〈第十二話 本当に波乱に満ちていた〉
ーーホムロ村。
グリーンメドウと王都バーミリオンの中央に位置している村だ。ホムロ山の麓にある。グリーンメドウから、荷馬車で一週間から十日は掛かる距離に位置している。
ホムロ村は地脈の恩恵が一番謙虚にでた場所だ。そのエネルギーから温泉が湧き、それによって、ホムロ村は一大保養地になった。観光地にもだ。村といっても、規模は街であるグリーンメドウよりも広い。温泉の地熱を利用した料理が名物で、一番有名なのが温泉卵と温泉饅頭だ。
温泉と聞いて、一番にホムロ山は火山だと思ったが、ホムロ山は火山ではなかった。
「ホムロ山って火山なの?」ってココに訊いたら、反対に火山って何って訊かれたからだ。
この世界に、噴火の原因になるマグマはそもそもなく、地脈の強い場所が地熱となって人々に恩恵をもたらしていた。
地脈は大地に這う血管だ。そしてその中を流れるエネルギーは血液といえる。地脈に流れるエネルギーを、滞りなく細部まで行き渡らせるのが、五聖獣の役目の一つでもあった。
一大保養地で観光地であるホムロ村を訪れる人は多い。他の大陸からも多く訪れる。よって当然の如く、村の入口には長蛇の列が出来ていた。
仕方ないことだ。入口で検問が行われているのだから。来訪者が多いということは、それだけ治安の問題が大きくなる。検問が厳しくなるのは理解出来た。この前、ジュンさんと来た時も一時間待ったしね。
今日も長蛇の列に、半ばうんざりしながら並んでいると、足下から猫の鳴き声が聞こえてきた。黒猫は私の足に体をスリスリと擦り寄せる。
私は足下にいた黒猫を抱き上げた。
『遅かったね。あれ? ココ、リードとリクは?』
私は念話で話し掛ける。
『う~ん。リクがスザク様を怒らせたから、里に帰っちゃった。リードはリクを見送ったら戻ってくるよ』
『シュリナを怒らせた?』
『まぁね』
ココはそれ以上何も話さない。
『シュリナ?』
私はシュリナに尋ねた。
『あの愚か者のことは口にするな!!』
吐き捨てるように言い放つ。
相当ご立腹のようだ。何があったのか気になったが、到底シュリナに訊ける雰囲気じゃなかった。完全にその話題はアウトだ。
まぁ、何となくだが、理由は分かる気がする。初めて会ったあの瞬間から、リクの中には、私に対しての負の感情が見え隠れしていた。本人は、圧し殺していたみたいだが。漏れていた。
リクとリードには悪いが、私は少しホッとしている。そう思ってしまった自分に、少し気分が滅入ってしまう。下を向いてると、このまま段々滅入りそうだ。私は顔を上げ、空を見上げた。
空は雲一つなく、快晴で、空気が澄んでいる。
その時、一羽の青い鳥が上空を飛んで行った。
「……鳥?」
『キャリヤーバードですよ。睦月さん』
『キャリヤーバード?』
『急ぎの伝書があったみたいだね。……あれ一回飛ばすのに、金貨一枚かかるから』
『金貨一枚!!』
ーー金貨一枚。
(手紙を飛ばすのに!? それだけの費用をかけるものなの? お金持ちなら分からなくもないけど。それにしても、飛んで行った方角が気になる。グリーンメドウの方角だった。何か、嫌な予感がする……)
その時だ。
村の入口が一段と騒がしくなった。入口から離れたここまで、喧騒が聞こえてくるぐらいだ。
(何!?)
並んでいた列が乱れる。入口の方で怒鳴っている声が聞こえる。
「封鎖って!! マジか!!」
商売人風のおじさんが悪態をついている。私は咄嗟にその人の服を掴んだ。軽く睨まれる。
「封鎖って何が!?」
「ホムロ村の入口が封鎖されたんだよ! 何でも、ホムロ山に魔物が出たらしい。全く、商売もんが駄目になるじゃねーか!!」
ぶつくさと文句を言いながら、おじさんは列を離れた。
(魔物!!)
やっぱり、あの青い鳥はグリーンメドウに向かって飛んで行ったんだ。
「ムツキ!! ムツキじゃないか!?」
混乱する中、声がしたのは後ろから。私は振り返る。そこには見覚えがある顔があった。
「ゼロ!!」
金色の髪をなびかせ、荷馬車の手綱を握っている美青年が手を振っていた。少し離れた場所にゼロは荷馬車を停める。
「何があった!! 今、キャリヤーバードが飛んで行ったようだけど」
ゼロが開口一番訊いてきた。荷馬車に乗っていたのは、ゼロだけではなかった。荷台からショウたちが降りてくる。
「私も詳しいことは知らないけど。……魔物がホムロ山に出たって。だから、ホムロ村が封鎖されたの」
「「「「「魔物が!?」」」」」
私の答えに全員が驚愕する。
「確かに、魔物の気配がするな。それも、かなりの大物の気配がな」
どこか嬉しそうに話すシュリナ。反対に、黙り込む私たち。
「……取り合えず、入口に行ってみる?」
私はショウたちに提案した。
(ホムロ村を封鎖……)
言い様のない不安が胸を過った。
お待たせしました。
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




