっちゃ』
ミキは東の神殿へと急ぎ移動する。
東の神殿の自分の部屋で、イケメン神様は自分の仕事を黙々とこなしていたが、ミキの姿を見ると。
「君がここに来た用件は分かっている。 この書類を持って直ぐに南の神の所に行きなさい」
事情を話すこと無くミキは、いきなり薄っぺらい書類を渡される。
「あのっ 南の神様って・・・確か妹さんでしたよね」
ミキは書類を受け取りながら、前に南の神は自分の妹だと言っていたのを思い出した。
「あぁ、あいつも少し変わり者だからな。 一人で行っても話しが拗れるから書類を作っておいたんだ」
「やっぱり変わり者なんですね・・」
ミキは、北の神の事を思い出して憂鬱になる。
「あのぉ・・妹さんって、どんなところが変わっているんでしょうかね?」
ミキは事前に出来るだけ情報を仕入れておきたかった。
何せローズ風呂は、物凄いトラウマになっている。
あれほど好きだった薔薇の花はもう見るのも嫌になってしまったのだから。
「変わったところかぁ・・ いっぱいあって説明できないなぁ・・」
東の神様は遠い目をして、誰にとは無く呟くように言った。
『い・・いっぱいですか・・』
はぁ~
思わず溜息が漏れる。
そうこうしている間にも時間はどんどん過ぎて行くので、ミキは南の神殿に瞬間移動する。
パッ
『こ、ここは・・確かに変わってるよぉ・・』
南の神殿は正面から見ると浦安にあるアミューズメントパークの中の有名な子供向けアトラクションの外観に良く似ていた。
と言うかパステルカラーのその建物は、まんまコピーのようであった。
「実際ここは誰もこれないけど、向こうなら東○ディ○○ー○ンドに訴えられてるゾ!」
ミキはぼそっと呟く。
『で、当然あそこの入口ゲートから入るんだろうねぇ』
ミキも何回か入ったアトラクションのツヅラ折りになった入口ゲートをジグザグに進む。
むろんミキの他には誰もいないので、直線で駆け抜けたいところである。
傍から見たら間抜けな光景に見えるだろう。
やがて水路の中を流れに乗って一艘のボートが目の前までやって来て停まった。
『これに乗れってことだよね、やっぱり』
神殿(館内と呼んだ方が良いのかも)の中には、例のBGMも流れている。
『神様なのにイイのかよっ!!』
ミキは独り突っ込みをしている。
『ふふっ 来た来た。 お義姉さまって、ほんと面白そう♪』
ボートに乗っているうちにすっかり東○ディ○○ー○ンドに遊びに来たような気持ちになっているミキをモニタで見ながら、南の神は独り微笑むのであった。
次回、「南の神様(その2)」へ続く




