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◆地獄良い所(とこ)一度はおいで


◆地獄良いとこ一度はおいで


「じ、地獄ーーーー?  嫌ーーーーっ!!」

ミキはキャサリンに腕を固められたまま、真っ暗な穴の中を凄い勢いで飛んでいた。

まさしく地獄へ向けて真っ逆さまに落ちて行くようである。


『あっ・・ ち、ちびったかも・・』

ミキは久しぶりに、ちっとちびってしまった。

今回は、地獄に落ちるんだから仕方が無い。 誰だってちびるだろう・・・


それでも、あまりに長い時間、風を切って落ち続けているので、パンツは直ぐに乾いてしまう。

『あ゛ーーー もうっ! 遊園地のお化け屋敷や恐怖アトラクションに行ったと思えば、怖くないや!』

ミキは開き直る。 先の事など気にしても仕方がない。


それに大神の巨大ドラゴンの怒れる姿より恐ろしいものも、そう沢山は無いだろう。

後は野となれ山となれ。 ケセラセラである。

やがて遠くの闇の中にトンネルの出口のような小さな明かりが見えて来た。


「WelCome To Hell」

ミキの頭の中にそんなフレーズが一瞬よぎる。

「ねぇ、キャサリン。 ところでいったい、あたしに何の用なの?」

前方に見える出口らしき明かりも、だいぶ近づいてきている。

この辺で、地獄ツアーの目的もハッキリさせておいた方がよいだろう。


「端的に言えば、大王様に用事があるからお連れするよう仰せつかったという事アルネ」

「ふ~ん。 で、ひとつだけ聞いていい?」

「ナニアル?」

「なんでセーラー服を着てるの? どうして中国人風にしゃべるの? で金髪フランス人っぽい容姿なのに、なんで名前がキャサリンなの? どうして最初に行き先が天国って言ったの?」


「それ、質問ヒトツじゃないアルネ!」

「あっ、そっか。 でも・・まっ、いいじゃないの!」

「それはどうしてかというとアルネ。 時間がないので、あっちの世界から適当にコピーしたカラアルヨ! 天国言ったのは、地獄について来て欲しい言ったら黙って来たアルカ?」

「コピー・・あっ、そうか」

ミキもルナと109に出かけた時、陽子の姿と洋服を適当にコピーしたではないか。

なるほど・・あれと同じってことか。


それに、この娘は嘘をついても消滅しないんだ。

そうこうしているうちに、前方の明かりは眩さを増大していく。

出口はもう直ぐそこだ!


バッシュッ

そんな音が聞こえそうな勢いで、薄明るい空間に放り出される。

「うぇーー!!」

何と目の前に広がっているのは子供の頃に何かの絵で見た、まさしく地獄の景色であった。

針の山、血の池、うごめく亡者達・・・


これはとんでもない所に連れて来られてしまったとミキは心の中で思った。

天国は、そこに降り立った途端に幸せな気持ちに満ち溢れたのに、ここは早く家に帰りたいとしか思えない場所である。

ミキはキャサリンと地獄の上空を飛びながら、予想以上に生々しい地獄の有様を目の当たりにして大王様に会う勇気などは微塵のかけらも失せてしまった。


「こっちアルネ」

キャサリンは前方に見えてきた大きな三つの険しい山のうち一番右側の山へ向け進路を変える。

「あの~ 今日は午後から大事な用があったので、もう一度改めて伺うこと何かできませんかね?」

ミキは無駄なこととは思ったが、取りあえず頭に浮かんだ回避策を言ってみる。

「それはできないアルネ」

「やっぱりダメですか・・」

そうこうしているうちに、先が針のように尖った山がみるみる近づいて来る。

キャサリンは高度とスピードを徐々に落としていく。

ミキも仕方なくキャサリンの後に続き、高度を落とした。


キラッ

すると、山の中腹あたりで何かが光った。

目を凝らして見ると、それは建物のようである。

形は龍宮城というか首里城というか・・ まぁ、ミキにはそんな形に見えた。

『あそこに大王様がいるのか・・』

「そうアルネ。 もうすぐ会えるアルヨ」

キャサリンはミキを振り返って微笑んだ。

ズキューン

グハッ

『この衝撃は、やっぱり女神の・・・』

「ふふっ。 不思議アルカ? 大昔は、もともと天国も地獄もなかったソウネ! でも人間が悪い事をするようになったから天国と地獄が出来たってわけネ。 つまり神様もあたし達も元は一緒ってことアルヨ!」

「そ、そういう事なの?」

「そういう事アルネ。 さぁ、着いたアル」

目の前には真っ赤な大きな門があり、頭が三つあるケルベロスが繋がれていた。

「この子は、門の中に入る時は何もしないから大丈夫アルヨ」

キャサリンは尻込みするミキに向って、手を差し伸べた。


次回、「大王様とご対面」へ続く

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