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〈第二十話 とても眠いんですが〉

 


(……眠い、眠すぎる。お願い寝かして……)



 心の中で私は懇願する。



 私はうつらうつらしながら、係員の話を聞いていた。いや、聞くふりをしていた。



 早く解放して欲しいよ。マジ、話が頭に入ってこない。ギルマスは苦笑したままだし。



 陽がどっぷりと落ちてから、ホムロ村に戻ってきた私は、麓で待っていたギルマスに、そのまま連行された。



 ホントに疲れきっていたから、明日にしてほしかったが、大勢の人が討伐の報告を待っているのだと思って、フラフラしながらもついて行った。



 マスター室に入ると、借りていた地図とコンパスを返す。ちゃんと倒した証拠として、ハンターカードをギルマスに手渡した。ギルマスは直ぐ様確認をとり、私たちがシルバータイガーを四頭、間違いなく倒したのだと知った。



 ギルマスは係員にその旨を告げ、伝令を走らせた。



「ありがとう、ムツキ殿。貴女の働きで、この村は救われた」

 ギルマスはハンターカードを私に返してから、残っていた係員と一緒に頭を下げ、謝礼の言葉を述べる。



 あの……ギルマス、話し方変わっていませんか?



 突っ込みたいけど、早くここを出たかった私は敢えて突っ込まない。サラリと流す。



「……ギルマス。お礼はいいです。仕事をしただけですから。あの……すみませんが、宿屋を紹介して頂けませんか? ものすごく疲れてて、早く眠りたいんですけど」



 もう用は済んだよね。いい加減、解放してくれないかな……



 眠そうな私を見て、ギルマスは苦笑する。



「宿屋に案内してやりたいのはやまやまなんだが、避難を解除したばかりでな、悪いが、もうしばらくここで待っててもらえるか。伝令は走らせているからな」



「そうですか……」

 私は短く、そう答える。



(仕方ない。宿屋に店主がいなくちゃ、泊まることも出来ないよね)



 私は自分にそう言い聞かせると、素直に待つことにした。



「睦月さん。眠ければ、私にもたれ掛かって下さい」



 サス君は眠そうな私を気遣ってくれる。自分も疲れてるのに。私はその優しさが嬉しかった。



 ココはシュリナの隣で丸くなって眠っている。シュリナも私の隣で寝ていた。



(皆、頑張ったからね)



 私は心の中で呟く。



「大丈夫だよ。宿屋の準備が終わるまで我慢する」



「分かりました。我慢出来なくなったら、いつでも凭れて下さいね」



 サス君はそう言いながら、私に体を擦り寄せてくる。私はサス君の頭を撫で撫でしながら待っていた。サス君も嬉しそうだ。



 幸せはそこまでだった。



 待っている間中、話好きの熊耳の係員のお姉さんが、ずっと話しかけてくるのだ。私が聞いていようが、いまいが関係ない。それこそ、マシンガンのように話しかけてくる。



 相槌打つのも、しんどくなってきた。



 もういいかな……落ちても。











「……完全に落ちてるね。ほんと可愛い。天使って、ムツキのための言葉だと思わないか」



 青年は微笑みながら、無邪気に眠る少女を見下ろしている。汗で張り付いた前髪を剥がしながら。その目はとても優しく、甘かったが、どこかゾクッとする怖さを秘めていた。



「襲うなよ」

 ギルマスは念を押す。



「襲ったりしないよね。……もし襲ったら、君でも殺すよ」

「お前に関わる全てのものを、火の海にしてやる」

「死にたいと言い出すまで、なぶり尽くしてやるよ。その覚悟が、お前にはあるのか」



 その台詞に、ギルマスの顔色が蒼白になる。



 さっきまで一緒に寝ていたはずの、ムツキの従魔たちが口々に言い出したからだ。



 妖精猫に赤竜、そしてフェンリル。全て、伝説級の存在なのだ。それらが、断言した。必ず実行する。もし、ムツキが何者かに乱暴されようものなら……。恐ろしい結果しかみえない。



「心外だな。僕がそんなことをすると思ってるのかい。僕はそんな野蛮なことはしないよ。そうだろ? 体だけ手に入れても虚しいだけじゃないか。手にいれるなら全てをね。誰かと共有なんて、許せない」



 伝説級の存在の脅しに顔色一つ変えずに、青年は平然と言ってのける。



 ギルマスは引きつりながら、目の前の光景を黙って見詰めている。笑みを浮かべる親友を見て、ギルマスは心底、ムツキを不憫に思った。とんだ奴に見初められたものだと。



 それにしても、誰かと共有ね……



 ギルマスは、その誰かに心当たりがあった。






 お待たせしました。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪



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