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〈第十七話 勝敗の一手〉

 


「シュリナ、魔物を感知したら直ぐに言ってね」



「…………」

 私が問いかけても、一切無言のままだ。



 あーー。完全に拗ねてる。私はため息をついた。それがまた気にくわなかったらしい。今度は完全にそっぽを向いた。



「……サス君、魔物の臭いする?」



 私はサス君に尋ねる。シュリナの探知魔法より性能は落ちるけど、犬の鼻だ。少なくとも、この先に魔物がいるかは分かるだろう。



「そうですね。この先に複数の魔物がいる気配がします」



 サス君は私とシュリナの間に流れる微妙な空気に気付いていたが、今はそれに気付かない振りをし、周囲に神経を張り巡らせる。



 ーー複数ね。



 それが、シルバータイガーだといいんだけど。



 私は声に出さずに呟く。一旦、シュリナのことは脇に置いた。目の前の敵に集中するために。



「サス君」



 名前を呼んだだけで、サス君は理解する。サス君は頷くと、ココとシュリナに守護結界を張り直した。念のためだ。戦いに集中すると、ココやシュリナに意識がいきにくくなる。



 私は【神獣森羅の化身】の称号を持っているから、魔物の攻撃に関しての耐性は高い。勿論、毒や麻痺などの耐性もある。だから、無茶も出来た。そんなことをしたら、皆に怒られるけどね。



「睦月さん、これ以上は近付かない方が。魔物に気付かれます」



 サス君が止まるように、囁くほど小さな声で言った。私たちはそれに素直に従う。



 私たちは風上にいた。下から風が吹いている。登るのにはいいんだけど。



「風下に移動出来ないかな」



 私も小さい声で尋ねる。 風下に移動出来れば、魔物に接近出来るのに。



「風下に移動出来ても、匂いと気配で気付かれると思うけど」



 ココが言うのももっともだ。シルバータイガーは獣系の魔物だ。その鼻の能力は、通常の獣よりも高いと考えてもいいだろう。下手に近付いて逃げられる可能性も、絶対にないとは言えない。もし逃げられたら、別の源泉に移動する可能性も大いにある。



 自然に近付く方法。それも、こちらから先に一手を打てる方法。おそらく、先に一手を打てるかが、勝敗に関わると私は思った。



「う~ん。どうしようかな?」



 悩んでいる間も、時間は刻々と進んでいる。慎重になり過ぎて手が打てない。



「……一つ考えがあるけど、試してみる?」

 ココが私を見上げ、訊いてきた。



「うん! 教えて!!」







 ◇◆◇◆◇







 小刻みに刻まれる自分の呼吸の音が、私の耳に届いた。



 ーー気付かれる!!



 必死でおさえようとするが、おさえようとすればする程、今度は咳き込みそうになった。苦しい!! だけど私は、必死で口元をおさえた。



 岩陰に隠れ、魔物が通り過ぎるのをひたすら願った。私の足下には黒猫が体を震わせている。



 ガサッ。ガサッ。



 草と葉っぱを踏み締める音が近付いてきた。



 その音が唐突に消えた。不審に思った私は岩陰から顔を恐る恐る出す。周囲に魔物の姿はなかった。私はホッと胸を撫で下ろす。



 その時だった。



 私の頬に生温かい液体が首筋に落ち伝う。私は首筋に手を当て、後ろを振り返った。



 そこには、銀色の大きな魔物が口を開け、私を見下ろしていた。



 私は短い悲鳴を上げ逃げ出した。



 銀色の魔物は直ぐに私を食べようとはしなかった。なぶって、なぶって、なぶり尽くしてから食べようと思っているのだ。だから、逃げる私を一定の距離をおいて追いかけてくる。



 私は必死で、ココと一緒に逃げる。



 手足や顔に、引っ掻き傷が無数に出来ていた。



 逃げてる先に光りが見える。私たちはその光りが、救いの希望の光りのように見えた。その光りに向かって、私は必死に走った。



 光りの空間に出た時、そこは、絶望の空間へと変わった。



 目の前に、白い毛皮の魔獣が四頭、源泉の側にいたからだ。



 そうーー



 目の前にいる魔物がシルバータイガーだった。



 奥の二頭は腹這いに座り、獲物の私とココを見ている。奥の二頭に比べて体が一回り小さい二頭が、威嚇し唸る。威嚇は、私の後ろにいる、銀色の魔物に対してだった。



 一回り小さいといっても、二メートル近くはある。その声はとても低く、周囲の空気を震わすほどだった。



 奥にいるのは、それ以上の大きさか……。流石、Aランク。



 私は計画通り、声を出さずに【ステータス】を唱える。



 確かに、四頭ともAランク、シルバータイガーの変異種だった。



『手前の二頭、私に向かって左側は物理攻撃の耐性あり。右側は魔法攻撃の耐性ね。厄介なのが、奥の二頭。左側は物理、魔法攻撃どちらも耐性があるわ。右側は物理攻撃の耐性プラス、猛毒の付加がついてる。猛毒は、牙と爪に。四頭とも、HPは千五百前後かな』



 私は全員に念話で報告する。



『分かりました』

『OK!』

 サス君とココが返事する。



『先に倒すのは、猛毒の方だな』



『そう!! 一気に魔法を叩き込むよ!!』

 私はニヤリと笑った。






 お待たせしました。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 次は戦闘シーンの予定!!


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪



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