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一刀両断少女とランダム少年と  作者: アレット@たん
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第1話 適当選択

初めまして、アレット@たんと申します。

文才力が無く誤字やらおかしな部分が多いと思いますが、読んでいただければ幸いです。

それでは、本編をどうぞ!

 特殊な才能を持つものがすべて称えられるわけではない。特殊な才能のせいで今の生活が大変なものになることだってあるのだ。いろいろな物語で特殊な才能を持ったものが苦労し拒絶され、そして最後には評価されるのが物語だ。

だが、そんな物語が現実にあるなんてことはあり得るかもしれないしあり得ないことなのかもしれない。だが、そんな主人公には俺は成れないことを確信している。別に俺はこの特殊な力のせいで苦労はしていないと言ったらウソにはなるがそんな苦労をしているわけでもない、この力のせいで学校での友人関係が悪いわけでもない。むしろこの力のおかげでいい方なのかもしれないし、この力のおかげで楽しいと言えば楽しい。

だけど、俺はこの日々に飽き飽きしていた。何か物足りないようなそうでもないようなそんな感覚が日に日に積もっていき思えばこの学園に入学してからもうすぐ一年になる。普通に過ごした日々・・・だが、来年からそんな日々も劇的に変わるはずだ。そう思って俺は日々過ごしてきた・・・この心の渇きと共に・・・そんな時に彼女が現れた。


この先、好敵手になる彼女を

この先、共に戦うようになる彼女を

この先、かけがえのない人になる彼女を

この先、共に歩んでいく彼女を








 今より前、科学技術の発展があまり進まなくなった。科学技術が発展しなくなりエネルギー問題が悩まされている中、人類は人体の心の研究を進めて行くにつれ、人の心と精神から生み出される力をエネルギーに変える技術を生み出した。そんな現実味のないエネルギーを人は魔法と呼んだり魂力ソウルと呼んでいた。





「それじゃ、こっから前の授業のおさらいをするぞ」


 そういって、丸眼鏡のぼさぼさ髪の教師が話を始める。

 昼休みの昼食が終わり、程よい満腹感からくる気持ちの良い眠気と戦いながらも授業が進んでいく。今は、ちょうど今の世界の仕組みや歴史に関しての授業なんだが・・・実際歴史は嫌いだ。覚えるのもだるいし、何しろ覚えて何があるんだろうか?と赤崎あかざき 蓮魔れんまは思う。


「今の時代、色々な物の燃料や資源の代わりに使われる力の名称を二つ説明したが一つは魂力ともう一つ・・・吉田。答えてみろ」

「はい」


 そう言って、一人の女子生徒が席を立つ。


「魔法です」

「正解だ。じゃ、なぜ魔法なんてファンタジーみたいな呼ばれ方したか続けて答えてもらってもいいか?」

「・・・え~と、人じゃできない力のことでしたか?」

「まぁ、答えとしてはあってるが説明としては50点ぐらいだな。説明すると、人間の力ではなしえない不思議なことを行う術という意味が魔法にはある。人の心は人に取って重要なものだがその力に関しては謎が深いそんな力だからこそ魔法という不思議なものと言うようになったんだろうな・・・ここテストに出すからしっかり覚えておけよ?」

「「「えーッ!」」」


(そんなに慌てるようなことでもないんじゃねーかな・・・)

 と考えながらも、蓮魔も人のことが言えないほど戸惑ってはいた。


「吉田、ありがとう座っていいぞ。それじゃ、次行くぞ。今やすべての機器や乗り物のエネルギーの代わりになった魔法だが、今やいろいろな道具を一つにまとめた道具を・・・テラ」


 続けて、少し赤色が掛かった黒い髪に特徴的な緑色の瞳に少し日本人とは違う顔付きの男子生徒・・・テェイラ・ワルロスが立ち上がった。


「先生、テラじゃなくてテェイラっすよ・・・はいはいなんすか」

「今や万能道具となったものの名前と用途を答えてみろ」

「そうっすね、基本的にツールと訳されるもので工事用や調理器具など数々の方面をカバーできて・・・確か正式名称・・・じゃなかった全部まとめて魔法マジックツールっていうんでしたっけ?」

「そうだ、形や大きさは個人に合わせて変わるが基本的には人の手に収まるぐらいの棒状が基本的な形だな。続けて双山」

「はい」


 先ほどの男子生徒が座り、新たに女子生徒が立ち上がる。髪は肩に届くか届かないかくらいの黒髪でフチのついてない黒い眼鏡を掛けその瞳は左が赤、右が青のオッドアイ穏やかそうな優しそうな少女・・・双山そうざん 鈴音すずねが立ち上がる。


「ツールの基本的な使用方法を答えてみてくれ」

「ツールとは、棒状の道具から人体の魂力を引き出し形作ります」

「はい正解、だからこうやって」


 そう言って、教師はズボンの後ろポケットからツールを取り出し目を少しつぶる。すると、棒の先端が伸びていきツルハシの形を作った。


「こうやって今は、作業用の道具をツールで生み出したり」


 また、目をつぶると先ほどツルハシの形をしていた部分が消え今度は包丁のような形に変化した。


「調理器具にも変化できるが、まぁ包丁とかフライ返しとかすぐに使えるようなものだけだがな。ちなみにこのツールから手を放して置いたらどうなる・・・霞咲」

「はい」


 そう言って、一人の女子生徒が立ち上がる。腰まで届くくらいの黒い長髪に少し凛々しい顔つきの霞咲かすみざき 蒼可そうかだ。


「ツール自体が人の魂力を使うものなのでもって一分ぐらいかと思われます」

「そうだな、霞咲の説明で合ってる。ツールを落としたりしても一分間ぐらいはその形を維持してくれる。このことについてもテストにだすぞー」


 そう言いながら、その教師は教科書を閉じた。


「そういえば、この後、闘争バトルあるんだよな? 誰と誰の対決だ?」


 闘争について聞きなれないだろうが、闘争は簡単に言えばスポーツだ。魂武器ソウルウェポンといわれるツールを使い自分の心を武器として形作る。その形は人それぞれで日本刀みたいな形から銃の形、さらには籠手など色々と存在している。まぁ、大前提として武器の形は大きく変えることは不可能だ。例えばの話をするならば、魂武器の形が剣の人はある程度剣の形を変えることはできるが魂武器:剣から銃とか斧に変えようとすると性能が落ちる。完璧に作れて性能が自分の精神力の80%分になり少し形を変えると50%分の性能。武器の種類を変えると性能が5%ぐらいまで落ちる。簡単に言えば武器の形を変えてる暇があればそのままの武器で戦えるようにすればいいし、武器を変えたいんだったらそもそも闘争をやるなってレベルのものだ。魂武器のダメージは肉体へのダメージとはならずに精神や体力へのダメージとなる。

(そういえばこの後、闘争の授業か・・・)

「あぁ、霞崎さんと・・・」


 クラス全員の視線が一人の男子生徒に向けられる。


「我らが『適当選択ランダムセレクト』の赤崎の試合っすよ」

「おぉ、ついに霞咲の試合か~転校してきてまだ2、3ヵ月ぐらいだが大丈夫か? 霞咲」

「はい、大丈夫です。何より・・・」


 霞咲は蓮魔を睨むように見つめる。


「あの人みたいにまともに闘争の授業を受けない人には負けないですから」


 その発言を合図にしたかのように授業を終える鐘が鳴り響いた。







<私立人魂学園>

 俺が通う学園の名前だ。学園の敷地の広さは確か東京ドーム10から12個分ぐらいだったかな?そこらへんあんま興味ないから覚えてねーや。この学園では、ツールを正しく使うための知識や心構えなどをメインで教えている珍しい学園だ。初代学園長のお言葉では『生徒一人一人の心の成長がこの学園の存在意義であり、生徒一人一人の心を正しい風に導くのがこの学園で働く者の務めだ』と言う言葉を残したらしい。そんな初代校長からの伝統なのかわからないがこの学園は通常科目は普通の学校より少なく道徳や校外学習を多く取り入れている。そのほかにも、運動部や文芸部などの部活動もにも力を入れているまさに文武両道と言う言葉がよく似合う学園でもある。


この学園の校訓は

【力とは己の体にはあらず。心とは己の体にあらず。精神とは己の体にあらず。この三つがそろってやっと一人の人となる】

【力とは一人で出せる物ならず。心とは一人で変える物ならず。精神は一人で支えらる物ならず。人は一人では生きてはいけない】

【奇跡とはあきらめない心にあり、希望とはあきらめないで行動するものにあり、可能性とは努力により尽きることはない】

の三つを校訓としている。これって校訓っては言わなくね?と思ったことは何度かある。

 大体、この学園の全校生徒は約600人ぐらいだ人数のわりに学園の敷地が広いと思うが・・・この学園はグラウンドが三つ体育館が三つに闘争用のドームが二つある学園なのだ。

 


 授業が、終わり闘争用の体育館に移動しながら俺はふとため息を漏らした。


「はぁ・・・」

「どうした、赤崎。ため息なんてついて・・・まさか恋!?あの単純、赤崎が恋なのかぁーッ!!」

 なんて、叫びながらテェイラ・ワルロスが俺に近づいてきた。

「うるさいぞ、テラワロス」

「だから!テェイラ・ワルロスだっていってんだろうが!!」

「いいだろ?あだ名だよあだ名」


 俺とテラワロスもといテェイラは、この学園の入学式で話して友達になった奴で自己紹介の時にガチガチに緊張しながら自己紹介したときにテェイラ・ワルロスって名前がテラワロスって聞こえたことからこのあだ名がついた、そう考えるとなんだかおもしろいな。現在、こいつをテラ呼びの奴とテラワロス呼びの2パターンで別れている。


「で、なんでため息なんかついてたんだ?」

「あぁ、俺さ。あの子になんかしたのかなーって思ってよ」

「あぁ、霞咲のことか・・・まぁ~大丈夫じゃねーの?」

「ばーか、ピンポイントで俺が毛嫌いされてるのなんかおかしいだろ・・・」

「そうか?人には好みがあるはずだろ。単純に好みじゃないだけだって、お前だってあまり得意じゃないやつとかいるだろ?」

「まぁ、いるけどさ・・・」


 それにしたって、俺一人を嫌っているようにしか思えないんだよな・・・なんでなんだろう?


「それで、赤崎。今回はどんな策で行くんだ?また、幻影マジックで相手を撹乱させてからの一撃コンボか?」

「ばーか、それができるのは俺が剣か斧とかの斬撃系を引いたらだろ・・・まぁ、そこらへんは運だから仕方が無いんだがな」

「でも、霞咲の効果エフェクトなんだと思う?」


 効果は、闘争時に使える能力のようなもので一人一つ力を持っている。テラワロスが言っていた幻影マジックも俺の効果のことである。


「さぁ?今まであいつの戦い効果無しでの剣術での勝ち方だったから何とも」

「しかも、秘儀スキルも使ってないしな」


 秘技は、闘争での必殺技を全体的に呼ぶときに使われる言葉だ。


「まぁ、今回は普通にやるよ」

「そうか、がんばれよ!赤崎」


 テラワロスが左手を俺に向け拳を突き出してきた。


「おう」


 そういって、右拳をあいつの左拳に突き当てた。







ー人魂学園 闘争修練場 第一修練場ー


 修練場に入り、ロッカールームに入る。


「さて、用意するか・・・」


 堅苦しい制服を脱ぎ、少し緩いぐらいのジャージを着てそのジャージの上に丸い機械を取り付ける。機会が光始めてその光が体を包む。光が収まり服装が変化した。膝ぐらいまで届きそうな黒い服を羽織りその中から白い服が見え黒の動きやすそうなズボンをはいた格好へとなっていた。


「この魂装備ソウルアーマーも何とかなんねーのかな・・・」


 魂装備は、闘争に置いて精神や体力に直接入るダメージを軽減したり軽い物理攻撃を軽減する。そして、使用者によって服装の色や形が変わる。

 そんなことを考えながら、魂武器のツールを二本左右の後ろポケットに入れてロッカールームを出る。薄暗い室内を歩き目指すは、決戦の場所へ・・




 闘争用のフィール内で軽く準備運動をしている中、声がかかる。


「さ~て、これから闘争を始めるぞ」


 少しだるそうに話しながら、黒の天然パーマの担任、森野山先生が声をかけてくる。


「えっと、赤崎と霞咲だっけか・・・今日は」

「はい、先生」


 さすが、元気がいい挨拶だな・・・霞崎さんの格好は白く薄い装束に身を包んでいる印象的なのは装束に書かれている青い花。これが彼女の魂装備か、たしか彼女の魂武器は刀型の居合系だったはずだ。


「じゃぁ、この二人以外は離れてみているように・・・それと、二人は無理はするな倒れられても困るのは周りだしな」


 そういって、先生もこの場から離れる。残ったのは俺と霞咲さんの二人・・・この正方形上のフィールドの上で彼女と戦うのか・・・あまり好ましくはないな。


「じゃぁ、始めますか・・・あなたにだけは絶対に負けない」


 そういって彼女は目をつぶり右手に持った魂武器を腰の左の腰までもって行く。少しツールが光った後に、黒い鞘に収まった刀が作りだされた。


「居合刀『蒼龍』」


 刀を鞘からゆっくりと引き抜く。薄い青色の刃に五角形の鍔がツール先に伸びていた。これが彼女の魂武器の蒼龍か・・・


「居合刀なのに抜刀していて大丈夫なのか?」

「えぇ、あなたには抜刀した状態でも十分でしょうから」


 ずいぶんな言われようだな、俺。マジで何かやったっけ?


「・・・さぁさぁ、お立合い!」

『おっ!来るぞ!赤崎の語りだ!!」

『い・つ・も・の!』


 ほかの生徒たちが声を上げ始めた。それに合わせて叫ぶ。


「さぁ、こい!俺の魂武器!」

 

 一回瞳を閉じてもう一度開くと、灰色の配色に手の甲部分に赤い星形の模様が描いてあるものが手を守るように形作られていた。大きさは右腕の二回り大きいぐらいの籠手の魂武器か、刀が相手で籠手型は少しきびしっ


「やっぱりふざけているんですか!!」

「!?」


 うわ、行き成り怒り始めた!?えっ、何?普通に武器出しただけなんだけど!?


「もしかして、あまりこう周りを盛り上げるのって嫌い?」

「そうじゃありません!」


 うわ、肩を震わせてるよ・・・どんだけ怒ってるんですか!?


「あなたはなんでそうやって・・・まぁ、いいです」


 刃先を人に向けんなっていいたいところだが・・・勝負だから仕方ないか。


「お互い、用意できたようだな」

「はい、始めましょう先生」

「・・・赤崎、大丈夫か?」


 聞いちゃうそれ?


「大丈夫っすよ・・・始めましょうや!」

「それなら、闘争開始バトルスタート!!」




 開始と同時に、霞咲は蓮魔へと距離を詰める。


「はぁぁッ!!」


 霞咲が刀を横に振るうのをバックステップで蓮魔は避ける。


「まだまだぁッ!」


 霞咲が追撃のため歩を進め切りかかる。一刀一刀が細かく振られ振った後の隙が無いため蓮魔は攻撃に移ることができず回避に専念せざるおえないでいる。


「やぁぁッ!!」


 霞咲は片手で左から右に大きく刀を振るう。先ほどより大きな隙に蓮魔は膝を曲げ低い体勢から懐へと踏み込みながら、右手の籠手を思い切り突き出す。それに対し霞咲は右手を握り突き出そうとする。


「そんな、苦し紛れの攻撃が当たるかぁッ!!」


 そのようなことを言いながら突っ込む蓮魔の腹部に殴られたかのような痛みが走る。


「ぐッ・・・!」


 たまらず蓮魔は距離を取る。この一瞬の出来事で、彼のスピードは殺されたのだ。ここで距離を取らなければ今度は殴られるだけでは済まないからこそ距離を取ったのだ。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 肩で呼吸をしながら、ゆっくりと今のあり得ない現象について考える。普通ならばこのようなことを考える必要はないはずなのだ。なぜなら彼は殴られただけなのだから。だが、ここで問題になってくるのはなぜ当たったのかだ。自分は籠手型の魂武器のおかげで拳二つ分のアドバンテージがある。相手は一度の攻撃をすました状態からの遅れた状態からはなった拳だ。そんなものに負けるはずはない、仮に負けたとしよう。それでもあり得ないことだ、拳を伸ばし切っても届かない場所でどうやって人を殴ることができるのか。この攻撃で確かに蓮魔は彼女の懐に踏み込んで近づいていたが、あの段階ではまだ近づいている途中なのだ。つまり結論はこうなるのだ、ありえない攻撃を受けたと。


「さぁ、次行きますよ!」


 考えもまとまらないまま、霞咲は次の行動を取り始める。彼女はその場で刀を振るい始める。蓮魔と彼女の間には五メートルほどの距離がある。その場で刀を振るうのはどういうことなのだろうかと彼は考える。


「ぐぁッ!!!」


 突如、彼の体は切り裂かれるような痛みを感じる。


「なんだよこれッ!!」


 そういいながら、横へ転がりながら逃げる。それを見た霞咲は刀を振るうのをやめて、蓮魔を見る。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 先ほどよりも肩を大きく動かしながら呼吸を整える。闘争は肉体へのダメージがない代わりに体力と精神力を削られるためにそこまで動いてなくてもすぐに息が上がってしまうのだ。


「・・・」


 蓮魔は顔を俯かせ動きを止めた。


「なんですか?諦めたんですか?それならリタイアしてください・・・これ以上無駄な戦いはしたくないですからね」

「くくッ」


 蓮魔は急に笑い始める。


「ハハハハッ!!面白れぇ!!面白いじゃねーか!!」


 顔を上げた蓮魔の瞳は闘志に燃え上がっていた。


「リタイアだって?冗談はよせよ、こんなに面白くなってきたんだ!!倒れるまで付き合ってもらうぜぇ!!」


 そういいながら、蓮魔は瞳をゆっくりと閉じる。その言動に霞咲は動揺を隠せないままに行動にでる。


「目をつぶるなんてなめているんですかッ!!」


 霞咲が刀を横に振るう。瞳を閉じた蓮魔はその場から動かないでいると、彼の腹部が真横に切り裂かれ腹部を中心に上半身と下半身は離れた。


「えっ!?」


 そのまま、半分になった蓮魔が消える。まるでもともとその場所に赤崎 蓮魔がいなかったかのようにして。


「オラァッ!!」


 霞咲の右から飛んで殴りかかろうとする蓮魔の姿があった。


「くッ!!」


 そのまま、霞咲は空間を切り裂くが空中の蓮魔が半分に切り裂かれ消えた。


(一体何なの!?一体何が起ってるの!?)


 今の現状を理解できない霞咲は周囲の警戒を強める。


「おいおい、どっち見てるんだ?俺は後ろだぜ?」


 霞咲の背後から蓮魔の声が聞こえ振り返った霞咲は驚きに顔を歪ませる。


「えっ」


 そんな間抜けな声を上げた彼女の目の前には、4人の男が立っていた。服装も装備している武器も体系も顔も髪型もすべてが同じ人物。赤崎 蓮魔が4人に増えているのだ。


「残像かァッ!」


 霞咲は刀を横に大きく振るう。すると4人横に並んだ蓮魔達の腹部が裂け横に真っ二つに割かれた。


「やっぱり、斬撃とかを飛ばしてたか・・・ったく、斬撃飛ばすときは縦とか斜めとかにも切り裂いてくれよ。ただでさえ肉体に傷がつかないんだからさ」


 どこからか声が聞こえ、あたりを探す霞咲は自分の目を疑った。それもそのはずだ、自分を中心に何十人もの赤崎 蓮魔が立っているのだから。


「一体何が起っているの!?」

「・・・やっぱり知らないよな、俺の力に関して」


 何十人もの蓮魔がやれやれとした表情を浮かべ霞咲へと視線を向ける。


「教えてやるよ、俺の効果『幻影マジック』は俺自身の幻影を生み出したり物の幻影を生み出せるもんだ」


 その説明を受けて、霞咲はなるほどといった表情を浮かべ改めて周りを観察しだす。


(つまりこの何十人もの彼は偽物・・・なるほど納得しました)


「つまりあなたはこの偽物を使って私の攻撃の観察をしていたんですね」

「ご名答、お前の効果は力を飛ばす物だろうな。あの殴られた奴は、刀の遠心力を理由して拳を突き出してその力を飛ばしたんだろ?」

「半分はあたりですね」

「あらあら、半分ですかい・・・」

「でも、わかったからと言ってどうするんですか?この攻撃が避けると言うわけではないのでしょう?」


 顔には出さないようにはしているが蓮魔は内心困っていた。わかっていてもこの攻撃を避ける方法も対策する方法も浮かんでないからだ。だが、彼は覚悟を決める。


「・・・やってやろうじゃねーか!」


 すべての蓮魔の幻影が霞咲に向かって走り出す。


「(・・・どれが幻影かわからないなら)すべて切る!!」


 霞咲は右足を軸に刀を一回転して振るう。そのまま彼女の斬撃が飛んでいき何人もの蓮魔の幻影を切り裂いていく。


「そう来るのを待ってたぜッ!!」


 霞咲の足元から灰色の物体が迫り、そのまま彼女の腹部に当たる。


「うあッ!!」


 そのまま、霞咲はその力に押し出され吹き飛ばされながら受け身を取りすぐさま立ち上がりながら考えを巡らせる。


「なんで避けれたんだ?って顔してるけど簡単だぜ」


 蓮魔の言っていることは的を射ていた、彼女はなぜ見えもしない斬撃が彼には避けれたのかを考えていたのだ。


「答えは簡単。お前を見ていればある程度どういう風に飛んでくるかは予想ができるし、そもそも俺には幻影の壁があったからな。どこら辺が切られたかなんて見ればわかるしどういう速度で飛んできているのかもわかりやすいもんだ」

「・・・」


 霞咲は内心とても驚いていた。彼を下に見ていたからこそ、自分の効果がばれただけならまだしも攻略までされたのだから動揺しないはずもない。


「さぁ、霞咲・・・こっからが反撃だッ!!」


 そう叫び、彼は彼女へ走り出す。


「くッ!」


 霞咲は刀を構えなおして斬撃を飛ばすが、その斬撃は走りこんできた蓮魔の残像を切り裂く。


「そら、こっちだッ!!」


 左右から蓮魔が走りこんできているのを確認し霞咲は右から迫る蓮魔へと走り出す。


「はぁぁッ!!」


 右から走りこんだ蓮魔を切り裂くとそのまま蓮魔は消える。


「つまり本物はこっち!!」


 振り返った霞咲の目の前に銀色の何かが迫ってきていた。慌てて自分の刀でそれを抑え込んみそれを改めて見ると刀の刃だ。その刀は銀色に輝く刃に丸い鍔がツールの先に伸びている物だ、その刀の持ち主は蓮魔だ。右手に持っていた籠手を左手で持ち、新たに右手で刀を持っていたのだ。


「魂武器の二本持ちでしたか・・・だけど、自分に合った形じゃない魂武器に力なんてない!!」


 体全体を使って、蓮魔を前に押し出し距離を開けた瞬間に霞咲は縦に刀を振り下ろすが、それを刀を横に防ぐ。


「なんで!?ならこっちかァッ!!」


 霞咲は蓮夢の腹部に蹴りを入れ、距離を開けて、その隙に刀を握り直し左肩めから右斜めへと剣を振り下ろす。だが、彼はそれを籠手で防ぐ。


「なんで!?なんでなの!!」


 苛立ちに声を上げた霞咲は自ら距離を開けて、蓮魔を睨み付ける。


「気持ちの入ってない魂武器にここまでやられなきゃいけないの!!」


 そう叫びながら、刀を適当に振って斬撃を飛ばす。


「同じ手は俺には通用しない!!」


 蓮魔の前に3人の蓮魔の偽物が現れまっすぐ霞咲へ向かって走っていくが途中で斬撃で切り裂かれる。切り裂かれたと同時に蓮魔は幻影の切り裂かれた後を見て斬撃を回避しながら彼女へと突っ込んでいき、幻影を作り出し攻撃を仕掛ける。


「同じ手に何度も引っかかるわけない!」


 飛んで殴りかかろうとする蓮魔と下から懐に潜り込もうとする蓮魔の攻撃をバックステップで避け斬撃を飛ばす。その斬撃に幻影が切り裂かれると同時に霞咲の目の前に籠手が来ていた。


「ハアアアアアアッ!!」


 霞咲は刀で籠手をはじくと同時に、切り裂かれる。


「うああああッ!」

「っしゃッ!!もういっちょぉッ!!」


 蓮魔は左下から右上に向かうように霞咲を斬ろうと迫るが、彼女はそれをバックステップで後ろに下がり回避する。


「あまいぜ!霞咲!!!」


 切ろうとしていた蓮魔をすり抜けるようにして蓮魔が現れ、霞咲を斬る。


「キャァァァッ!!」


 これにはたまらず霞咲も下がるしかないと判断したのか後ろに下がる。


「え」


 驚きに声が出てた。霞咲の目には刀を両手で持った蓮魔の姿が映っていた。


(籠手はどこへ消えたの!?)


 そう、蓮魔は籠手を持っていなかったのだ。霞咲は下がりながら視線の恥じの方に転がっている籠手を見た。

 蓮魔は投げたのだ。幻影で作り出せばよかったものを作り出さずに本物を当てに行ったのだ。


「霞咲、いいことを教えてやるよ。表を生かすなら裏を強く、裏を生かすなら表を強くってな!」


 その言葉を聞き霞咲は確信を持ったこの相手は自分が思ってるよりも強いと、だが強いと思ったからこそ一つの疑問が頭から離れない。


「ねぇ、赤崎君。あなたはなんで本気で戦ってないの?」

「え?俺はいつでも本気だぞ?」

「嘘つかないで!じゃぁ、なんで魂武器の武器の種類を変えるの?そんなのが本気って言うの?」

「・・・え、もしかして俺の特殊な力の事知らない感じ?」


 霞咲は覚えがないのか不思議そうな顔を蓮魔へと向ける。


「えっと、俺の二つ名覚えてる?」

「適当選択だっけ?」

「そう、適当選択。そのままの意味なんだよ、俺に決まった武器はないんだ。だから、毎回のように俺の武器は変わっちまうんだよ・・・だから、俺がまじめにやってないって言うんだろ?」


 霞咲はゆっくりと頷く。そう、赤崎 蓮魔には決まった武器がないのだ。いくら心を具現化しようとしても毎回のように武器が変わってしまうのだ。一回作ったものを作り直そうとしても形が変わってしまうから、彼は武器を固定して戦うことができないのだ。そこからついた名前が適当選択なのだ。


「・・・バカみたいだね。そんなことも知らずにあなたを知ろうともしないで勝手なことばっかり言って」

「そんなことはないと思うぜ?俺だって知らなかったらそういう風にするかもしれないし、別に俺は気にしてないからな」

「ふふっ・・・あなたになら本気であれが使えそう」


 霞咲のまとう雰囲気が変わるのを蓮魔は感じた。これが本来の彼女の本気の姿なんだと・・・


「ついに本気を出せるか・・・あぁ、いいぜ!かかって来いよ!霞咲ィ!!」


 彼女は、抜刀していた刀を鞘へと戻す。膝を少し曲げ右手で柄を握り上半身を蓮魔へ向けて少し倒す。


「居合かッ!」


 だが、霞咲と蓮魔の距離は数メートル離れているので普通は当たるはずもないが彼は知っている彼女の効果が力を飛ばすものだと。


(つまり、居合の抜刀の力をそのまま飛ばす技!!)


 蓮魔は刀を前に構え迎え打つ姿勢を取る。


「秘技・・・」


 そう呟いた霞咲を蓮魔はもう見ることはなかった。


流心一閃りゅうしんいっせん


 彼はその言葉を最後に、構えていた刀が粉々に砕け散る様を見ながら意識を闇へと手放した。

主人公が1話そうそう負けるという話からの幕開けでした。

どうだったでしょうか?時間つぶし程度になっていたら幸いです。

それでは、次回もお楽しみに!

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