第2話 舞双銃姫 <壱>
お待たせしてしまい、申し訳ありません。
それでは本編をどうぞ!
暗い闇の中からゆっくりと目蓋を開くと記憶にない天井がそこにはあった。少し薬品のようなにおいが蓮魔の鼻を刺激する。
「・・・ん、ん~」
ゆっくりと体を伸ばしながら周りへ視線を向ける。周りは少し薄暗く自分が寝ている両端にカーテンが掛かり目の前には体重計と身長計と座標計が蓮魔の目に入る。
(保健室か・・・)
周りの様子からここが保健室だということは確実である。だが、ここが保健室ということは
「・・・負けたのか」
自分の置かれている状況を改めて確認したおかげて頭に血がめぐってきて改めて、昼間の闘争の時の記憶が蘇ってきた。霞咲の最後の一撃に蓮魔は魂武器も意識も切り捨てられたんだと・・・
「悔しいなぁ」
始めてだ、悔しいと感じたのは・・・今まで闘争なんてただの遊び程度だった。ほかの奴と戦ってもこんなに熱くなることもなかったし負けたとしてもここまで悔しくなることもなかった。だからなのだろうか?蓮魔はとても悔しかった、自分の心の現れである魂武器を粉々にされたということは心を粉々にされたのと同じようなものなのだから。
「・・・次やるときは負けたくねーな」
次の再戦への思いを胸に、自分が寝ていたベッド近くの机に視線を向けると修練場のロッカールームに置いて来ていた。制服と財布とスマートフォンが置いてありその上に一枚の紙が置かれていた。紙にはひらがなでどんまいと一言書いてあった。
「・・・どんまいか、テラワロスだな。この文字的に」
携帯端末の電源を入れると18時24分と表示されていた。闘争を始めたのが3時頃と考えると3時間以上は眠っていたようだ。
「結構、寝てたな・・・」
制服への着替えを済ませ。軽く肩を回しながらカーテンの外へ出る。
「あら~起きたの~れんちゃん~」
カーテンから出ると声が聞こえそっちを見てみると、保健室の机の上で事務作業を行っていた女性が蓮魔へ向きなおし話しかけて来ていた。
「すみません、こんな時間まで残らせるようなことしてしまって・・・」
謝りながら蓮魔は彼女の様子を窺うように見る。銀色の長い髪の頭に赤い大きなリボンを付け、赤いふちのない眼鏡の置くから黒い瞳をこちらに向けている。彼女の名は山中 優子。元々は医者をしていたが、今はこの学園の保健室の先生として勤めている。
この学園での保健室は、普通の学校の保健室の役割とは別に闘争関係やツール関係の調整なども行っている。
「あらあら、きにしちゃだ~め。保健室を任されている身としてはしっかりと生徒が起きるまではいないと~・・・それにしても、れんちゃんが運ばれるなんてめずらしいわねぇ~」
「そ、そうっすね」
「たしか~れんちゃんの相手は・・・かすみんだったわね~いや~かすみんは強いね~」
かすみんこと、霞咲 蒼可は転校して2、3ヵ月ほどしかたってないが闘争の授業で無敗を守っている。闘争の授業は毎日一回は行われて、鍛錬などがメインになるが、授業の後半に行われる闘争での試合では転校してきてから一度も負けなしなのだ。
「そうっすね、俺もまさか秘儀の一刀でやられるとは思いませんでしたよ・・・」
「一刀・・・」
「いや、一刀両断すかね・・・居合切りで一発だったんで」
「一刀両断・・・」
そんな話をしながら山中先生は考え込み始めた。
「先生?」
「一刀両断少女」
そんなことを山中先生の言葉を聞き、蓮魔は気づいた。山中先生とは蓮魔が入学してから1年間の短い付き合いだがそれなりに仲良くはなっている。だからこそ・・・
「そうよぉぉッ!一刀両断少女がいいわ!!かすみんは一刀両断少女が似合うわぁッ!!『一刀両断少女』霞崎 蒼可!かすみんはこれからこう呼びましょう!!」
「はぁ・・・始まったよ。先生の悪い癖が・・・」
山中先生は、気に入った生徒に二つ名をつけると言う悪い癖があるのだ。その被害者は数多く適当選択 赤崎 蓮魔もその被害者である。
「先生・・・そろそろ、その悪い癖やめたほうがいいっすよ・・・その名前のせいでいろいろな犠牲者が出てんすからね・・・俺だって適当選択なんて呼ばれ始めてもいますし」
「何言ってるのれんちゃん、あなただってテェィラ・ワルロス君をテラワロスって呼んでそれが定着してるじゃないの・・・それに、テラワロスって名前より『一撃奇跡』のほうがいいに決まってるわ!」
「テラワロスもいい被害者っすよね・・・俺と先生の・・・」
「そうね~」
そんな会話をしている二人の部屋に数回のノックの後。
「失礼します」
っと言う声が聞こえる。ゆっくりと扉が開かれそこには、双山 鈴音が立っていた。部屋の中を少し見渡した鈴音は蓮魔の姿を見つけ少しほっとしたような表情を浮かべる。
「赤崎君、起きたんだね。よかった・・・」
「心配かけちまったみたいだな、双山」
「いや、大丈夫だよ!それにしてもよかった、なんともないみたいで」
「・・・そうだな、別に体に不調は感じねーな」
「でもね、れんちゃん~無理しちゃだめだよ~魂武器が折れたってことはそれだけの精神ダメージがあるんだからね?家でゆっくり休まないといけないんだからね~?」
「そうだよ、赤崎君。今は不調を感じなくても、後から来る場合だってあるんだから。そうして、無理して倒れたらそれこそほかのみんなに迷惑もかけるし一番大変なのは赤崎君なんだよ」
「・・・はい、気を付けます」
少ししょんぼりし始めた蓮魔を見た。双山が声をかける。
「取り合えず、今日はもう帰ったほうがいいと思うよ?さすがに疲れたでしょ?」
「・・・そうだな、さすがに疲れた」
「それはそうだよね・・・あれだけ攻撃を受けてたし、それに魂武器が壊れちゃったから・・・疲労はすごくたまってるともうよ?」
「れんちゃんはその体質のもあるから気を付けておかないとすぐ体調崩しちゃうかもしれないからね」
「・・・はぁ、俺だってこの体質になりたくてなったんじゃないんですけどね」
「それは、どうすることもできないよ。赤崎君」
「そうだけどさ、長期休業でこの体質のせいで補修を受ける身にもなってくれよ・・・」
「仕方ないよ~れんちゃん~そればっかりは体質だからね」
人間一人の魂武器は決まっている。例えば、霞崎 蒼可は居合刀型の魂武器が彼女の魂武器である。
しかし、赤崎 蓮魔にはその決まりはない。斧型の魂武器になったり槍型・剣型・銃型など様々な魂武器へと変化が起こってしまうがために、彼は『適当選択』の二つ名で呼ばれたりしてしまう。
だが、そんな蓮魔の体質をよく思っていない者が学園内にも存在する。いくら体質だからとは言え、このような体質は今まで聞いたことも見たこともない未知の物なのだ。そのため、学園内では適当選択と呼ぶ者ともう一つの呼び名がよく使われる。
「『才能無』なんて呼ばれるんだぞ・・・」
「確かにその呼び方はひどいよね」
「まったく、私がつけた『適当選択』のほうがかっこいいのに・・・」
(まぁ、どっちの呼び方も俺は好きじゃないけど・・・)
そんなことを思いながら、携帯端末の開くとすでに19時ぐらいになってしまっていたことに蓮魔は気が付いた。
「時間も、遅くなってきたんで俺はそろそろ帰ることにします」
「あら~ほんと、気を付けて帰るんだよ~れんちゃん」
「あれ、双山は帰んないのか?」
「うん、ちょっとこの後に先生と調整しないとだから」
「あ~調整か」
「うん、私の魂武器調子悪くて・・・」
「そんなこと言ったって、月一回で調整する俺と違って三か月ぐらいだろ?」
「あー・・・うん」
「違ったか?」
「いや、違ってないから大丈夫だから気にしないで」
「そうか、まぁいいか・・・それじゅぁ、俺帰ります」
「じゃ~ね~れんちゃ~ん」
「バイバイ、赤崎君」
「おう、じゃーな双山。また明日」
「うん、また明日」
そう言いながら、蓮魔は保健室を後にした。
「行ったみたいね~すずちゃん」
「はい・・・」
「れんちゃんもいいタイミングで帰ってくれたね~」
「そう・・・です・・・ね」
「・・・次の闘争の授業、やるって言っちゃったんでしょ?」
「・・・はい」
「れんちゃんもれんちゃんだけど、すずちゃんもすずちゃんだよね・・・」
「・・・」
山中先生の問いに答えず。双山は眼鏡を外し上着のポケットにしまう。
「・・・それにしても、れんちゃんの試合を見て次の闘争での試合をやらせてくださいって先生に頼みに行くなんて珍しいね。普段は闘争はしないんじゃなかった?」
眼鏡を外して俯いていた双山がニヤリと口を緩ませながら、山中先生のほうを向く。
「普段、ぬるい試合しかしないクラスの雑魚に興味はねー・・・だがよ、あんなの熱い試合見せられて熱くならないのはおかしいと思うぜ?センセ」
先ほどの丁寧な言葉遣いとは違い、少し男勝りのような話し方で返答する双山の姿は姿は同じでも何かが違うかのような感じであった。
「私は、試合を見てないからわからないけど・・・なんで、相手がれんちゃんなの?」
「へへッ、蒼可のやつでもいいんだけどたまにあいつの練習付き合ったりするから慣れてんだよ・・・でも、確信したぜ。いつもはあんまり気に留めてなかった赤崎の野郎があそこまで強いだなんてな」
「あの体質のせいでれんちゃんは弱いイメージを持たれるけど、強さ的には中の上ぐらいの強さではあるからね」
「力的には、中途半端なものだがあいつの強みはあの奇策ともいわれる策に無駄の少ない立ち回りがめんどくさいからな・・・」
「そういった相手はめんどくさいから相手したくないとかって言いそうだけど・・・珍しいわね」
「あいつとの闘争は本当に燃えそうだからな・・・考えるだけで燃えてきやがったッ!」
「ふふっ、それは楽しみでいいわね・・・それじゃ、調整を始めるわよ・・・おとちゃん」
数日後の闘争の授業にて、俺こと赤崎 蓮魔はまた闘争修練場 第一修練場 闘争フィールド内に立っていた。
「すまんな、赤崎。数日前に闘争での試合やってもらったばかりなのに・・・」
「あー・・・気にしないでくださいよ。だって初めてじゃないすか?双山のやつが闘争の試合をやりたいって言いだすの」
「そうなんだよ、普段あいつ闘争の試合とかやらないからいつかはやってもらいたいとは思ってたから。いい機会だと思ってな」
現状、俺は双山からの指名によりまた闘争の試合を行う前なのだ・・・
「そういうことだ、すまんが赤崎。無理しないくらいでいいから頼むぞ」
「了解っす」
そう言いながら、先生はこの場を離れ・・・それと変わるかのように双山が俺の前に立った。彼女は、青と赤の魂装備を着込み腰の辺りには魂武器のツールが左右にくっ付いていた。双山の魂武器は特殊で、エル字型のツールだ。この型を使う相手は銃型が基本・・・それを左右につけているってことは双銃型で間違いないだろう・・・あれ?
「おい、双山。眼鏡どうした?コンタクトか?」
普段の双山なら、眼鏡しているからしてくるもんだと思ったが・・・
「・・・大丈夫」
「・・・そうか」
なんか雰囲気違う気がするが何かあったのか?・・・まぁいいか、今は目の前の試合に集中しなければ。
「互いに用意できてるな?それなら、『適当選択』赤崎 蓮魔 VS『舞双銃姫』 双山 鈴音の試合を開始する!」
今回のレフェリーの相蛾先生は山中先生がつけた二つ名を闘争の試合前にコールしてくる人だ。恥ずかしいからあまり呼ばないでほしいけど・・・さて、やるか!
「こい!双銃『紅心・青心』」
へぇ~左右で銃の色違うんだ・・・右が赤で左が青・・・しかも、少し形が違うから多分威力の違いか速さの違いがあるな・・・
「こい!俺の魂武器!!」
さて、今回は・・・うっわ、中型ハンマーか相手が銃型でこれは厳しいな。
「二人とも用意はいいか?」
まぁ、
「いつでもやれるっすよ!」
どんだけきつくても、
「・・・いつでも」
やれることを全力でやって楽しんで戦う!それがや俺だッ!!
「闘争スタート!!!」
舞双銃姫 弐に続きます!




