〈第三十三話 ミレイ=ユリアス〉
「ーーということは、貴女は商業ギルドから派遣されたって、ことでいいのかな?」
私たちはミレイが淹れてくれた紅茶と、ココリのパイを食べながら話を聞いていた。
いきなり、「サービスですから、お供します」と言われても、「はい。そうですか、お願いします」なんて答える訳にはいかない。ダンジョン内を一緒に行動するということは、当然、魔物を狩る時も一緒に行動するということだ。
つまり、生死を共にすることになる。
という訳で、私はミレイと話をすることにした。
「はい。先日、ムツキ様が商業ギルドに入会されたと聞き及んでおりました。このダンジョンの商業施設は、商業ギルドに登録されている店舗で運営されています。なので、色々な特典がついております」
「その特典の一つが、ミレイさんですか?」
私は真っ直ぐ、ミレイを見詰めながら確認する。彼女の表情は変わらない。
「はい」とミレイは頷く。
『ムツキ、あの【ステータス】を確認してみろ』
シュリナは念話で指示してきた。
『分かった』
私はそう答えると、ミレイと話をしながら、密かに【ステータス】を発動させた。
人に対して使うのは初めてだ。プライバシーだし、気が咎めて使っていなかった。まぁ、必要なかったしね。でも今回は、必要だろう。
(そういえば、サス君たちにも使ったことがないよね。しばらく自分のも確認していないし、一度確認しとかなきゃ)
そんなことを思いながら、ミレイの【ステータス】を確認する。皆に分かるように、浮かび上がった【ステータス】を、上から読んでいく。
【名前】 ミレイ=ユリアス(十九歳 女性)
【出身】 朱の大陸 王都バーミリオン
【種族】 人族(人とエルフのハーフ)
【称号】 元貴族
【職業】 戦闘メイド レベル35
(シルバーカード所持者)
【HP】 520/520
【魔力】 252/252
【スキル】 打撃レベル7 剣術レベル5
回復魔法レベル2
精霊の加護(固有スキル)
【その他】 罪状なし
……元貴族。
貴族のお姫様がメイドに転職? それも、戦闘メイドって。
打撃、剣術、どちらもOKってことかぁ。回復魔法まで所持してる。固有スキルまであるし。エルフのハーフだからか、魔力も高い。これほどのステータスを持っていて、何故、メイドをしてるんだろ? 別に奴隷でもないし、罪状もない。……メイドに拘る、何かの理由がありそうだ。う~ん。断る要素もないし、商業ギルドに入ったばかりだしね……
『どうしよう?』
私は皆に意見を求める。
『いいんじゃない』
『断る理由もありませんしね』
『このダンジョンの中だけだろ』
従魔トリオは全員賛成した。このパーティーは、従魔トリオにほぼ決定権がある。
「分かりました。ダンジョンにいる間、宜しくお願い致します。ミレイさん」
私は立ち上がると、ペコッと頭を下げた。すると、ミレイが慌てだす。
「止めて下さい!! 主がメイドに頭を下げるなど。それに、メイドにさんは不要です。ミレイとお呼び下さい」
この時、私は目の前の女性に好感が持てた。
「じゃ、私のことはムツキで」
「駄目です!!」
きっぱりと拒否された。
真面目だな……
まぁ、仕方ないかな。
「ミレイ、早速だけど、村の案内頼めるかな。出来れば、昼ご飯の美味しい所紹介して欲しいんだけど」
早速、頼んでみる。
「何が食べたいですか?」
「「「肉!!」」」
従魔トリオはぶれません。どこまでも、肉所望です。私は魚が食べたいんだけど……
「……肉でお願いします」
もう一度言います。このパーティーの決定権は、従魔トリオが握ってます。
「畏まりました」
ミレイは微笑みながら答えた。
百七十近くある長身に、引き締まった細身の体。背中まで伸びた銀色の髪を、耳の上の高さに一纏めし、紫の瞳したメイドは、とても美しい女性だった。
……この世界の美形レベルは、やっぱ半端ないわ。
ムツキがおじさん化しているような……
若干の不安を残しつつ。
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪
 




