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第九話 ステータスと従魔登録※



「皆さん、静粛に!!」


 あまりにも騒がしかったせいか、年配の係員が出て来た。妙な迫力のある人だった。


 おばちゃん? おじさん? 服装は女性物を着ているのに、顔はおじさんだね。おじさんに似たおばちゃんかな。声はとても太く低いけど。うん。訊くのは止めよう。訊いたらいけない気がする。


 年配の係員は騒いでいるハンターの卵を下がらせ、この場に関係ないハンターたちを手際良く散らせる。あっという間に、周りは静かになった。


 そして、私の対応をしてくれた係員のお姉さんに「それでは続きを」と声を掛け、奥に消えて行った。お姉さんはビクッと体を強ばらせ、小刻みに震えている。


 あの目は怖いわ~~。


「あの……続きがあるんなら、早くした方がいいんじゃないですか?」


 再登場するかもしれませんよ。もしそうなったら、お姉さんのライフゲージ赤色になりませんか?



「あっ、そうですね。では、改めまして。……おめでとうございます!! ムツキ=チバ様。シルバーカード取得です!! それでは、早速、シルバーカードの説明に移りますね」


 あっ、持ち直した。


「はい。お願いします」


「ブロンズカードとは違い、シルバーカード以上には特別な機能が付いています。それは【ステータス】機能です。【ステータス】とは、ハンターカードに記載されている内容を、より詳しくしたものだと思って下さい。ムツキ様の〈固定スキル〉も記載されている筈です。では、唱えてみて下さい。ステータスと」


 満面な笑みを浮かべながらお姉さんが促す。


 私は促されるまま、小さな声で「……ステータス?」と呟いてみた。その言葉に反応するように、目の前の何もない空間に突如文字が浮かんだ。



【ステータスを開きますか?】

 【はい】   【いいえ】



(……やっぱり、ロールプレイングゲームそのものだね)


 魔法が実在する世界。驚きながらも、どこか感心してしまう。


「ここで開かないで下さいね。個人情報なので。誰もいない所でお願いします」


 ジッと画面を凝視している私に、お姉さんは注意する。どうやら、師匠から貰った冊子とは違い、お姉さんにもこの文字が見えているみたいだ。


 見えてるなら、個人情報をこんな人が大勢いる場所で開くのは馬鹿だよね。でもどうやって消すの?


 取り合えず私は頷くと、試しに【いいえ】をタップしてみた。すると、文字はスーと消えた。なるほど。



「これは全てのハンターに共通する事ですが、魔物を討伐すると、魔物の種類とランクが自動的にハンターカードに記載されます。お近くのギルドで、カードを提示して頂くと、それに応じた金額が支払われます。町を訪れたら、一度ギルドに寄ってみて下さいね。その時に、魔物が落とした魔石やドロップアイテムも、ギルドで買い取りさせてもらいます。……ここまでで、何か疑問点はありますか?」


 疑問ね……今のところはないかな。


「いえ、大丈夫です」


「本当ですか!?」


 お姉さんが驚く。何で、驚くのかな?


「いえ……一度の説明で納得されてるので」


 あ~それは、私の出身が日本だったから。日本って、色んな種類のカードがあるからね。


「つまり、こういう事ですよね。魔物を倒すと、倒した魔物の種類とランクによって、ポイントが自動的に加算される。だから、わざわざ倒した魔物を報告する必要はないし、同時に、サボっているかどうかの判別も、虚偽の判別も、簡単に出来る。ギルドは正確な代金をハンターに支払える事が出来て、一石二鳥」


「そっ! そうです!! その通りです!!」


 良かった~~間違ってなかったよ。


「係員さんの説明がよかったからです」


 にっこりと微笑んだら、お姉さんの頬がポッと赤くなった。



「どうかしましたか?」


「い、いえっ。レベル十五を越えるまでは、生存確認のために一か月に一度、必ずギルドに寄って下さいね。続けて二度、生存確認を疎かにすると、カードが凍結されるので注意して下さい。凍結したカードの再発行は、紛失した同様、金貨一枚の料金を頂きます。宜しいですか?」


「はい。分かりました」


 注意しないと。折角貰えたハンターカードが凍結されるのは困る。金貨一枚は痛過ぎるよ。


「では、これからも頑張って下さい。転職はいつでも出来ますからね!」


 最後の最後まで転職を勧めながら、にこやかな笑顔でお姉さんは締め括った。



 これで、ギルドでのお仕事は終わり。


 時間はまだ早いから、少し街中を見て回るのもいいかな。夜はお店の手伝いはさせて貰えないし。そんな事を考えてたら、ココがとんでもない事を言い出した。


「後は、僕の従魔登録だね」


「えっ!?」

「何を言ってるんだ!?」


 私とサス君が同時に声を上げる。考えてもいなかった事を言われて、思いの他大きな声が出てしまった。ヤバイ、ヤバイ。慌てて、隅に移動する。



「そんなに驚く事かな? ちゃんと、ジュンの許可は取ってるよ。っていうより、ジュンに頼まれたし。僕もムツキと一緒に居たいからさ。駄目?」


 まんまるい潤んだ目で、見詰められてNOが言える? でもここは心を鬼にしてNOを言わないと。


 ココはジュンさんの相棒だ。私を心配して提案してくれた気持ちはとても嬉しいけど、ココにもしもの事があったら、私はジュンさんに顔向け出来ない。


「……その気持ちはすっごく嬉しいよ。だけど、ココに何かあったら、私はジュンさんにどんな顔をしたらいいの?」


「これでも、僕は強いよ。だから、自分の身は自分で守れる。それに何かあっても、ムツキが治してくれるでしょ」


「勿論、治すよ!! でも……」


 それでも、やっぱり、うんとは言えない。それが、ココの願いでも。


「ムツキが戸惑うのは分かる。でもね、僕も後が引けないんだ。()()()と約束をしたからね……」


(ある人?)


 それは、私の知っている人? それとも知らない人? 誰かは分からないけど、ココの決心が固い事だけは、私にも強く伝わってきた。


「…………分かった「睦月さん!!」」


 サス君が咎める。


「サス君が心配する気持ちはよく分かるよ。仲良しだからね。それに……どう見ても、ココは戦闘向きじゃないし。でもね、ここまで決意が固いココを説得出来る? たぶん、付いて来るよ」


「……それは……」


 反論する言葉が見付からず、俯くサス君から視線を反らせ、ココに視線を移した。



「本当にジュンさんから許可を取ってるんだね?」


 再度確認する。


「勿論」


 その目に一点の濁りも見えなかった。たぶん、嘘は言っていない。


 正直言えば、ココが言ってた()()()の事が気になる。戦闘向きじゃないココに、ここまでの決意をさせた人物だよ。気になるのは当然。たけど……もし訊いたとしても、ココは素直に教えてくれないだろう。だから、敢えて訊こうとは思わない。


 魔物に一番に狙われる可能性を考えた上での判断ーー。


 そこまで、覚悟を決めているココを拒否する事は、私には出来なかった。おそらく、ジュンさんも同じ気持ちだったと思う。


「分かった。その言葉を信じる」


「睦月さん!!」


 私はサス君の声を無視して、もう一度、別のカウンターの列に並び直した。






 因みに、私のステータスだけど、お風呂と晩ご飯を済ませてから、サス君とココと一緒に確認した。


 ハンターカードをより詳しくしたものだって係員のお姉さんが言ってたけど、確かにその通りだった。


 変わった点は、項目が増えていた事かな。


 追加された項目は、【種族】と【称号】だ。そして、ハンターカードに〈固定スキルあり〉とだけ書かれていた【スキル】も、細分化されて、ステータスにきちんと記されていた。


 ちょっとした違いに気付いた。


 従魔登録はスキル扱いなんだね。ハンターカードでは一番下の余白に記載されてたんだけど。フェンリルとして。


 あ~でも、ステータスでは、サス君は一応霊獣として認識されているようだ。相変わらず、狼だけどね。



【種族】亜神(元人族)

【称号】神獣森羅の化身。魔法使いの弟子。

    幻獣に愛されし者。

【スキル】霊獣フェンリル(亜種)

     ケットシー(妖精猫)

【固定スキル】蘇生魔法。鑑定。銀行。



 ……ん? 

 …………亜神?


 いつの間にか、人でなくなってたね。

 まぁ……人としての生は終わってるから、人でないのは薄々分かってたけど、文字になると地味にショックだね。


 うん。これは絶対人には見せれない。無闇に開く事は極力止めておかないと。


 で……鑑定は分かるけど、銀行って何?







 ココの従魔登録シーンを追加しましたm(__)m


 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m

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